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SDGsやESGに関する取り組みが世界的に広がっています。PwC弁護士法人は、企業および社会が抱えるESGに関する重要な課題を解決し、その持続的な成長・発展を支えるサステナビリティ経営の実現をサポートする法律事務所です。当法人は、さまざまなESG/サステナビリティに関する課題に対して、PwC Japanグループや世界100カ国に約3,700名の弁護士を擁するグローバルネットワークと密接に連携しながら、特に法的な観点から戦略的な助言を提供するとともに、その実行や事後対応をサポートします。
近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめ様々なステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。
今回は、以下の2つのトピックを紹介します。
I.経済産業省「非財務情報の開示指針研究会」中間報告の公表
II.証券監督者国際機構(IOSCO)による最終報告書「資産運用におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示に関する提言」の公表
経済産業省は、2021年6月に「非財務情報の開示指針研究会」(以下「本研究会」といいます。)を設置し1、計5回にわたる議論・検討を経て、2021年11月12日、「サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて-『非財務情報の開示指針研究会』中間報告-」(以下「本中間報告」といいます。)を公表しました2。
近年、企業の情報開示において、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報や「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(MD&A)情報に代表される非財務情報の重要性が世界的に高まる中で、開示の指針をめぐって世界的な動向変化の最中にあります。
本研究会は、非財務情報の開示指針の方向性について認識の共有を行いながら、非財務情報の利用者との質の高い対話に繋がる開示及び開示媒体の在り方について検討するとともに、非財務情報の開示及び指針に関する我が国の立場を的確に発信し、我が国の非財務情報の開示に関する国際的な評価を高めることを目的に設置されました。
本中間報告では、非財務情報を巡る国際的な動向が示されるとともに、サステナビリティ関連情報開示についての提言がなされています。
本中間報告では、持続的な価値創造を伝達するサステナビリティ関連情報開示を実現するために、情報の作成者及び利用者が意識する必要があるポイントを、以下のとおり4つの提言として示しています。
(1)サステナビリティ関連情報開示における価値関連性の重視
(2)サステナビリティ開示基準の適用におけるオーナーシップ(主体性)の発揮
(3)企業価値とサステナビリティ情報の関連性に関する認識の深化
(4)ステークホルダーとの「対話」に繋がるサステナビリティ関連情報開示の実施
また、非財務情報の開示を巡る当事者(主要な基準設定主体、IFRS財団、欧州等)の直近動向を紹介したうえで、国際的に重要性が高まっている気候関連情報、人的資本情報について、研究会での議論と各情報を開示する際のポイントを取りまとめています。
以下では、上記の「4つの提言」について概要を説明します
本中間報告では、サステナビリティ関連情報開示を巡る「3つの揺らぎ」があると指摘されています。
①「共通性」と「独自性」のバランスを巡る揺らぎ
②マテリアリティを巡る揺らぎ
③財務情報、非財務情報、サステナビリティ情報の関係性を巡る揺らぎ
本中間報告における4つの提言は、これら「3つの揺らぎ」に関する議論や指摘を踏まえ、国内外の企業・投資家・開示基準設定主体・企業の情報開示にかかる政策当局者等に対する提言事項をまとめたものであるとされています。
| サステナビリティ関連情報開示3においては、企業価値4との関連性(Value relevance)を重視することが必要。中長期的な時間軸の中で重要性(マテリアリティ)のある事項を特定し、経営判断・経営戦略の検討と一体のものとして、統合的かつ連続的に開示に取り組まなければならない。 |
①企業活動のサステナビリティにとって重要性のある事項を、短期に加え、中長期の時間軸で特定する。
