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PwC Intelligenceの新刊『産業融合 インテリジェンスから解く分断・統合・再興』(ダイヤモンド社)が2026年4月に発刊されるに当たり、本シリーズでは3回にわたって執筆者インタビューをお届けしています。今回は第Ⅲ部「構造変化を力に変える各分野の勝ち筋」の各章の内容についてインタビューを行いました。産業用ロボットとフィジカルAI、モビリティ、金融、エンタメ・メディア、そして農林水産業など、マクロ環境の分断とテクノロジーによる融合が交錯する中で、各産業分野にはどのような構造変化が起き、日本企業はどこに勝ち筋を見出せるのでしょうか。各章の論点を、執筆者自身の言葉で分かりやすくご紹介します。
執筆者
第Ⅲ部 構造変化を力に変える各分野の勝ち筋
第9章 産業用ロボットから展望するフィジカルAI の未来
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアエコノミスト
伊藤 篤
第10章 中国のモビリティの進化・発展からうかがえる新しい価値
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアエコノミスト
薗田 直孝
第11章 データが動かす新しい金融
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー
水上 啓
第12章 エンタメ・メディア―エンタメコンテンツの「多目的消費」がもたらす産業融合
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence マネージャー
柳川 素子
第13章 農林水産業は自然資本産業へと進化する―消費者のよき選択を促すイノベーション
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー
相川 高信
伊藤:
確かに日本は製造業に強みがありますが、組織資本や人的資本への補完的投資によって、データやAIをさらに活かす余地が大きいと見ています。かつて日本は産業用ロボットの生産・利用の両面で世界トップでしたが、近年は中国に主役の座を奪われつつあります。しかし、本書は日本企業の「巻き返しの道」も示しています。これからのロボットはハードではなくソフトウェアとデータが価値を決める「フィジカルAI」の時代です。日本企業が長年の現場経験から蓄積した「ドメイン知識」、つまり精密な制御技術・環境適応力・顧客との長年の経験則は、まさにAI時代にも通用する強みとなります。産業用ロボット分野において、生成AIなどの頭脳に強い米国、製造に強い中国の存在など、今後の道は平坦ではありませんが、各国の強みも参考にしながら、日本経済と日本企業が成長できる余地は大いにあると見ています。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアエコノミスト 伊藤 篤
薗田:
欧米・日系メーカーがガソリン車(内燃機関)の分野で先行する中、中国は国家戦略としてEVなど次世代技術に集中投資し、多くの新興EVメーカーが市場参入しました。今や、中国のEVメーカーは世界全体の生産台数の約7割を占める圧倒的な存在となっています。さらに近年、中国のEVは単なる移動手段を超え、ソフトウェアで継続的にアップデートされるSDVへと急速に進化しています。車が常に機能追加・改善される「体験の場」になり、車載AIによる自動運転やパーソナライズ機能など、ユーザーのライフスタイルに合わせたサービスが次々と登場しています。中国規格のスマートシティや都市インフラとの連動を前提としたモデルが世界に輸出される可能性も高まっており、日本の自動車産業はハードの品質だけでは通用しない新しい競争の枠組みに直面しています。
SDV化の進展によって、車両の価値の重心がハードウェアからソフトウェアへ急速にシフトしています。車両本来の価値として耐久性・信頼性・精緻なモノづくりは引き続き重要ですが、今後はソフトウェア開発力・クラウド連携・異業種との協業体制の強化が急務となります。半導体・ICT企業との連携や、標準API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を活用したサービス開発など、既存の系列構造を超えた産業構造の再設計が求められます。また、自動運転の進展により車内がエンタメ空間になるなど、ユーザーの感情や生活者視点を重視した「体験価値の創出」も重要であり、AI・データ・プラットフォームの掛け合わせを通じて独自の競争軸が生まれます。そうした潮流において、成長市場である中国やインドを「巨大な試験場」と捉え、現地ニーズに即した製品・サービスを展開し、日本発の技術・サービスの国際標準化とともにグローバル市場で展開していくことが、日本企業が持続的成長を実現する道となります。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアエコノミスト 薗田 直孝
水上:
本章は、第Ⅱ部で取り上げたテクノロジーの進展を踏まえながら、実際に金融がどのように変わってきているのか、そして今後どのように変わっていくのか、大きな視点から捉えることを意識して執筆しました。金融はこれまで、資金の仲介を役割とする伝統的な産業として理解されることが多かったと思いますが、デジタル化が進む中で、その役割は徐々に変わり始めています。金融サービスはもはや金融機関の中だけで完結するものではなく、データやテクノロジーを通じてプラットフォームサービスの中に組み込まれるなど、金融機能そのものが他産業へと分散し始めています。
