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PwC Intelligenceの新刊『産業融合 インテリジェンスから解く分断・統合・再興』(ダイヤモンド社)が2026年4月に発刊されるに当たり、本シリーズでは3回にわたって執筆者インタビューをお届けします。第1回となる今回は、第Ⅰ部「分断がもたらす世界基盤の揺らぎ」の執筆者に、各章の内容についてインタビューを行いました。揺らぐ国際秩序、複合リスクへの対応、日本経済の成長余地、そしてグローバルサウスの台頭など、現在起きている構造的な変化は、企業や私たちの暮らしにどのような影響をもたらすのでしょうか。各章の論点を、執筆者自身の言葉で分かりやすくご紹介します。
執筆者
第Ⅰ部 分断がもたらす世界基盤の揺らぎ
第1章 揺らぐ国際秩序の先で日本はどう生き残るか
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアアソシエイト
榎本 浩司
第2章 脅かされる安全と安心―レジリエンストランスフォーメーションと新たな産業の萌芽
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence マネージャー
ウェイ ケイティ
第3章 無形資産投資によるAI版Jカーブ効果で復活する日本経済
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアエコノミスト
伊藤 篤
第4章 日本企業に求められる「グローバルサウス発」の取り込み
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー
岡野 陽二
榎本:
すでに影響は出始めています。私たちが使うスマートフォンや電気自動車には半導体が使われています。こうした身の回りにある最先端技術の多くは、民間と軍事の両方に使える「デュアルユース技術」に該当します。具体的には、最新のAI技術を支える先端半導体などは各国にとって特に重要な戦略物資と位置付けられ、それらの供給が米中間での輸出規制合戦の焦点になっています。米中対立の中で、中国はレアアースの輸出を制限し、米国は先端半導体の輸出を規制しています。いずれも私たちの生活に不可欠な物資であるため、この対立によってサプライチェーンが混乱すると、製品の価格上昇や供給不足として私たちの日常生活にも影響が及びます。
また、「世界の分断」も私たちの住む世界を大きく変えつつあるという意味で影響があると言えます。冷戦終結以降、世界は米国が大きな存在感を持つ国際秩序のもとで比較的安定していました。しかし近年、ロシアによるウクライナ侵攻、米中間の競争と対立の激化、中東情勢の不安定化などにより、その秩序が大きく揺らいでいます。そのような状況にあって、米中間の対立は経済面での覇権争いにとどまらず、どちらがこれからの秩序の中心になっていくかをめぐる競争でもあります。米中間の対立により、政治、経済、技術など多くの面で世界の分断が進むことが懸念されています。そうした分断は、企業にとってはサプライチェーンの安定性や中長期的な経営戦略にも直結します。私たちは世界の構造が変化する転換点におり、生活を取り巻くさまざまな場面でその影響を受けることになります。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアアソシエイト 榎本 浩司
ウェイ:
これまで国家の力は、「どれだけ攻めることができるか」(軍事力・経済力)や「どれだけ惹きつけることができるか」(ソフトパワー)によって測られてきました。しかし、巨大災害、サイバー攻撃、地政学的分断が連鎖・同時多発する時代には、「どれだけ壊されないか」「壊れてもどれだけ早く・より良く回復できるか」という側面が一段と重要になります。この「耐える・しなやかに回復する」能力を体系的に高める取り組み、すなわちレジリエンスの強化こそが、国家の信頼性と持続性を底支えする新しいパワーの源泉になると考えます。
危機の際にも基本機能が止まらず、迅速に復旧でき、予見可能なガバナンスを持つ国には、人・モノ・カネ・データが集まりやすくなります。
また、防災・危機対応をコストから付加価値創出へと捉え直すことで、強靭なインフラや防災を織り込んだ都市設計、災害予測のデジタル技術、事業継続ソリューション、レジリエンス金融などから成るレジリエンス産業が立ち上がると考えられます。これらは単発的な案件の寄せ集めではなく、複数の事業や技術が共振し合い、継続投資とイノベーションを伴う成長市場となり得ます。
さらに、レジリエンス産業はDX・GXと相互補完的に発展し得ます。データの統合・分析によって災害リスクを可視化するDXは、レジリエンスの精緻な設計と評価を可能にします。また、気候変動に伴うリスクの増大に対応するためのGXは、脱炭素を図ると同時に適応・防災投資を促します。
つまりRXは、DXとGXを「安全・安心」という観点から束ねるフレームとして働き、その結果として日本発の技術・制度・サービスを国際市場に展開する基盤になると言えます。
伊藤:
少子高齢化が進んでも、それに伴って必ず成長率が鈍化し、市場規模が縮小するわけではありません。経済は労働、資本、生産性が伸びるときに成長します。少子化にあっても、本書で取り上げた無形資産投資、人的資本や組織資本、AIを活かす補完的投資によって成長できる余地は大いにあります。近年ではデフレからインフレに変わり、市場規模も拡大していますし、企業は値上げで収益を拡大しています。この利益を新たな商品やサービスの開発につなげていくことが大事だと思います。
過去に設備投資が不足していた分、生成AIや新たなテクノロジーの出現によって、今後の設備投資次第で成長できる余地が大きいと見ています。また、生成AIの急拡大は抜本的に業務を変革するチャンスであるとの見方もできます。本書には、日本経済と日本企業にとって、デフレと少子高齢化という外部環境から陥りやすい悲観的な見方に囚われないためのヒントが随所にちりばめられていると思います。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアエコノミスト 伊藤 篤
岡野:
多極化と分断が進展する国際社会において日本企業が事業を多様化・強靭化するうえで、存在感を高めるグローバルサウスとの関係強化は重要です。
日本からは見えにくい動きですが、グローバルサウス同士が互いに連携強化を図っており、そこでは貿易、投資のみならず、テクノロジー、イノベーションの領域での連携が活発化することも想定されます。また、本格的経済発展を迎える段階ですでに携帯電話が普及している新興国は、「リープフロッグ」と呼ばれるように、日本などの先進国が経験したような既存の発展段階を飛び越えて、デジタルを活用したイノベーションやビジネスモデルの実装が起きやすい環境にあります。ある国で実装されたイノベーションなどが他の新興国に横展開される可能性も無視できません。
横展開の起点となる中国とインドの動きは特に注視したいところです。いわゆる「中国リスク」や景気減速を背景に日本企業の中国市場への関心は鈍っており、インドについても、事業展開をしていない企業や、生産・販売拠点として捉えている企業にとっては、現地のテクノロジーやイノベーションの動向は視界に入りにくい状況にあると言えます。しかし、これまでも多くの横展開を実現してきた中国は、官民双方の積極的な動きで新興国への浸透を加速させていくでしょう。また、グローバルサウスの盟主を自任するインドも、その規模や多様性といった強みを生かした展開に機会を見出しています。
グローバル展開を目指す日本企業としては、新興国で事業を行っているかどうかにかかわらず、「グローバルサウス発の横展開」の潜在力を軽視せず、自社事業への示唆を得るようにしたいところです。中国やインドにおけるイノベーションやビジネスモデルの動向や、その海外展開がもたらす潜在的な機会・脅威をいち早く把握すること、両国の拠点から得られる経験や情報の蓄積を他の海外拠点で生かすことなども有意義です。
PwCコンサルティング合同会社 PwC Intelligence シニアマネージャー 岡野 陽二
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