経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」中間報告及びIOSCO最終報告書「資産運用におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示に関する提言」

ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2022年1月)

SDGsやESGに関する取り組みが世界的に広がっています。PwC弁護士法人は、企業および社会が抱えるESGに関する重要な課題を解決し、その持続的な成長・発展を支えるサステナビリティ経営の実現をサポートする法律事務所です。当法人は、さまざまなESG/サステナビリティに関する課題に対して、PwC Japanグループや世界100カ国に約3,700名の弁護士を擁するグローバルネットワークと密接に連携しながら、特に法的な観点から戦略的な助言を提供するとともに、その実行や事後対応をサポートします。

近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめ様々なステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。

今回は、以下の2つのトピックを紹介します。

I.経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」中間報告の公表

II.証券監督者国際機構(IOSCO)による最終報告書「資産運用におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示に関する提言」の公表

I.経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」中間報告の公表

1.背景

経済産業省は、2021年6月に「非財務情報の開示指針研究会」(以下「本研究会」といいます。)を設置し1、計5回にわたる議論・検討を経て、2021年11月12日、「サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて-『非財務情報の開示指針研究会』中間報告-」(以下「本中間報告」といいます。)を公表しました2。

近年、企業の情報開示において、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報や「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(MD&A)情報に代表される非財務情報の重要性が世界的に高まる中で、開示の指針をめぐって世界的な動向変化の最中にあります。

本研究会は、非財務情報の開示指針の方向性について認識の共有を行いながら、非財務情報の利用者との質の高い対話に繋がる開示及び開示媒体の在り方について検討するとともに、非財務情報の開示及び指針に関する我が国の立場を的確に発信し、我が国の非財務情報の開示に関する国際的な評価を高めることを目的に設置されました。

本中間報告では、非財務情報を巡る国際的な動向が示されるとともに、サステナビリティ関連情報開示についての提言がなされています。

2.本中間報告の概要

本中間報告では、持続的な価値創造を伝達するサステナビリティ関連情報開示を実現するために、情報の作成者及び利用者が意識する必要があるポイントを、以下のとおり4つの提言として示しています。

(1)サステナビリティ関連情報開示における価値関連性の重視
(2)サステナビリティ開示基準の適用におけるオーナーシップ(主体性)の発揮
(3)企業価値とサステナビリティ情報の関連性に関する認識の深化
(4)ステークホルダーとの「対話」に繋がるサステナビリティ関連情報開示の実施

また、非財務情報の開示を巡る当事者(主要な基準設定主体、IFRS財団、欧州等)の直近動向を紹介したうえで、国際的に重要性が高まっている気候関連情報、人的資本情報について、研究会での議論と各情報を開示する際のポイントを取りまとめています。

以下では、上記の「4つの提言」について概要を説明します

3.4つの提言

本中間報告では、サステナビリティ関連情報開示を巡る「3つの揺らぎ」があると指摘されています。

①「共通性」と「独自性」のバランスを巡る揺らぎ

  • 国際的な開示基準の策定が進む中で期待される「共通性」や「比較可能性」の確保と、企業の「独自性」、「多様性」のバランスをどのように図るべきか。

②マテリアリティを巡る揺らぎ

  • 開示基準が林立し、それぞれの基準が想定する「読み手」や「マテリアリティ」、規定される「開示項目」が異なる中で、企業は「誰に向けて」、「何を伝えていくべきか」をどのように特定・判断すべきか。

③財務情報、非財務情報、サステナビリティ情報の関係性を巡る揺らぎ

  • 財務情報、非財務情報、サステナビリティ情報といった用語や概念に対して、共通の理解が必ずしも醸成されていない中で、相互の関係性や包含関係をどのように理解するか。

本中間報告における4つの提言は、これら「3つの揺らぎ」に関する議論や指摘を踏まえ、国内外の企業・投資家・開示基準設定主体・企業の情報開示にかかる政策当局者等に対する提言事項をまとめたものであるとされています。

(1)サステナビリティ関連情報開示における価値関連性の重視

サステナビリティ関連情報開示3においては、企業価値4との関連性(Value relevance)を重視することが必要。中長期的な時間軸の中で重要性(マテリアリティ)のある事項を特定し、経営判断・経営戦略の検討と一体のものとして、統合的かつ連続的に開示に取り組まなければならない。
  • 以下の点を踏まえ、サステナビリティ関連情報開示は、企業の持続可能性確保に関する高度な経営判断・経営戦略の検討と一体のものとして、統合的かつ連続的に取り組まなければならない。