他方で、こうした形で金融機関の境界が薄くなり、産業融合が進む中でも、金融の本質までがなくなるわけではないと考えています。金融は単にお金を動かすだけの機能ではなく、不確実な将来に対して判断を行い、「信用を与える」機能でもあるからです。デジタル時代には、その判断材料が従来の財務情報だけでなく、データや日々の取引実態へと広がっていきますし、将来的には、お金そのものだけでなく、データの信頼性や真正性を見極め、それに基づいて新たな信用判断や価値付けが行われる場面も広がっていくかもしれません。しかし、さまざまな情報を基に相手や事業の実態を見立て、信用を供与するという役割自体は大きく変わらないと思います。したがって、ここに伝統的な金融機関の強みがあると考えています。
この章では、こうしたテクノロジーや産業構造の変化の中で、金融として何が変わり、何が変わらないのかを捉え直すことを重視しました。金融の境界が曖昧になっていく時代には、新しい仕組みやサービスに目を奪われがちですが、それだけでは金融の将来像は見えてきません。むしろ、本質的に残る機能を押さえた上で変化を捉えることによって、これから金融機関がどこで価値を発揮し、どのような競争力を築いていくべきかが見えやすくなると考えています。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー 水上 啓
柳川:
今起きている本質的な変化は、コンテンツ消費が「一方向」から「参加型・双方向」へ移り、価値の源泉が「作品そのもの」だけでなく、「体験」と「コミュニティ」にシフトしている点です。生成AIの登場によって制作コストが下がり、見た目に遜色のないコンテンツが増えるほど、差別化の要素は技術や量ではなく、「誰が、なぜ作ったか」という文脈、そしてファンが共創し続ける関係性の中に宿るようになるのではないでしょうか。
同時に、人の時間は1日24時間で変わらないので、ビジネス競争の軸はコンテンツ業界の同業他社ではなく、顧客の可処分時間を奪い合うあらゆる活動へと広がります。ここで重要なのは、単位時間当たりに、学び・健康・つながりといった複数の価値を「同時に」届けるという考え方です。実際にエンタメは教育、ヘルスケア、モビリティ、社会課題解決へと価値を波及させており、この「多目的消費」を起点に、産業の境界そのものが融合へと向かいつつあると捉えることもできます。エンタメ企業が異業種に進出する一方、従来エンタメと無縁だった企業もコンテンツの力で顧客体験を高める動きが加速しています。
この変化の中で、日本には大きな勝機があるはずだと考えます。日本には、世界的に求心力を持つキャラクターやアニメといったIPがすでに存在し、国内では投資・創作・配給・商品化・コミュニティが有機的に循環する「コンテンツの生態系」が自然に形成されてきました。この仕組みごと海外に展開し、ファンとの共創やリアル体験との連動といった、AIでは代替しにくい価値を組み込むことで、短期的なアテンション獲得競争とは一線を画した持続的な成長モデルを築くことができます。コンテンツを単体で輸出するのではなく、異業種と連携した生態系として世界に届けるための仕組みを設計できるプレイヤーが、次の時代の市場をけん引すると考えています。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence マネージャー 柳川 素子
例えば、畜産業は温室効果ガスの排出や大量の水・飼料の消費など環境負荷が大きく、増え続ける世界人口を養う上で持続可能性が問われています。健康面でも過度な肉食のリスクが指摘され、ヴィーガン志向など食生活を見直す動きが広がってはいるものの、肉の需要は依然として伸び続けているのが現実です。こうした消費と環境・資源のギャップをどう埋めるかは、食料システム全体に関わる大きな課題です。
どうしたら、農業・食料システムは持続可能なものに転換できるのでしょうか。
相川:
現行の農業・食料システムが大きな課題に直面しているのは明らかです。増加する人口に対して、健康的な食料を十分に供給するとともに、土壌など基盤となる自然資本の劣化を食い止める必要もあります。
しかし、近年のテクノロジーと政策イノベーションの進展は、健康や環境に配慮する消費者の「よき選択」を後押しし、「農林業の自然資本産業化」に貢献することができます。例えば、森林など自然資本の状態をモニタリングする技術が発達するとともに、農業分野でも、これまで暗黙知に頼ることが多かった施肥や給水、収穫などを最適なタイミングで行うことができるようになりつつあり、肥料や水を効率的に使えるようになると期待されます。消費者対策としては、行動経済学の「ナッジ(肘でつつき、行動を促す)」理論を応用して、健康的で環境にもよい選択を後押しする情報提供も行われるようになってきました。さらには、環境保全のためのエフォートを定量化するテクノロジーの発達により、自然資本の持つ多様な生態系の価値をマネタイズする仕組みも整い始めています。
その一方で、日本では、人口減少や耕作放棄地の拡大など自然資本の「過少な利用」が問題になっています。これに対しては、自然資本そのものへの投資に加えて、テクノロジーを活用できる人材や経営体への積極的な投資が行われる必要があります。また、AIなどテクノロジーの破壊的な進化(ディスラプション)が予測される時代において、自然資本産業は、精神的な領域も含めたウェルビーイングの向上に寄与するものとして、ますます価値が高まるでしょう。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー 相川 高信
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