職員が一から作った、私たちの「判断軸」

なぜ、Critical Fewに取り組んだのか:
直面していた課題

皆さんは「The Critical Few」(少数の重要な要素)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「The Critical Few」とは、目指す組織の姿と現状とのギャップに着目し、そのギャップを埋めるための「少数の重要な行動(The Critical Few Behaviours)」を職員同士が協力してボトムアップで自ら設定するものであり、皆がその行動を繰り返していくことで、組織を目指す姿に近づけていくという方法論です。

私たちは今回この「The Critical Few」という方法論を採用し、「私たちの判断軸(共通の行動規範)」を全職員で一から作りあげました。

では、そもそもなぜ「The Critical Few」を採用したのかというと、これまでは、当法人においてカルチャー変革を担うCulture Change Office(以下、CCO)が主導する形で「Speak Up & Action」「Listen Up」「Follow Up」という行動規範を組織に浸透させていこうとしていたものの、各職員一人ひとりがそれらを自分ゴト、あるいは自らの日々の業務やキャリア形成に直接影響するものとして捉えられていないという課題があったためです。

組織として行動規範を定め、浸透させる取り組みが進められていたのですが、実態としては職階に関わらず声をあげ、お互いに傾聴することを推奨する「Speak Up」以外はあまり浸透していませんでした。また、「Speak Up」についても、「下の職階のメンバーが、上の職階のメンバーに対して声をあげる」との内容として捉えられがちであり、「職階に関わらずお互いに率直に意見や考えを伝え合い、自らの状況を共有する」「お互いに傾聴し、フォローし合う」という内容が抜け落ち、正しく理解されていないケースが多々見受けられました。

このような課題があったことから、行動規範を全ての職員にとっての「自分ゴト」として捉えてもらう必要があり、そのために「The Critical Few」という方法論を使い、全職員が何らかの形で携わりながらボトムアップで「私たちの判断軸」を作ることを目指したのです。

課題に対するリーダーたちの想い

行動規範が自分ゴト化されていないという課題を乗り越えるために「The Critical Few Behaviours」を採り入れることに到った「経緯と期待」、そして「今後の展開」について久保田正祟執行役副代表、鈴木智佳子カルチャー変革担当執行役、プロジェクトリードを務めた神林徹ディレクターに語ってもらいました。

※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。

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8:49

ボトムアップでの「判断軸」の策定行程

今回「判断軸」を策定するにあたり、重要な点は大きく2つありました。

1つは、「策定プロセスに職員自らがボトムアップで参加し、主導する」という点です。そしてもう1つは、「組織文化の観点から、職員が持つ共通の性質を見つけ、共通の性質を持つ私たちだからこそ目指すことができる『判断軸』を策定する」という点になります。

上記2点を踏まえ、私たちは以下の行程を採用しました。

No. 「判断軸」の策定行程 策定行程の概要
1 プロジェクトメンバーの募集 全部署、全職階からメンバーを募集
2 全社調査の実施 組織文化の観点から、職員が持つ「共通の性質」を見つけるために全社調査を実施
3 差異分析の実施 全社調査の結果を踏まえ、職員が持つ「共通の性質」を特定し、Vision達成に向けて欠けている「性質」の洗い出しを実施
4 全社ワークショップの開催 差異分析の結果に基づき、現状欠けている「性質」を補い、「判断軸」の候補を洗い出すためのワークショップを全部署、全職階から広く参加者を募って開催
5 「判断軸」の候補のリストを作成 ワークショップにて展開された議論内容をとりまとめ、「判断軸」の候補を決定。その上で、3つの軸(カテゴリ)の候補および、それぞれのカテゴリを選出するに至った背景やストーリーをまとめたリストを作成
6 予備投票の実施 ワークショップに参加したメンバー全員が予備投票を行い、(5)で作成したリストの中から各カテゴリの候補を3つずつ選抜
7 本投票の実施 全社投票を行い、予備投票にて絞られた「判断軸」の候補(3カテゴリ×3個=9個)の中から、各カテゴリにつき1つずつ選定
8 選定された「判断軸」の周知 本投票にて各カテゴリで1つ、計3つを「判断軸」として決定し、全社への周知を実施