①企業活動のサステナビリティにとって重要性のある事項を、短期に加え、中長期の時間軸で特定する。
②価値関連性や重要性は、市場が企業を評価する視点や社会・環境・経済の変化により、動的に変化する。

(2)サステナビリティ開示基準の適用におけるオーナーシップ(主体性)の発揮(規範性と独自性の適切なバランスの実現)

企業価値を伝達する開示を実現する観点から、企業は自らの開示内容についてオーナーシップ(主体性)を発揮することを通じて、開示情報の客観性・比較可能性確保と、独自性発揮とのバランスを取るための最適解を見出す必要がある。
  • 価値関連性を意識したサステナビリティ関連情報開示を実践する際は、企業ごとに事業特性や重要性がある事項が異なることを踏まえ、価値関連性を主体的に判断して、企業の独自性・自由演技の幅を含む開示とすることが効果的である。
  • 一方、今後国際的にサステナビリティ関連情報開示基準が定められる中で、開示情報の客観性の確保や定量化、比較可能性の確保について、段階的な開示の充実も含めて、企業の努力が重ねられていくことが望ましい。
  • サステナビリティ開示基準の適用に際しては、企業が開示内容に対するオーナーシップ(主体性)を発揮し、「Apply or Explain(基準の適用か、説明か)」アプローチを原則とすべきである。
  • 独自性の発揮を避けるために、単にチェックボックス的に基準に沿った報告を行うことは、開示の実効性・情報性の観点から望ましくない。
  • また、Explainにおいては、開示基準とは異なるアプローチを採用している背景やその根拠、基準を適用(Apply)した開示に向けた今後の時間軸等について積極的に説明されることが望ましい。

(3)企業価値とサステナビリティ情報の関連性に関する認識の深化

どのようなサステナビリティ情報が企業価値や財務情報と高い関連性を有するかについては、作成者・利用者における共通理解の醸成の途上にある。今後、国際的な議論等において検討が重ねられていくことに加え、関連性に関する分析の深化も期待される。
  • 国際的な基準やガイダンス策定において、どのようなサステナビリティ情報の価値関連性が高いと考えられるかについて、一定の指針となる検討が重ねられていくことが期待される。
  • 同時に、作成者たる企業や利用者たる資本市場参加者等のステークホルダー、あるいは研究者において、個別の企業におけるサステナビリティ情報が、どのような経路で企業価値に影響を与えているか、定性的な分析や考え方の提示に留まらず、相関関係の分析や、KPIのモニタリング・振り返りを含む経時的な変化についての分析等の努力が重ねられ、その結果が提供されていくことが望ましい。

(4)投資家・ステークホルダーとの「対話」に繋がるサステナビリティ関連情報開示の実施

持続的な企業価値創造を実現するためには、上記(1)~(3)の提言の方向性に沿った開示を通じて、投資家・ステークホルダーとの連続的な対話を行うことで、サステナビリティ関連情報開示と持続的な価値創造の好循環を生み出すことが重要。
  • 上記(1)から(3)の提言の方向性に沿った開示を通じて、利用者との対話を深めていくためには、まず、投資家のみならず従業員、取引先、消費者等、自社にとって重要なステークホルダーを特定し、自社にとっての重要な事項について議論を深めることが必要となる。
  • 投資家との対話においては、投資家によって企業を調査・分析する際のスタンスや時間軸、考え方の違い(それぞれの投資家の投資方針(パッシブ、アクティブ)や、出資者たるアセットオーナーの投資方針の違い、その投資に携わる部門間の違い)があることを念頭に置いた上で、投資家ごとにどのような情報が有用であるかを検討する必要がある。
  • 投資家においても、企業との対話に際して投資方針や考え方を明確に伝えることが、効果的な対話の実現のために重要である。

4.今後の検討

2021年11月3日、IFRS財団により、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」の設立が公表されました。今後、ISSBにおける検討が進み、2022年第一四半期には気候変動に関するISSB基準の草案が示されることが見込まれています。

