中国のスマートシティの今

2020-10-06

中国政府が2014年に発表した「国家新型都市化計画2014-2020」では、中国が全面的にスマートシティの建設を推進し、都市ベースのビッグデータ・クラウド技術・AI技術の構築に重点を置くという大きな方針が策定されました。さらに2020年10月には「第14回5年間国家計画ガイドライン2021-2025」に関する検討会が開催される予定で、さらにスマートシティに力を入れていく方針が見えてきました。

こうした方針を背景に、この5年間で、中国国内の各都市がそれぞれの社会課題に向けてスマートシティの取り組みを進めてきました。例えば、浙江省の杭州市では、官民が連携してデータ分析プラットフォームを開発し、杭州市の交通渋滞・治安問題を大きく改善しました。また、広東省の仏山市は水素都市の建設を宣言し、水素エネルギーの全面活用のみならず、グリーン水素の製造、水素燃料電池、水素自動車の製造などにも力を入れて、水素産業の全面普及を都市のビジョンとして挙げています。

さらに、北京市の過密化の課題を解決する「新たな経済エリア」として建設された雄安新区は、イノベーションの最先端都市としての目標も持ち、ハード面もソフト面も新たに設計・建設されています。経済特区である深圳をも超えるプロジェクトとも宣言されています。

こうした取り組みと並行して、各都市では行政サービスの品質も改善されています。その理由としては、国による行政サービスの改善要請の結果、行政サービスに関する評価(採点)基準を設計し、期間内で基準に達していない都市の行政機関はその責任を問われるような仕組みを導入したことが挙げられます。中でも、行政手続きのオンライン化が重要な指標の一つとなっており、50%から70%の行政手続きがオンラインで完了できるようオペレーションとシステムが大きく変わりました。また、行政機関まで直接訪問が必要な場合でも1回で完結するように、行政サービスのデータベースの連携を含めて改善されました。さらに行政サービスの満足度に対してフィードバックする仕組みを導入した結果、住民の行政機関に対するストレスが軽減されました。

このような改善は、ビッグデータを扱うデータベースの構築やAI活用を推進した結果であり、中国ではデータやAI活用を得意とする巨大企業が現れました。このような中国のIT新興企業はその潮流を早読みし、各地の地方政府と連携し、その都市に合わせたデータベースやシステムを構築してきました。今後はさらなる技術の進化とともに、都市の機能をアップデートしていくようになる見込みです。また、こうした企業は行政の面のみならず、都市のあらゆるサービス領域にも深く関与しているため、彼らのサービスを使わずには生活が成り立たない状態であるとも言えます。

生活は便利になった一方、完全な監視社会になったという懸念もあります。このバランスの調整は今後の中国のスマートシティ推進上の新たな課題になるでしょう。

また、中国はスマートシティ関連のグローバルな連携にも積極的に取り組んでいる様子です。例えば英国企業と協業し、中国の都市を6つの基準(交通およびインフラ、医療、環境保護、教育、行政管理、ビジネス環境)で定性・定量を評価した上で、各都市の重点的に改善すべき領域を洗い出して、それぞれの行政と協力して社会課題を解決し、スマートシティを推進する事例があります。このようなグローバル連携を通じて、都市建設における海外の経験・ノウハウや先進的な理念などを参考にしつつ、投資の誘致にも成功することができれば、中国のスマートシティの推進はさらに加速するでしょう。

※詳しくは「2050年 日本の都市の未来を再創造するスマートシティ」レポートをご覧ください。

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