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PwC弁護士法人は、企業および社会が抱えるESGに関する重要な課題を解決する法律事務所として、持続的な成長・発展につなげるサステナビリティ経営の実現を目指すためのさまざまなアジェンダについて、PwC Japanグループやグローバルネットワークと密接に連携しながら、特に法的な観点から戦略的な助言を提供するとともに、その実行や事後対応をサポートしています。
当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、サステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、わかりやすく説明いたします。
今回は、以下2つのトピックを紹介します。
欧州委員会と欧州対外行動局(EEAS)は、2021年7月13日、EU企業が事業活動及びサプライチェーンにおける強制労働に係るリスクに対処するためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス1(以下「本ガイダンス」といいます。)を公表しました。本ガイダンスは、欧州委員会が2021年2月18日に公表した通商戦略方針(Trade Policy Review)2 を受けて策定されており、EU企業3 が自社の事業活動及びそのサプライチェーンにおける強制労働に係るリスクについて、国際的なガイドライン等を踏まえて適切なデュー・ディリジェンスを行うための実践的な指針を示すものです。
本ガイダンスは、欧州委員会が導入に向け取り組む持続可能な企業統治(強制労働を含む人権・環境デュー・ディリジェンスの義務化)に関するEU指令 (Directive)4 とは異なり、法的拘束力はありませんが、EU企業(及び関連企業)は本ガイダンスを踏まえて自社及びサプライチェーンにおける強制労働リスクに係る対応を図ることが期待されます。なお、本ガイダンスは強制労働関連のリスクのみを対象とし、サプライチェーンにおけるその他のリスクについては対象外とされています。
本ガイダンスでは、「強制労働」について、国際労働機関(ILO)の強制労働条約(第29号)における定義(ある者が処罰の脅威の下に強要され、かつ、右の者が自らの自由意思で申し出たものではない一切の労務)を引用した上で、国連、OECD、ILO等の国際機関がこれまでに策定してきた、責任ある企業行動に関する国際基準を踏まえた、強制労働に係るリスク(以下「強制労働リスク」といいます。)への対応等の枠組みについて概観しています。特に、効果的なデュー・ディリジェンスを行うための枠組みとして、OECDのデュー・ディリジェンス・ガイダンス(以下「OECDガイダンス」といいます。)5 における以下の6つのステップを紹介しています6 。
1 European Commission, “Guidance on due diligence for EU businesses to address the risk of forced labour in their operations and supply chains”
2 “Trade Policy Review -An Open, Sustainable and Assertive Trade Policy”
3 本ガイダンスにおいては、対象となるEU企業の定義は定められていませんが、EUにグループ会社を置く日本企業やEU企業を自社のサプライチェーンに組み込んでいる日本企業は、その内容を把握し、対応を検討しておくことが必要であると考えられます。
4 “Sustainable Corporate Governance”
5 責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス21頁
6 OECDガイダンスにおけるデュー・ディリジェンスは、強制労働のみならず、強制労働を含む人権、環境、贈賄及び汚職等責任ある企業行動を確保するために解決すべき課題を対象としています。
上記に加え、強制労働リスクへの対処の観点から、デュー・ディリジェンスの実務において留意すべき事項を挙げており、その要旨は(2)以下の通りです。
1. 企業方針及び経営システム
以下の点を含め、強制労働リスクに適合した企業方針及び経営システムを整備すべきとしています。
2. 強制労働のリスク要因
考慮すべき強制労働のリスク要因(レッド・フラッグ)として、以下を挙げています。
| (a) カントリー・リスク要因 | |
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| (b) 移民・非公式性に関連するリスク要因 | |