本研究会は、国際的な検討状況が引き続き流動的であることから、国内外の検討状況を踏まえ、以下の検討課題等について、優先順位を検討していくものとしており、今後の動向が注目されます。

①気候変動に関するISSB基準の草案やISSBにおける追加のアジェンダ・コンサルテーションの状況、EUや米国等の検討状況など、国際的な動向・基準を踏まえた分析・検討
②財務情報と様々な非財務情報とのリンケージに関する更なる分析・検討
③開示情報の電子的な管理(XBRL等の情報のタグ付け、情報プラットフォーム等)を通じた開示用法分析の効率化に関する分析・検討

II.証券監督者国際機構(IOSCO)による最終報告書「資産運用におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示に関する提言」の公表

1.概要

証券監督者国際機構(以下「IOSCO」といいます。)は、2021年11月に「資産運用の分野におけるサステナビリティ関連の実務、方針、手続及び開示に関する提言」(以下「本提言」といいます。)を公表しました5。ESG投資やサステナビリティ関連商品の拡大に伴い、一貫性のある、比較可能で意思決定に有用な情報の必要性の高まりや、グリーンウォッシング6のリスクなどの課題が生じています。本提言は、これらの現状への対応として、資産運用業界におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示の改善を図ることを意図しており、「資産運用会社の実務、方針、手続及び開示」、「商品情報の開示」、「監督と執行」、「用語」、「金融・投資家教育」の5つの分野の提言が示されています。IOSCOの提言には各国証券監督当局に対する法的拘束力はありませんので、これらの提言が直ちに我が国における法規制となるわけではありませんが、2021年6月に金融庁は「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」(同年8月に更新)を公表しており、グリーンウォッシング等への対処は我が国においても検討が行われています。このため、本提言は、サステナビリティ関連の資産運用業者への規制の今後の動向を考えるためには有益であると思われます。本ニュースレターでは、これらの5つの提言を、資産運用会社及び商品の開示問題を中心に概説します。

2.5つの提言の概要

(1)「資産運用会社の実務、方針、手続及び開示」

監督当局及び政策担当者は、(a)重大なサステナビリティ関連のリスクに関する実務、方針及び手続の開発と施行並びに(b)これらに関連する開示に関して、資産運用会社に対する規制及び監督の期待値を設定するべきである。

サステナビリティ関連の実務、方針及び手続は、資産運用会社が重大なサステナビリティ関連のリスクと機会を考慮し、意思決定過程に取り込むことにつながります。そして、これらの開示は、資産運用会社レベルでのグリーンウォッシングを防止する一貫性、比較可能性及び信頼性を促進することが意図されています。特に、次の領域をカバーすることが想定されています。

  • ガバナンス:資産運用会社のサステナビリティ関連のリスクと機会に関連するガバナンス
  • 投資戦略:資産運用会社の投資戦略と投資過程に重大なサステナビリティ関連のリスクと機会がどのように組み入れられるか
  • リスクマネジメント:重大なサステナビリティ関連のリスクを資産運用会社がどのように特定、評価、管理するか
  • 測定基準と対象:サステナビリティ関連のリスクと機会を評価、管理するために用いられる測定基準と対象

これらの期待値は、株主を有する公開会社として、ではなく、顧客資産の受託者としての機能に関して資産運用会社に適用されるものとされます。もっとも、気候関連の金融規制上の開示など、両者の間で重複することもありえます。また、国際的あるいは地域的なサステナビリティ関連のイニシアティブへの企業のコミットメントを開示することや、企業が署名した関連する報告書を開示することを求めることも考えられるとされています。

(2)「商品情報の開示」

監督当局及び政策担当者は、(a)サステナビリティ関連商品及び(b)全ての商品の重大なサステナビリティ関連のリスクを投資家がより理解できるように、商品情報の開示の改善を図るため、既存の規制上の要求・ガイダンスの明確化・拡充を図り、必要な場合には、新たな規制上の要求・ガイダンスを作成すべきである。

商品情報の開示は、商品レベルでのグリーンウォッシングを防止する一貫性、比較可能性及び信頼性を促進することが意図されています。重大なサステナビリティ関連のリスクを除き、投資の意思決定にサステナビリティを考慮する商品又は市場がサステナブルな商品と考慮する商品に適用されます。具体的には次の領域がカバーされることが想定されています。

