PSIRTが認知すべき海外法規制解説

日本企業の欧州サイバーレジリエンス法対応実態調査~SBOM活用状況と活用に向けた課題

  • 2024-04-09

日本の製品メーカーの製品セキュリティへの意識や対応がどのような状況かを把握するため、PwCでは日本国内の製品メーカーで働く580人を対象に、2023年10月、アンケート調査を行いました。

アンケート調査結果から、日本の製品メーカーの製品セキュリティに対する意識・対応状況が見えてきました。その概要をお伝えします。

調査概要

目的

  • EU Cyber Resilience Act(CRA)対応を主とした、日本の製造業における製品サイバーセキュリティに関する法規・国際標準への対応の状況を概観する
  • 製品サイバーセキュリティ業務に携わる方へ有益な参考情報を提供する

調査方法

ウェブによるアンケート

調査対象

日本の製造業関連企業において、以下に該当する方々

  • 製品セキュリティの取り組みに関与している
  • 製品セキュリティの取り組みには関与していないが、取り組みがあることを知っている
  • 製品セキュリティの取り組みには関与していないが、個人的に少し知識がある

調査数

580名

調査期間

2023年10月

まとめ

今回の調査結果のまとめとして、CRA対応における日本企業の課題には以下が挙げられます。

  • 海外法規に対する情報収集能力の低さ
  • セキュリティ人材の不足
  • 海外法規準拠に対する経営層の課題意識の不足

この課題が導いた現状として、企業規模を問わずサプライチェーン全体においてCRAへの対応が遅れていることが判明しました。このままでは自社の対応で手一杯となり、サプライヤーへの対応が遅れ、サプライチェーン全体のCRA対応が間に合わないといったシナリオが想定されます。日本の製造業が欧州市場での競争力を維持するには、早急な製品セキュリティ対応が必要です。

調査結果を踏まえ、日本企業がCRA対応において意識すべきポイントは、以下の3つにまとめられます。

1)情報収集活動の早急な始動

CRA対応における課題を調査すると、現場社員はセキュリティ人材が不足していることや、セキュリティ人材を育成/採用できないこと、役員・事業部長職は必要なセキュリティ対応体制が整備できていないことに最も課題があると認識していました。

前述の通り、新たな法規制について認知できなければ、対応のしようもありません。各市場における法規制や市場特有の要件に関する情報の入手ルートを確保することがまず非常に大事になります。

2)市場を失うリスクの理解

製品の品質は、新たな機能や利便性といった機能性のほかに、機能安全性や環境安全性といった非機能面の品質があります。製品のセキュリティは、そのような非機能面の品質の1つで、個人情報保護などを含めたサイバーセキュリティの確保がいま問われている製品セキュリティ品質であるという理解がまず重要になります。

その上で、そういったセキュリティを確保できない製品は市場から排除しようという動きが今般の英国におけるPSTI法であり、欧州のCRAです。製品のセキュリティに関するコンプライアンス・倫理性がメーカーに問われていると理解する必要があります。したがって、製品セキュリティ対応ができていないメーカーは、製品のセキュリティを確保できていない製品を売れなくなる、つまり英国や欧州市場を失うという事業リスクを負うことになる点を、特に経営層は理解する必要があります。その対応のためには、必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)の投資も伴うことは言うまでもありません。すでに欧米のメジャーな企業は製品セキュリティ対応にコストをかけたうえで競争力のある価格で製品を出してきていることを考えれば、いかに生産性・効率性を上げて製品セキュリティ対応を行うかも課題として認識すべき大事な点です。

3)法規制適用タイミングから逆算した対応計画

製品の品質確保は一朝一夕に実現できるものではありません。特にCRAは、サイバー攻撃にも安全な製品を開発するプロセスがあることを求めており、製品が結果的に安全なだけでは不十分で、組織としてセキュリティを確保できる状態に成熟させる時間が必要になってきます。

前述の欧米メジャー企業はすでに基本的なセキュリティ対応の取り組みを確立していることと比較すると、これから体制を立ち上げる日本企業とは各段の経験値の差が生まれています。

この差を埋めるには、とにかく早急に、先人の経験を踏まえて効率的に体制(組織・規程・プロセスなど)を構築し、構築した体制における社内の課題を解消し、現在欧米メジャー企業が直面している課題(SBOMや欧州での迅速な脆弱性報告方法など)と同じ課題に直面できるよう、キャッチアップすることが重要です。

CRAは2024年3月の欧州議会の本会議で承認されました。今後EU理事会での承認を経て、官報に掲載された後、成立となります。報告義務はCRA発効日より21カ月後、全要件はCRA発効日より36カ月後に適用されるため、早ければそれぞれ2025年12月頃、2027年3月頃となる見込みです。欧州向けに関連製品を製造・販売する企業は、適用までのタイムラインから逆算した対応計画を策定し、取り組みを早急に開始すると良いでしょう。

執筆者

林 彦博

マネージングディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

伊藤 公祐

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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亀井 啓

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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