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コラムの最終回となる今回は、PwCコンサルティング合同会社とHR総研(ProFuture株式会社)が共同で実施している「エンプロイーエクスペリエンスサーベイ2025調査(以下、EXサーベイ2025)*1」とグローバルサーベイレポートを比較し、どのような従業員エクスペリエンス(EX)向上のための対策が必要かについて述べていきます。
日本国内において、EXは経営課題としての認知度が高い一方、EX向上対策は2020年以降伸び悩んでいます。「EXサーベイ2025」調査によると、国内におけるEXの認知度は調査開始の2018年と比べて全企業で25ポイント上昇していましたが、2020年以降は伸び悩み、停滞傾向にあることが分かりました(図表1)。また、実際に施策の検討・実施に至った企業の割合を従業員規模別に見ると、中小企業(112社)は10%、大企業(23社)は26%にとどまっており、EXの重要性は認識されているものの、具体的な取り組みを進めている企業は少数派のようです。一方で、EXを向上させることが今後の経営・人材マネジメントにおいて「経営の最重要課題になる」または「経営の注力テーマの1つになる」と回答した企業は2022年比で3ポイント増の51%となり、半数以上を占めました(図表2)。これらの結果から、経営全体の課題としてEXが重要視されているにもかかわらず、具体的な施策の検討・実施に着手できていない企業が相当数存在することが分かります。
図表1:EXの認知度と取り組み状況
図表2:EX取り組みの重要度
実は規模が大きい企業ほど、やってしまいがちな落とし穴があります。それは、EX施策に時間と資金を投資するものの、その効果を十分に理解しないまま進めてしまうケースです。
そこで今回は、サーベイ結果およびグローバルレポートの結果を基に、以下の4つの視点をご紹介します。
EXにおける企業の注目領域について「EXサーベイ2025」の結果では、「ウェルビーイング領域」および「ワークスタイル/ワークプレイス領域」の平均レベルが最も高いことが分かりました(図表3)。この傾向は2018年の調査当初から変わらず、EX対策はウェルビーイング経営というイメージが根強いことがうかがえます。
図表3:領域別EX施策の取り組み度合い
ウェルビーイング経営において対策すべき観点について、「State of the Global Workplace 2025」*2によれば、日本を含む東アジアのエンゲージメントは世界平均より低く、仕事への熱意が低い地域とされています。ネガティブ感情は比較的少ないものの、ストレスは強いとされています。東アジアでは感情を大きく表出することが一般的でなく、感情が表面化しない一方でストレス負荷が高まる傾向にあるようです。また、マネージャーの訓練不足という構造的な問題があり、特に東アジア地域では上司との1on1の頻度や質が世界平均より低い傾向が見られます。これらの結果から、ウェルビーイング経営において日本企業では以下のような対策が必要です。
特に、マネージャー支援はウェルビーイング施策の中でも最もリターンが大きいとされています。なぜなら一般的に従業員のエンゲージメントが高まると、生産性は向上し、欠勤は減り、顧客との関係が深まり、売上も伸びるという好循環が働きますが、チームをエンゲージさせるにはマネージャーが一番のキーになるからです。一方で、マネージャーの役割としてビジネス目標の達成と人材育成・ケアの双方を課し、さらにはAIを利用した業務効率化を目指すよう推奨している企業も多いのではないでしょうか。こうしたマネージャーへの過度な負担の軽減のため、人事部門が人材面の課題を支援し、マネージャーが業務に集中できるような役割分担を進める企業事例もあります。マネージャーエフェクティブネス(※)への早急な対応と、マネジメント機能の再設計がEX向上の重要な施策となるでしょう。
※マネージャーエフェクティブネス(Manager effectiveness)とは、マネージャーが組織目標達成やチーム成果最大化のためにどれだけ効果的・効率的に職務を遂行できているかを示す概念です。目標設定、人材育成、コミュニケーション、問題解決能力などの多岐にわたる要素が含まれ、部下や組織全体のパフォーマンス向上に直結するマネジメント能力を指します。
「EXサーベイ2025」では、今後のEX強化領域として「キャリア・スキルディベロップメント領域」に注目する企業が多いことが分かりました(図表4)。PwCの「グローバル従業員意識/職場環境調査『希望と不安』2024」*3でも、「スキルアップは従業員にとって価値があり、会社の差別化要因と見なされている」と報告されています。また、「State of the Global Workplace 2025」*2によれば、日本を含む東アジア地域ではキャリア不安や職場不満が強く、転職意向が世界で2番目に高い(57%)状況です。また、東アジアではグローバル以上に「キャリア開発の可視化・機会提供」が重要とされています。これらの結果から、企業はキャリア・スキルディベロップメント領域の対策を早急に進める必要があるでしょう。
図表4:現在の注力領域と今後の強化領域
ある企業では、従業員自身がキャリアを構築する「キャリアオーナーシップ」の考え方を具体化するため、ポスティング制度の大幅拡大を実施しています。従業員はポスティング制度により昇格や異動、教育の機会を得られ、公募による異動でも異動先でのコミュニケーションが良好に進むという効果がありました。組織が事業戦略に基づきポストごとに必要なスキルや経験を定義する「適所適材」の考え方と組み合わせることで、施策として成功した事例です。
キャリアは一人一人異なり、個人の志向性が強く反映されます。そこで自律的なキャリア開発を促すため、AI搭載のスキル・インテリジェンス・プラットフォームを活用した人材開発を進める企業が増えています。私たちも支援の中でAI搭載テクノロジーの活用を推奨しています。
もちろん、提供したテクノロジーを利用してもらうためには、個々の従業員におけるキャリアオーナーシップのマインド醸成も必要です。まずはソフト面・ハード面両方の取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。
