スマートシティにおける電気自動車導入のメリットと包括的導入施策の検討

2021-05-25

CO2排出量削減要求と業界変革トレンドによる電気自動車普及

2020年10月に菅義偉首相が所信表明演説でカーボンニュートラルに言及して以降、日本国内でCO2排出量削減の議論が活発化しています。国内CO2排出量全体の約2割を占めているのが運輸部門(自動車を含む)であり、排出量削減への取り組みに大きな期待が寄せられていますが、自動車のCO2は走行時に排出されるものだけではありません。CO2排出量のゼロ化を目指すにあたっては、ライフサイクル全体(自動車・バッテリー製造⇒運搬⇒利用⇒廃棄 )を見渡したうえで取り組む必要があります。そのためには、1. 自動車のライフサイクル全体で使用される電力を再生エネルギーなどのクリーンなエネルギーでまかなうこと、2.クリーンなエネルギーが活用できる電気自動車が普及すること、の2点は必須と言えます。海外では米国オハイオ州のコロンバス市、国内では横浜市や京都市などに代表されるスマートシティにおいて電気自動車の普及・導入は不可欠であり、そのメリットや導入に向けた施策を整理することが求められています。

スマートシティにおける電気自動車導入のメリット

電気自動車の普及は、走行時のゼロエミッションにつながるだけでなく、自動運転と組み合わせることで、生活サービスや公益サービス、エネルギーなどの領域も含めて、環境負荷が少なく持続可能な社会の構築を推進します。電気自動車をスマートシティに導入するメリットは以下のように考えられます。

  • 移動:電気自動車を活用した自動運転モビリティサービスにより、クリーンで効率的な移動や、交通事故の減少が期待されます。また、コネクテッドテクノロジーによりクルマの位置情報とユーザーのニーズを分析することで、カーシェアリングの普及促進を図ることができます。
  • 生活サービス:スマートハウスや家庭用充放電器の普及により、家庭のゼロエミッション化が進展します。過疎化または高齢化が進み、ガソリンスタンドが少ない場所では、地域の足として超小型電気自動車の活用が期待できます。
  • 公益サービス /エネルギー:電気自動車の蓄電および給電機能をエネルギーインフラの一部として活用することで、スマートグリッドの一部として系統電力の安定化(V2G)や、非常時における電源確保(V2H/V2Bなど)といった防災力の強化に寄与できます。また電気自動車を通じて周辺の人や車の混雑状況や、道路の破損、事故といった情報をリアルタイムで把握できるため、効率的な移動に役立つ情報を提供することができます。

電気自動車の導入には包括的な施策が必要

スマートシティへ電気自動車を導入することで、環境のクリーン化や生活の質(QOL)の向上、効率的な都市運営のなどのメリットが享受できると考えられますが、それには電気自動車自体が今以上に普及している、という前提が必要となります。そのためには、電気自動車の導入を優先的に進めるための、包括的な導入支援策を立案・実行する必要があります。例えば、以下が施策例として挙げられます。

包括導入施策(例)

  1. 電気自動車導入における税制などの支援プログラム
  2. パブリック充電設備の効率的配置
  3. 電気自動車へのパブリック駐車場の優先ゾーンの確保や価格メリットの提供
  4. 充電場所としてプライベートの空き駐車場(従業員用駐車場、夜のデパート駐車場など)の積極活用を促す支援施策
  5. 電気自転車の効率的活用と配置
  6. (電化)公共交通機関、シェアードモビリティサービス(電気自動車)、マイクロモビリティ、徒歩などの複合モビリティ設計とシームレスなサービスの提供実現
  7. スマートグリッドやスマートハウスなどのプログラムに参加する電気自動車保有者に対する税制優遇
  8. 蓄電・給電機能の認知向上および活用促進

PwCは、スマートシティにおける電気自動車の普及および利活用を念頭に、包括的な導入施策立案を支援していきます。

図表1 スマートシティにおける電気自動車導入のメリット

執筆者

藤田 裕二

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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