このような行程に従って全職員が主体的に参加した試みは初めてでしたが、広報活動や投票促進活動含め、ボトムアップで「判断軸」を作り上げることができました。

以下では、この策定行程のうち、ワークショップに実際に参加した職員の声をご紹介します。

ワークショップ参加メンバーの声

今回の全社ワークショップは、私に多くの気付きを与えてくれました。職階の違う人と話すことで自分の視野が広がり、より俯瞰的にディスカッションすることができました。ワークショップを通じて業務を超えた交流が生まれたことは、とても有意義だったと感じています。この取り組みを通じて、より良い組織づくりに少しでも貢献することができたと感じますし、策定プロセスに関わることで、行動規範をより自分ゴトとして落とし込むことができたと思っています。
(鍬形美緒さん、アソシエイト、サステナビリティ・アドバイザリー部所属)

ワークショップでの議論は、異なる部署・職階のメンバーの多様な考えを知る貴重な機会となりました。協議テーマに対して各グループでさまざまな意見が出ましたが、組織をより良くしたいという想いは同じであり、PwCの仲間として共通の性質・価値観を持っていることを実感しました。対話を通してボトムアップで「判断軸」を決めていくThe Critical Fewの取り組みは、行動規範を自分ゴトとして捉える上で、とても有意義なものであったと思います。
(笹江勇佑さん、マネージャー、大阪アシュアランス部所属)

ワークショップは参加者がそれぞれの想いを自由に発言できる場になっていたと思います。協議テーマの1つであった「始めるべき行動や止めるべき行動」をグループで話した際、自分自身が言語化できていなかった内容をメンバーが言語化してくれたり、互いの意見に共感し合ったりできたことに心地良さを感じました。お互いへの質問や意見交換を通じて、多くの共通点を見つけることもできました。こういったコミュニケーションが日々当たり前になれば、とても居心地の良い職場環境が実現できると感じました。
(山口千里さん、ディレクター、テクノロジー・エンターテインメントアシュアランス部所属)

ワークショップ参加メンバーインタビュー

ワークショップに参加して感じたことや、The Critical Few Behavioursを今後の業務にどう活かしていくかなど、プロジェクトメンバーである森詩織シニアマネージャーが、ワークショップに参加した吉岡美佳シニアマネージャーにインタビューをしました。

※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。

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4:04

「判断軸」策定の盛り上がりに寄与したキーナンバー

約50% 全社調査の回答率

全社調査の実施

全部署で計3,000人以上の職員が在籍する中、全社調査においてはその約50%が回答に参加し、職員が持つ「共通の性質」の洗い出しを行いました。

120人超 ワークショップへの参加者数

全社ワークショップの開催

全社ワークショップにおいては少人数制を採用し、1テーブル4名程度で合計約15名前後が参加する形式のワークショップを計10回開催しました(2回参加したメンバー含む)。全部署、全職階から120人超が参加し、熱い議論を交わしました。

70人超 予備投票への参加者数

予備投票の実施

予備投票においては、ワークショップに参加したメンバーから70人超が投票し、「判断軸」の候補について、3つのカテゴリにつき、それぞれ3候補に絞り込みました。

81.3% 本投票への投票率

本投票の実施

本投票においては、予備投票で絞り込まれた各カテゴリの候補について、全職員が投票を実施しました。全部署計3,169人の職員の81.3%である2,576人が回答に参加し、各カテゴリにつき1つずつ「判断軸」を選定しました。

※投票当時、休職・出向・非常勤などであった442名を除いた人員数

策定行程に対する振り返り(プロジェクトメンバー)

今回私たちは、全職員が関わることで一から「判断軸」を作りました。上述のキーナンバーに見られるように、社内においても一定の盛り上がりがあり、策定行程自体が非常に意義深いものとなりました。

このプロジェクトにメンバーとして参加した2名にその策定行程を振り返ってもらい、最も大変だったポイント、最も心がけたポイントなどについて語ってもらいました。

この判断軸策定プロジェクトにメンバーの1人として参加しましたが、判断軸の選定に到るまでにはたくさんのハードルがありました。 まず何と言っても「ボトムアップ」での策定行程としたため、多くの職員の声や、参加無くしては成立しません。そのため職員一人ひとりに自分ゴトとして参加してもらい、その声を集めるためのさまざまな仕掛けをプロジェクトチーム一同で考え、実践していきました。 具体的には、サーベイ結果を社内公表し、ワークショップを複数回開催したほか、この取り組みに参加した理由をワークショップ参加者に語ってもらい、それを宣伝動画として自身の所属部署などへ紹介してもらいました。加えて、投票に向けては、職員皆が共感できる「ストーリー」を描き、「あなたの1票が明日のPwCを決める」ということを繰り返し伝え、投票までの期間を盛り上げていきました。その甲斐あって今回、納得の行く判断軸を選定できたのだと思います。
(元田恵美子さん、シニアマネージャー、Critical Fewプロジェクトチーム)


