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2021-01-26
「2050年には、2010年比で農業従事者は5分の1になる」――。
自動運転トラクターで著名な、北海道大学大学院農学研究院の野口伸教授と先日お話しさせていただいた際に、衝撃的な話をうかがいました。
農林水産省によると、2018年の農業就業人口は約175万人。2000年には約389万人でしたので、21世紀に入ってからこの18年間で半分以下に減少したことになります。この事実を踏まえると、より急速に農業就業人口が減少し、2050年に2010年比で5分の1になったとしても、確かにおかしくありません。
農業就業人口の減少に伴い、食料自給率は低下の一途を辿っています。その背景には、地方の「ムラ」「マチ」から多くの人々が去らざるを得なかった事情があります。1950年代半ば以降の高度経済成長期には、多くの第1次産業従事者が国家の成長を支えるべく「ムラ」から都市部に移り住みました。1980~90年代には自動車中心の国家デザインのもと幹線道路が整備され、大型の郊外型店舗が多数現れたことで「マチ」は空洞化しました。
このように地方の「ムラ」や「マチ」に著しく依存する日本の食糧基盤が大きく揺らいでいる中、農業が直面するさまざまな複雑かつ困難な課題を解決するため、多くの新たな政策が産官学連携で積極的に推進されています。その1つがスマート農業です。スマート農業は、最新のテクノロジーを駆使することで労働生産性を高める取り組みで、例えば、以下のような技術群を現場に適用し、農業経営体の経営改善を図っています(下の例は耕種のみで畜産・林業などを含みません)。
労務削減・省力化のための技術
生産高度化に向けた技術
農業経営高度化のための技術
これらのテクノロジーの農業経営体への有効性を確認すべく、農林水産省は現在、全国約150地区で、スマート農業加速化実証プロジェクトを展開しています。
このようにスマート農業とは、農業経営体単体の労務削減・コスト削減、生産性の向上、収益性の改善を目指すものですが、さらに言えば、戦後置き去りにされてきた農業という産業を、日本の最前線に位置づけ、成長産業化させることさえ可能だと思います。農業、農村が産業の最前線に立つこととは、世界共通の価値観とも言える「持続可能な社会」の実現に他ならないでしょう。多様性に満ちた自然との共存をはかる農業こそが、多様で豊かな食生活を人々に提供し、健康で活力のある社会の基礎となると考えられます。そのような基盤が備わってはじめて、持続可能な経済活動の展開が可能になると思います。
「スマート農業」とは、自動化、省力化、人手不足解消や生産性向上のソリューションとして認知されていますが、今やそのコンセプトは大きく成長し、生産現場を超えた概念として捉えられています。すなわち、街づくりやライフスタイル、教育といった領域にまでその概念は拡張しており、次のようなことも検討、実施されています。
これらは全て、サイバー空間とフィジカル空間が密接に連携した、Society5.0が目指す姿でもあり、街づくりそのものです。このように、スマート農業は、地域に実装されることによってコミュニティに必要なあらゆる機能のハブになりえます。スマート農業が地域の中核となり、経済や教育、生活を支える「スマートアグリシティ」が、目指すべき未来の一つの形だと思います。
図1 スマートアグリシティ構想
PwCの強みである総合力を生かし、世界が憧れるスマート農業・スマートアグリシティの構築に貢献したいと思います。そしてアジアにも、世界にも、この「スマートアグリシティ」のプラットフォームを輸出し、農業という産業を成長産業にすることで、日本の「持続可能な社会」の実現はもちろん、世界の「持続可能な社会」の実現にも貢献していきたい、と強く思います。