②価値関連性や重要性は、市場が企業を評価する視点や社会・環境・経済の変化により、動的に変化する。
| 企業価値を伝達する開示を実現する観点から、企業は自らの開示内容についてオーナーシップ(主体性)を発揮することを通じて、開示情報の客観性・比較可能性確保と、独自性発揮とのバランスを取るための最適解を見出す必要がある。 |
| どのようなサステナビリティ情報が企業価値や財務情報と高い関連性を有するかについては、作成者・利用者における共通理解の醸成の途上にある。今後、国際的な議論等において検討が重ねられていくことに加え、関連性に関する分析の深化も期待される。 |
| 持続的な企業価値創造を実現するためには、上記(1)~(3)の提言の方向性に沿った開示を通じて、投資家・ステークホルダーとの連続的な対話を行うことで、サステナビリティ関連情報開示と持続的な価値創造の好循環を生み出すことが重要。 |
2021年11月3日、IFRS財団により、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」の設立が公表されました。今後、ISSBにおける検討が進み、2022年第一四半期には気候変動に関するISSB基準の草案が示されることが見込まれています。
本研究会は、国際的な検討状況が引き続き流動的であることから、国内外の検討状況を踏まえ、以下の検討課題等について、優先順位を検討していくものとしており、今後の動向が注目されます。
①気候変動に関するISSB基準の草案やISSBにおける追加のアジェンダ・コンサルテーションの状況、EUや米国等の検討状況など、国際的な動向・基準を踏まえた分析・検討
②財務情報と様々な非財務情報とのリンケージに関する更なる分析・検討
③開示情報の電子的な管理(XBRL等の情報のタグ付け、情報プラットフォーム等)を通じた開示用法分析の効率化に関する分析・検討
証券監督者国際機構(以下「IOSCO」といいます。)は、2021年11月に「資産運用の分野におけるサステナビリティ関連の実務、方針、手続及び開示に関する提言」(以下「本提言」といいます。)を公表しました5。ESG投資やサステナビリティ関連商品の拡大に伴い、一貫性のある、比較可能で意思決定に有用な情報の必要性の高まりや、グリーンウォッシング6のリスクなどの課題が生じています。本提言は、これらの現状への対応として、資産運用業界におけるサステナビリティに関連した実務、方針、手続及び開示の改善を図ることを意図しており、「資産運用会社の実務、方針、手続及び開示」、「商品情報の開示」、「監督と執行」、「用語」、「金融・投資家教育」の5つの分野の提言が示されています。IOSCOの提言には各国証券監督当局に対する法的拘束力はありませんので、これらの提言が直ちに我が国における法規制となるわけではありませんが、2021年6月に金融庁は「サステナブルファイナンス有識者会議報告書」(同年8月に更新)を公表しており、グリーンウォッシング等への対処は我が国においても検討が行われています。このため、本提言は、サステナビリティ関連の資産運用業者への規制の今後の動向を考えるためには有益であると思われます。本ニュースレターでは、これらの5つの提言を、資産運用会社及び商品の開示問題を中心に概説します。
| 監督当局及び政策担当者は、(a)重大なサステナビリティ関連のリスクに関する実務、方針及び手続の開発と施行並びに(b)これらに関連する開示に関して、資産運用会社に対する規制及び監督の期待値を設定するべきである。 |
サステナビリティ関連の実務、方針及び手続は、資産運用会社が重大なサステナビリティ関連のリスクと機会を考慮し、意思決定過程に取り込むことにつながります。そして、これらの開示は、資産運用会社レベルでのグリーンウォッシングを防止する一貫性、比較可能性及び信頼性を促進することが意図されています。特に、次の領域をカバーすることが想定されています。
これらの期待値は、株主を有する公開会社として、ではなく、顧客資産の受託者としての機能に関して資産運用会社に適用されるものとされます。もっとも、気候関連の金融規制上の開示など、両者の間で重複することもありえます。また、国際的あるいは地域的なサステナビリティ関連のイニシアティブへの企業のコミットメントを開示することや、企業が署名した関連する報告書を開示することを求めることも考えられるとされています。
| 監督当局及び政策担当者は、(a)サステナビリティ関連商品及び(b)全ての商品の重大なサステナビリティ関連のリスクを投資家がより理解できるように、商品情報の開示の改善を図るため、既存の規制上の要求・ガイダンスの明確化・拡充を図り、必要な場合には、新たな規制上の要求・ガイダンスを作成すべきである。 |