プロジェクトメンバーとして最も心掛けた点は、ワークショップなどで寄せられた「判断軸」の候補などについて、皆の熱い想いが表現された微妙なニュアンスの違いを、ありのままに吸い上げることでした。ワークショップには運営側の立場で参加しましたが、私自身の考えに対して、運営側・参加側という立場の違いにかかわらず、さまざまな共感や意見をもらいました。「ボトムアップ」での「判断軸」策定手法の適切性を感じるとともに、皆の熱い想いから生まれるこの「判断軸」はきっと誰もが共感できるものになるだろうという強い確信を抱きました。最後の「判断軸」候補の「リスト作成」の段階では、「皆の声が適切に反映できているだろうか」と何度も立ち止まりながら、細部までこだわり「ストーリー」の文言の最終調整を行いました。結果的に本投票において、81.3%と非常に高い投票率を達成できたことは、半年以上続けてきたプロジェクトの節目として、感慨もひとしおでした。
(中島陽斗さん、アソシエイト、Critical Fewプロジェクトチーム)

The Critical Few Behaviours
~策定した3つの「私たちの判断軸」~

以下では本投票で実際に選定した3つの「私たちの判断軸」を、判断軸の背景にあるストーリーとともに記載しています。

進化:昨日の自分を超えて行こう

成功は1日ではやってこないが、毎日少しずつ成長することはできる。 

昨日できなかったことに挑戦してみたり、昨日やり損ねたことを終わらせたり、
小さなことの継続的な積み重ねが未来の自分につながっていく。

毎日愚直に取り組み、昨日とは違う自分に会いに行こう。

協働:自分にも相手にも常に誠実でいよう

自分の言動に責任を持ち、誠実に行動しよう。

他者、そして社会から信じられる存在になるには、誠実さが必要となる。

誰に対しても、どんな時でも誠実であることが信頼につながる。

挑戦:あらゆる未来の可能性にオープンでいよう

日々の忙しさの中でも、未来に向けた行動を忘れないようにしよう。

常に自ら情報を収集し、判断して発信する。

自分ができる小さな行動が、ひいては世界を大きく変える第1歩になる。

ボトムアップでの策定行程から得られた成果

プロジェクトメンバーからのメッセージでも言及されているとおり、今回は「判断軸」をボトムアップで策定できたのみならず、その他にも大きな前向きな成果がいくつも見られました。

これまで気付けていなかったことについての大きな「気付き」を得た。他の部署・職階のメンバーが思っていることについて知り、「共感」し、共通の性質を見出すことができ、組織としての絆が深まった。この活動を通じて、自分たちの未来を自分たちで作っていけるという大きな「自信」を得た――。「判断軸」の策定を進める中で、組織、そして各個人が得たものの大きさは、測り知れないものがあります。

気づき

  • 普段知っている仲間が大切に思っていることに触れることができた。その気付きは既に自分の日々の行動に影響を与えている。
  • 世代、経験、立場を乗り越え、1人1人が何処に仕事のやりがいを感じ、日々どの様な工夫、行動をしているのかについて多くの学びを得た。

共感

  • さまざまな差異がありながらも、感じていること、重きを置く価値観、こうありたいと願う姿には多くの家族的な類似性・共通点があることを感じた。

自信

  • 活動を通じ、自分達の未来を自分達でより良いものにできると信じることができた。未来がとても明るく見え、胸が熱くなった。

 

策定行程への参加メンバーからの声
~策定行程から得られたもの~

今回の策定行程を通じて、想像以上にたくさんの方が「PwCの未来について考え、会社をより良くしたいと思っている」ということを知ることができ、参加して良かったなと思いました。 日々の業務の中では、「どうしたらPwCがより良くなるか」ということを職階・部署別け隔てなく議論するような機会はあまりありません。しかし今回、さまざまな立場の人が現状をどのように捉えていて、どのように変えていきたいかということを知ることができ、とても貴重な経験になりました。
(富永真衣さん、シニアアソシエイト、保険アシュアランス部所属)

PwCの大きな魅力の1つは、年齢や経歴に関係なく、正しいことを言える「Speak Up」のカルチャーだと思いますが、この「判断軸」の策定行程は、部署の垣根を越えて「Speak Up」を体感できる時間でした。また、1つの課題に対する感じ方は個人個人によって全く異なり、それを伝え合って理解することで「他人を尊重する」ことの重要性を実感することができましたし、同時に多くの仲間を作ることができました。この行程を通して得られた経験を財産として、さらに自らの視野を広げ、より多くの仲間を作っていきたいと思います。
(細田詩穂さん、シニアアソシエイト、消費財・産業財・サービスアシュアランス部)

