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2020-04-21
まちの姿を手元で再現することは、かつては大変困難なことでした。地図はあってもどこに段差があるのかさえわからず、まち往く人の行動文脈を知るすべはありませんでした。多角的に「まちの今」を知るためには現地視察をつぶさに行い、観測を行うほかありません。たとえ試みたとしても「今のリアルな姿」には程遠かったと言えます。
例えば、自治体は現地現実に則したデータを豊富にとり揃えているというわけではありません。一般向けに開放提供されているデータは、いわゆる業務のなかで得られる統計データの枠を超えてはいないのです。オープンデータという考え方が提唱されたことで、以前は開示されることが少なかった統計データが、開⽰されるようになったことは大きな進展ではあります。しかし、単なる開示だけでは不十分です。既存データの更改や、これまで取得してこなかった新たなデータの取得とその公開まで検討することが必要です。通信技術とデータ取り扱い技術が躍進する現代において、デジタルの文脈のなかでデータは一方通行ではなく、住民とまち、相互に互恵をもたらす鉱脈になっており、「まちの今」をとらえる有力な手段となり得ます。データを介した互恵関係構築を推進しない手はありません。
実際に、社会インフラ、生活インフラ、生活サービスといった各インフラ層でデータを介した相互サービスは容易に想像できます(図表1)。データの相互共有によって公共サービス・民間サービスをともに効率化し、人口減によるサービス劣化を抑⽌する取り組みが現実のものになっていきます。加えて、サービス利用者からのデータによりインフラ老朽化の検知、予防的保守などが実現可能となり、アンチエイジングシティが期待できる土壌も整備されていきます。
人間は環境が変わってもそれに適応することができます。例えば、住む所、働く所、付き合う人々、食べ物など外界に変化があると、多少の居心地の悪さは感じるものの、ある程度の時間が経てば新しい環境に慣れることができます。このように、外界の変化にあわせてうまく内界を変化させる外部との情報のやりとりを通じて自分自身の構造が変わるシステムを「開放型システム」といいます。
スマート化された自治体は、1つの開放型システムと捉えられます。開放型システムは共通機能の集約、連携から機能分担へとフェーズが進みますが、積極的にこれをリードすることを意識するのであれば、外界の変化にしたがって内部構造をどのように変化すれば後の処理に都合がいいのか、外界の変化をよりダイレクトに受け取り、また、内界の変化をどう外界に届けるか、高次の機能情報を処理するメカニズムを理解し、自治体同士が連携機能するスキームにいち早く取り組むことが必要です。
まちの歴史が民意とインフラ老化との闘いの歴史であることは古今東西の歴史を紐解けば明らかです。まちの発展とともに利便性を求めて人が集まりだす頃には、その中心部はすでに老化が進み、老朽化したインフラの上に立つ古い住宅が供給過剰状態になります。まちの外部から人口流入を呼んだ結果、失業者を増やす一方で、都市部として本来付加価値が高いはずの土地がビジネスに有効活用されず、雇用の創出を阻害してしまいます。こうした歴史から学べるのは、産業や建築物、インフラの老朽化を放置せず、積極的に解体し、新しいビジネスを興し、そのための再開発を行って活性化し、継続的に都市の再生を図る必要性があるということです。データ利活用によるベネフィットを実現することは短期的施策であるだけでなく、保守と再生を無駄なく実現するとともに、外部環境の変化に柔軟に対応しつつ、将来的に自治体間連携で後れをとらない環境を整える長期的施策にもなり得るのです。
※詳しくは「2050年 日本の都市の未来を再創造するスマートシティ」レポートをご覧ください。
藤田 泰嗣
マネージングディレクター,
PwCコンサルティング合同会社
総人口と労働力の減少、高齢化の進行が予測される昨今の日本において、「スマートシティ」の取り組みが注目されています。PwCはSociety5.0時代の社会課題の解決に向け、クライアントである行政とその先に暮らす住民の価値創出を、ワンストップで支援します。
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