PwC米国の「HR Tech Survey 2022」およびPwC Japanグループの「HRデジタルトランスフォーメーションサーベイ2024」*4によると、米国ではHRテクノロジーの活用がEX向上に「かなり効果的」だと82%が回答しています。一方、日本では24%にとどまり、EX向上におけるテクノロジー活用が遅れている現状が見て取れます(図表5)。PwC Strategy&「デジタル化時代の労働力変革に向けた10の原則」*5では、次世代人材の確保に向けて、企業が最新テクノロジーを活用し、組織文化や働き方を変革する必要性が述べられています。特に、AIやモバイルアプリ、オンライン学習などを活用して継続的にスキルを磨く人材が求められ、これが雇用ブランディングの差別化要因になるとされています。AI時代の今、プライベートで利用しているテクノロジーと同等レベルのツールを自由に使いたいという従業員の期待に応える施策が必要です。キャリア開発で利用できるタレント・インテリジェンス・プラットフォームはAI機能搭載であり、すでに手に取っている企業も多いのではないのでしょうか。
一方で、日本国内では39%の企業がEXツール/HRテクノロジーを理解・活用できる人材が不足していると回答しており、HRテクノロジーに関する人材の育成や獲得に課題を抱えています(図表6)。この傾向は直近数年間で大きな変化なく続いており、AIを活用したジョブチェンジや新しい役割、業務プロセスの更新に苦労している状況がうかがえます。
図表5:HRテクノロジーによるEX向上のグローバル比較
図表6:EXツールの活用における課題
なお、2025年は自律的にタスクを実行するAI技術「AIエージェント」がグローバルで広がり、HR領域でも各社から新機能が発表されるなど、開発競争が激化しています。例えば、自律型AIエージェントとワークフローを搭載し、社内に導入されたチャットツールからさまざまなエンタープライズシステム、人事基幹システムなどにバックグラウンドで接続してデータ入力を支援する会話型AIプラットフォームが登場してきています。これらのAIプラットフォームは対話型の高精度な検索、自動化、オーケストレーションを備えており、HR領域のユースケースも多く見られます。具体的には、普段利用しているチャットツールから人事異動処理を指示することで人事基幹システムへの登録作業を自動化することや、複雑な出張申請、予約、精算処理をシステムに直接登録するのではなく、1つのチャットツールをインタフェースとして指示を出すことで、バックグラウンドでの登録処理を実現させることなどです。結果として、今後は採用プロセスの自動化、オンボーディング、日常の従業員問い合わせ対応、人事データ管理など、人事部門のオペレーションおよびチェック業務の効率化への活用が進むでしょう。企業側はもちろん、エンドユーザー側でも複数のシステムにまたがる複雑なマニュアルを確認し、人事担当からの指示の下で入力内容を修正する必要がなくなるため、間接業務(対価の発生しないノンチャージの業務)にかける時間を削減できるでしょう。
「EXサーベイ2025」の結果から、EXの重要性は認識されつつも、具体的な施策の検討・実施に至っている日本企業はまだ少数であり、特にテクノロジーを活用したEX向上の取り組みはグローバルと比べて大きく遅れていることが明らかになりました。
組織は従業員エンゲージメント計画に時間と資金を投資していますが、その効果を十分に理解しないまま施策を進めているケースもあります。例えば、従業員の心に本当に響くかどうか分からないまま、トレンドのエンゲージメント活動を実施するなどです。EXの成熟度を高めるには、局所的な対応ではなく、自社のエンプロイージャーニーにおけるペイン/ゲインポイントや従業員の声(Voice of Employee:VoE)を分析し、自社のEX向上に最適な施策を導入することが重要です。
本稿では、全3回にわたって、エンプロイーエクスペリエンスの基本的な考え方から実現における課題、具体的な対応策などを取り上げました。最終回では各種サーベイを基に実施すべき施策観点をお届けしました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック以降、柔軟性・リモートワークを求める従業員ニーズ、デジタルトランスフォーメーションとAI活用など、組織はさまざまな変化を受け入れてきました。従業員エンゲージメント調査は実施しているものの、そこから具体的な対策まで落とし込めていない企業の皆さんにおいては、本稿がエンプロイーエクスペリエンスにおける施策検討の一助となれば幸いです。
*1 PwC「エンプロイーエクスペリエンスサーベイ2025調査結果」(2025年8月発行)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/employee-experience-survey.html
*2 Gallup「State of the Global Workplace 2025」
https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace.aspx
*3 PwC「グローバル従業員意識/職場環境調査『希望と不安』2024」(2024年8月発行)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/hopes-and-fears2024.html
*4 PwC「『HR Tech Survey 2022』『HRデジタルトランスフォーメーションサーベイ 2024』」
~生成AIを搭載したHRテクノロジーがもたらす人事の未来~
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/journal/busi-pub202504.html
*5 PwC Strategy&「デジタル化時代の労働力変革に向けた10の原則」
https://www.strategyand.pwc.com/jp/ja/publications/report/10-principles-of-workforce-transformation-jp.html
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