今回策定行程に参加し、将来への「期待」を感じました。 PwCのカルチャーをより良いものにするためにボトムアップでどのような行動改革を起こすべきか、他の部署・職階のメンバーならではの考えを知ることができ、また自分の考えとの共通点にも気付くことができました。ワークショップではさまざまな意見が出ましたが、「PwCをより良い組織にしたい」という共通の目標に向けて前向きな議論ができ、とても良い機会になりました。これから創り上げる「未来のPwCへの期待」を感じられる貴重な経験になったと思います。
(加藤大貴さん、マネージャー、財務報告アドバイザリー部所属)

今回のワークショップに参加したことで、「対話を重ねることの大切さ」を再認識しました。具体的には、「私たちの判断軸」というテーマで、職階に関係なく仲間と真剣に対話を重ねたことで、自分や仲間(他者)の判断軸がどのようなものかを掘り下げて理解することができました。そして誠実に相手と向き合い、対話を重ねることの大切さに気付かされ、信頼を構築するとはどういうことかという点についても考えさせられました。今後も、一人ひとりの「真剣な想い」に基づいて決定した「判断軸」を心がけながら日々を過ごしていきたいと思います。
(西仁和さん、ディレクター、福岡アシュアランス部所属)

今後のロードマップ

2023-24年度においては、今回策定された「判断軸」を「浸透」させるための施策に取り組んでいきます。

しかしながら、「判断軸」が定着すれば、組織の姿は変わっていきます。また、社会情勢の変化に伴って組織の戦略や目指すべき姿が変容すれば、「判断軸」も併せて変化させる必要があります。

したがって、「判断軸」を策定する各種行程、およびそのロードマップは終わりなき旅と言えます。その長いロードマップにおいて私たちはこれからも幾多の変化や、それに伴う盛り上がりを経験していくことになるでしょう。

※今後2025年度には、PwC Japan有限責任監査法人として上記「判断軸」の見直しを開始し、2026年度に再度、新しい「判断軸」を選定することを予定しています。

浸透施策の具体例

私たちが今回策定した「判断軸」の「浸透」と「定着化」に向けては、さまざまな場面で既存の取り組みと紐づけて活用し、日々の業務や、各種イベントの中に融合させていく必要があります。

以下の表に示すように、プロジェクトとして浸透のためのワークショップを実施することはもちろんのこと、日々のコーチングの場面、採用活動、また各種イベントにおいて、経営陣だけでなく職員一人ひとりが「判断軸」を活用することが求められます。

No. 取り組み施策 施策の概要
1 浸透のためのワークショップの実施 選定した「判断軸」を職員へ広く浸透させるため、全国の各拠点において、「判断軸」をどのような場面でどのように活用できたか、または活用していくべきかなどのディスカッションを行うワークショップを実施
2 コーチングの中での活用 中長期的なキャリアや日々の業務でのパフォーマンスなどに関してコーチとコーチーが定期的に開催する面談の中で、対話のきっかけとして「判断軸」を活用し、同じ目線で深度あるコミュニケーションを行う
3 On the Job Training (OJT)における活用 現場での業務において、チームマネージャーとメンバーが同じ目線でコミュニケーションを行うため、業務の区切りごとに実施される振り返り面談の中で「判断軸」を活用
4 採用活動における活用 定期採用において、志望者に組織のカルチャーをより正確に理解してもらうため、法人案内や法人主催イベントなどにおいて「判断軸」やThe Critical Fewの取り組みを紹介
5 社内外イベントにおけるリーダーによる引用 全体会議や各部署の会議などの社内イベント、その他社外向けのイベントにおいてリーダーが率先して「判断軸」を引用

未来への期待

職員が一から作った「判断軸」を組織全体に「浸透」させていくことで、どのような化学反応が生まれ、変化がもたらされ、どのような組織が創りあげられていくのか――。プロジェクトメンバーをはじめ、職員一同が、その明るい未来を大きな期待を持って見つめています。

※参加者の肩書、所属法人はワークショップ参加時のものです

主要メンバー

鈴木 智佳子

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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原澤 哲史

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

神林 徹

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

Email

元田 恵美子

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

米山 宏樹

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

小山 和博

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

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