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| (c) 債務の存在に係るリスク要因 | |
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3. 高リスクのサプライヤー等に係る詳細なリスク評価手法
上記リスク要因のうちリスクの高い領域については、以下のようなリスク評価の手法を取り得ることが指摘されています。
4. 強制労働リスクに関するデュー・ディリジェンスにおける留意点
(a)ジェンダー平等推進
強制労働リスクに関するデュー・ディリジェンス(及び対応策)は、ジェンダー平等推進の観点から、以下の点に留意して遂行する必要があることが指摘されています。
(b)民族的・宗教的なマイノリティ
強制労働リスクに関するデュー・ディリジェンス(及び対応策)は、民族的・宗教的なマイノリティの差別の観点から、以下の点に留意して遂行する必要があることが指摘されています。
(c) 原産地不明・高リスク地域産の原料
強制労働リスクに関するデュー・ディリジェンス(及び対応策)は、原産地不明・高リスク地域産の原料という観点から、以下の点に留意して遂行する必要があることが指摘されています。
1. 強制労働リスクへの一般的対処措置
デュー・ディリジェンスにて検出された強制労働リスクに対して具体的な対処措置を講じる際の留意点として、サプライヤーやビジネスパートナーとの間で、(i)その労働者の代表との効果的な集団合意の形成に向けた企業レベルでの対話を行いながら是正計画の実行支援をし(必要に応じ、財政的な支援を含みます。)、(ii)改善が見られない場合におけるサプライヤー等との取引関係解消の条件等についても対話を通じて設定すること等を挙げています。
2. 国家が支援する強制労働リスクへの対処措置
特に強制労働リスクのうち国家が支援するものと考えられる場合には、以下の分析を行った上で、政府等に対して取り得るコミュニケーションの手段を検討することが対処措置として挙げられています。
3. 取引関係の解消
サプライヤー等との取引関係の解消に際しては以下の点を検討すべきであることが指摘されています。
4. 救済
強制労働を強いられた人々に対する救済に関して、企業として留意すべき点として以下の点が指摘されています。
経済産業省に設置された「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」は、本年8月25日中間整理(以下、「中間整理」といいます)を公表しました。現在、125か国・1地域が2050年までのカーボンニュートラル7 を表明し、ESG金融の進展により、脱炭素化・低炭素化への移行が、資金調達の条件になりつつあります。また、グローバル企業を起点とする、脱炭素化を要請するサプライチェーン上の新たな取引慣行も形成されつつあります。このような現状において、中間整理は、カーボンニュートラルを巡る現状認識、成長に資するカーボンプライシング8の基本的な考え方や政策対応の可能性に関する整理を提示しています。本ニュースレターでは、そのうち政策対応の方向性について概要を解説します。
直近では、調達エネルギーの脱炭素化(RE100等)やパリ協定と整合した排出削減(“Science Based Targets”、SBT)等の国際的なイニシアティブの要請や、取引慣行の変化等を受けて、クレジット取引9の活性化についてニーズが高まっている状況が認められます。このため、クレジット取引の市場を活性化することで、民間主体でのプライシングがより一層加速するとともに、国全体としてもCO2削減への取組が加速することが期待されます。
具体的なアクションとして、①非化石電源投資を促進するキャップ&トレード10である非化石価値取引市場において、需要家の直接購入や利便性向上等、制度全体の見直しを進めること、②J‐クレジット制度11において、質を確保しながら供給を拡大し、デジタル化推進、自治体との連携等の更なる制度環境整備を進めること、③二国間クレジット制度(“Joint Crediting Mechanism”、JCM)12について、今後の利用拡大に向け、プロジェクトの大規模化や資金源の多様化、パートナー国拡大、民間資金の活用を目指した制度運用の改善を進めること、の3点が挙げられており、市場活性化のための見直し・環境整備が進められることとされています。
炭素削減のグローバル競争の前面に立つ企業等、一部のトップ層は果敢な取組を見せている中で、これらの動きを、国全体の削減目標の達成と、経済の成長に繋げ、更に世界全体のカーボンニュートラル実現に貢献する仕掛けを考えることが必要とされます。また、EU等が検討を進める炭素国境調整措置13について、研究会でまとめた基本的な考え方に基づき、他国の動向も踏まえつつ、戦略的な対応を行うものとされています。炭素国境調整措置においては、国ごとの炭素コストの把握が求められる可能性があるため、我が国の取組の現状を対外的に説明する一方で、化石燃料諸税・FIT賦課金等を含めた日本の現状の整理も重要であり、カーボンニュートラル社会における産業構造やビジネス実態を念頭にした税制、排出権取引、規制を含めたカーボンプライシング制度全体のあるべき姿についても引き続き整理・検討が必要であると指摘されています。