  • 商品の承認:公衆に提供されるサステナビリティ関連商品への開示上の期待値を設定する商品の承認の仕組みが開示対象とされます。必ずしも、サステナビリティ関連商品について新たな商品の承認の仕組みを監督当局に求めるものではないとされます。
  • 名称:商品の名称が商品のサステナビリティへの集中の性質、程度を正確に反映したものとなるようなサステナビリティ関連商品の名称に関する変数。投資対象がサステナビリティに言及している場合にのみ名称においてサステナビリティに触れることを許可することも考えられるとされています。
  • ラベル付けと分類:サステナビリティ関連商品がラベルと分類を一貫した適切な使用をすることを促進するためのサステナビリティ関連のラベルと分類に関する変数。商品の名称を越えて、商品のラベル付けや分類の方法に関するものが想定されています。例として、ラベル付けについては、第三者による認証、ESGやSRIといった表示の使用が含まれ、分類については、商品の分類方法としてESG商品といった分類を使うことが考えられます。
  • 投資対象の開示:サステナビリティ関連商品の投資対象に関する商品の勧誘資料での開示が想定されています。投資対象の開示は、商品のサステナビリティ関連の投資対象の性質や程度に関する透明性を確保するものです。
  • 投資戦略の開示:投資の領域、投資の選定過程、使用されたサステナビリティの基準やポートフォリオのサステナビリティへの集中度合いを含む、商品の勧誘資料での投資戦略の開示が想定されています。
  • 議決権行使及び株主としてのエンゲージメントに関する開示:(a)議決権の行使や株主としてのエンゲージメントに関するポリシーを含む、サステナビリティ関連商品における議決権行使や株主としてのエンゲージメントに関する開示や、(b)過去の議決権行使や株主としてのエンゲージメント実績に関する開示が想定されています。商品レベルではなく、資産運用会社レベルでの開示も考えられるところですが、ある商品が投資対象や戦略の一部として議決権行使や株主エンゲージメントに言及している場合やこれらの利用を主張している場合には、商品レベルでの開示を要求することが考えられるとされています。
  • リスクの開示:サステナビリティ関連商品に関する、サステナビリティへの集中から生じる商品固有の重大なリスク及び全商品に関するサステナビリティ関連の重大なリスクが想定されています。サステナビリティ関連商品のリスクの開示は、特定のサステナビリティ関連商品への投資に関連する重大なリスクに対処し、商品に関する潜在的なリスクを投資家がより理解することを可能とすることを想定したものとされます。投資の集中度や第三者による格付けへの依存度など、商品のサステナビリティへの集中により生じる商品固有のリスクが含まれ得ます。一方、サステナビリティ関連ではない商品も含む全商品についての重大なサステナビリティ関連のリスクの開示は、投資家が重大なサステナビリティ関連の問題が投資に与える影響について認識した上で投資決定を行うことを支援することが想定されており、サステナビリティ関連の問題から生じるあらゆる重大なリスクが含まれ得ます。
  • マーケティング資料及びウェブサイトでの開示:公正でバランスが取れ、規制上の届出内容と一貫した情報開示を促進する、マーケティング資料及びウェブサイトでの開示に関する内容の規制を図ることが想定されています。これらの様式ではなく、内容自体に関して規制を及ぼすことが想定されていますが、様式についてミニマムスタンダード又はガイドラインを作成することも考えられるとされています。
  • コンプライアンス及びサステナビリティ関連のパフォーマンスのモニタリング:(a)サステナビリティ関連商品が投資対象や性質を遵守しているか、(b)ポートフォリオの構成に適用ある範囲でのポートフォリオの持つESG問題への影響、及び(c)サステナビリティ関連のパフォーマンスについて、資産運用会社が評価しモニタリングすることを奨励することが想定されています。
  • 定期的なサステナビリティ関連の報告:サステナビリティ関連の商品が投資対象や性質を満たしているかに関する定期的な報告が想定されています。定量的な情報及び定性的な情報の双方を含むものとされます。投資家が商品のパフォーマンスをモニタリングし、商品のサステナビリティ関連の投資対象や性質を満たしていることを評価することを可能にするためにサステナビリティ関連のパフォーマンスの報告にフォーカスしています。サステナビリティ関連の測定基準は現在開発中のものであるため、監督当局が特定の測定基準の開示を選択することはできない可能性がありますが、資産運用会社が独自の測定基準を特定し、あるいは開発した場合などには、監督当局は、定期的な報告にそのような測定基準やその背後の方法論を含めることを考慮することも考えられるとしています。