商品情報の開示は、商品レベルでのグリーンウォッシングを防止する一貫性、比較可能性及び信頼性を促進することが意図されています。重大なサステナビリティ関連のリスクを除き、投資の意思決定にサステナビリティを考慮する商品又は市場がサステナブルな商品と考慮する商品に適用されます。具体的には次の領域がカバーされることが想定されています。
| 監督当局及び政策担当者は、資産運用会社及びサステナビリティ関連商品が規制上の要求を遵守しているか否かをモニタリングするための監督上の手法及びこれらの要求への違反に対処するための執行上の手法を有するべきである。 |
監督及び執行の手法は、資産運用会社レベル及び商品レベル双方でのグリーンウォッシングを防止し、サステナビリティ関連商品のみならずサステナビリティ関連のリスクと機会を考慮に入れる資産運用会社への投資家の信頼を促進することが可能なものと考えられています。監督当局は、当初の段階では監督及び執行のための既存のルール及び手法を使用することを検討すべきであるとされています。
| 監督当局及び政策担当者は、グローバルな資産運用業界を通じた一貫性を確保するために、ESGへのアプローチを含めて、サステナブルファイナンス関連の共通の用語と定義の開発を資産運用業界への参加者に促すことを検討すべきである。 |
現在、資産運用業界においてサステナビリティ関連の用語の使用には一貫性が欠けており、これがサステナビリティ関連商品に関する投資家の混乱につながる可能性、ひいてはグリーンウォッシングにつながり得るものと考えられます。このため、ESGへのアプローチ(例えば、ESGを統合した、ネガティブスクリーニング、そのクラスで最高の、といったアプローチ)に関する共通の用語と定義を発展させる需要があるものとされています。
| 監督当局及び政策担当者は、サステナビリティに関連した金融・投資家教育の取組みの促進、または、既存のサステナビリティ関連の取組みの拡充を検討すべきである。 |
投資家をグリーンウォッシングから保護すること、サステナビリティ関連のリスクへの意識を促進すること、サステナビリティ関連商品の健全で継続した成長につながることにおいて、金融・投資家教育は重要であると指摘されています。市場参加者への教育も想定されていますが、主にリテール投資家層に焦点をおいたものが想定されています。
1 経済産業省は、本研究会の設置に先立つ2021年5月28日、社会のサステナビリティを取り込んだ企業の長期経営や長期投資、それらに資する具体的な非財務情報開示や対話の在り方を検討するため、「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を立ち上げています。
2 本中間報告は、経済産業省のウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/hizaimu_joho/20211112_report.html)にて閲覧可能です。
3 本中間報告において、「サステナビリティ関連情報開示」とは、サステナビリティ項目(ESG事項(環境・社会・ガバナンス)や戦略、リスクマネジメント等)のうち、企業価値に関連する情報の開示であると定義されています。
4 「企業価値」とは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フローの見通しやその実現能力を、企業が環境・社会・経済に与える外部性に対する資本市場参加者等のステークホルダーからの評価も加味した価値であると定義されています。
5 なお、IOSCOは2021年11月に最終報告書「ESG格付け及びデータ提供者」も公表しています。
6 グリーンウォッシングとは、「資産運用会社が自らのサステナビリティ関連業務や投資商品のサステナビリティ関連の特徴を偽って表示する行為」を指し、「募集要項に使用されている特定のサステナビリティ関連用語の不適切な使用から、企業のサステナビリティ関連のコミットメントに関する虚偽表示、商品のサステナブル・インパクトを意図的に誤認させる欺瞞的なマーケティング活動まで、その範囲や重大性は多岐にわたる」ものとされます。近年、欧米の一部金融機関系の資産運用会社によるグリーンウォッシングが疑われる事例とこれに対する当局の調査が指摘されています。
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