今後の検討の方向性として、①気候変動対策を先駆的に行う企業群が集積し、炭素削減価値が市場で評価される枠組みの構築、②炭素国境調整措置への戦略的対応、③カーボンニュートラル社会を実現する上でのあるべきカーボンプライシング制度全体についての継続的な検討、の3点が挙げられています。特に①に関しては、自ら高い削減目標を掲げ、その目標を資本市場に開示し、気候変動対策を先駆的に行う企業群が、目標達成のための自主的なクレジット取引等を行う枠組みである「カーボンニュートラル・トップリーグ」とトップリーグ参加企業を含む企業が、国内外の質の高いクレジットを取引することが出来る市場(市場における取引価格の公示も行います)である「カーボン・クレジット市場」の創設に関して、具体的な制度設計のため専門的な議論を進め、2022年度からの実証開始を目指すこととされました。
素含有量(カーボンフットプリント) を制度高く見える化し、トラッキング出来れば、企業や消費者が、低炭素な材を選択できる可能性が高まることが考えられます。また、炭素国境調整措置においても、製品に含まれる炭素の計測が求められる可能性に対応する必要があります。特に、EUが進める炭素国境調整措置は、欧州委員会が2021年7月14日に、鉄鋼・アルミ・セメント等、CO2多排出産業の特定産品を対象とする制度案が公表され、カーボンフットプリントを踏まえたバッテリーの表示義務や規制についても検討を進めています。 このような外国の動きも見据えつつ、我が国の国際競争力を高める観点から、特定製品のライフサイクルアセスメント やカーボンフットプリントの分析を進めることも必要と考えられます。このため、①IT技術等も活用したカーボンフットプリントの基盤整備について専門的な議論を進めることとされ、また、②制度枠組みを含めた蓄電池のカーボンフットプリントの検討を、2021年度を目途に行うこととされました。
加えて、現在、カーボンニュートラルを実現する上で、企業によるオフセットの需要が高まっており、またISO(国際標準化機構)等の議論においては、クレジットの取扱いが議論されています。このような状況下において、我が国として、クレジット取引の透明性確保や、国内における取扱いの明確化が必要とされます。このため、カーボンニュートラルを目指す上でのクレジットの位置付けの明確化について、専門的な議論を進めることとされました。
7 地球温暖化の主な原因となる二酸化炭素排出量を抑制するための概念であり、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」こと。排出せざるを得なかった分については同じ量を「吸収」または「除去」することで正味ゼロ(ネットゼロ)を図る。
8 炭素税や排出量取引など、排出量に応じてコストを負担する仕組み。
9 再生可能エネルギー(再エネ)導入など温室効果ガス排出を削減・抑制するプロジェクトをクレジットとして認証し、そのクレジットを売買する制度。カーボンプライシングの一形態であり排出量取引の応用型とされる。
10 温室効果ガスの排出量取引の一種であり、大口排出源の温室効果ガス排出量に排出枠(キャップ)を設定し、排出総量削減を促す制度。単なる総量規制ではなく、企業間での排出枠の取引(トレード)等を認め、排出削減に経済的インセンティブを与えつつ、柔軟な義務履行を可能とする。
11 省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度(https://japancredit.go.jp/)。
12 途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う制度。
13 いわゆる「国境炭素税」であり、内外の炭素価格差を埋めて、自国から他国への「炭素流出」を防ぐことを目的とする措置。
14 Carbon Footprint of Products の略称で、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量を CO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み。
15 ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法。
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