(3)「監督と執行」

監督当局及び政策担当者は、資産運用会社及びサステナビリティ関連商品が規制上の要求を遵守しているか否かをモニタリングするための監督上の手法及びこれらの要求への違反に対処するための執行上の手法を有するべきである。

監督及び執行の手法は、資産運用会社レベル及び商品レベル双方でのグリーンウォッシングを防止し、サステナビリティ関連商品のみならずサステナビリティ関連のリスクと機会を考慮に入れる資産運用会社への投資家の信頼を促進することが可能なものと考えられています。監督当局は、当初の段階では監督及び執行のための既存のルール及び手法を使用することを検討すべきであるとされています。

(4)「用語」

監督当局及び政策担当者は、グローバルな資産運用業界を通じた一貫性を確保するために、ESGへのアプローチを含めて、サステナブルファイナンス関連の共通の用語と定義の開発を資産運用業界への参加者に促すことを検討すべきである。

現在、資産運用業界においてサステナビリティ関連の用語の使用には一貫性が欠けており、これがサステナビリティ関連商品に関する投資家の混乱につながる可能性、ひいてはグリーンウォッシングにつながり得るものと考えられます。このため、ESGへのアプローチ(例えば、ESGを統合した、ネガティブスクリーニング、そのクラスで最高の、といったアプローチ)に関する共通の用語と定義を発展させる需要があるものとされています。

(5)「金融・投資家教育」

監督当局及び政策担当者は、サステナビリティに関連した金融・投資家教育の取組みの促進、または、既存のサステナビリティ関連の取組みの拡充を検討すべきである。

投資家をグリーンウォッシングから保護すること、サステナビリティ関連のリスクへの意識を促進すること、サステナビリティ関連商品の健全で継続した成長につながることにおいて、金融・投資家教育は重要であると指摘されています。市場参加者への教育も想定されていますが、主にリテール投資家層に焦点をおいたものが想定されています。

1 経済産業省は、本研究会の設置に先立つ2021年5月28日、社会のサステナビリティを取り込んだ企業の長期経営や長期投資、それらに資する具体的な非財務情報開示や対話の在り方を検討するため、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を立ち上げています。

2 本中間報告は、経済産業省のウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/hizaimu_joho/20211112_report.html)にて閲覧可能です。

3 本中間報告において、「サステナビリティ関連情報開示」とは、サステナビリティ項目(ESG事項(環境・社会・ガバナンス)や戦略、リスクマネジメント等)のうち、企業価値に関連する情報の開示であると定義されています。

4 「企業価値」とは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フローの見通しやその実現能力を、企業が環境・社会・経済に与える外部性に対する資本市場参加者等のステークホルダーからの評価も加味した価値であると定義されています。

5 なお、IOSCOは2021年11月に最終報告書「ESG格付け及びデータ提供者」も公表しています。

6 グリーンウォッシングとは、「資産運用会社が自らのサステナビリティ関連業務や投資商品のサステナビリティ関連の特徴を偽って表示する行為」を指し、「募集要項に使用されている特定のサステナビリティ関連用語の不適切な使用から、企業のサステナビリティ関連のコミットメントに関する虚偽表示、商品のサステナブル・インパクトを意図的に誤認させる欺瞞的なマーケティング活動まで、その範囲や重大性は多岐にわたる」ものとされます。近年、欧米の一部金融機関系の資産運用会社によるグリーンウォッシングが疑われる事例とこれに対する当局の調査が指摘されています。

主要メンバー

北村 導人

北村 導人

パートナー, PwC弁護士法人

山田 裕貴

山田 裕貴

パートナー, PwC弁護士法人

日比 慎

日比 慎

ディレクター, PwC弁護士法人

小林 裕輔

小林 裕輔

ディレクター, PwC弁護士法人

蓮輪 真紀子

蓮輪 真紀子

PwC弁護士法人

PwC弁護士法人 お問い合わせ