米国メディア・テレコム業界 2019年第3四半期のM&Aに関するインサイト

2020-01-27

迫り来るストリーミング戦争を背景に、コンテンツが引き続き大型案件を牽引

2019年上半期は低調だったものの、第3四半期には取引件数の回復が見られた。公表された取引は、件数ベースで第2四半期から16%増の184件となり、金額ベースでは303億米ドルとなった。

当四半期には、この数年、断続的に話題に上っていたCBSとViacomの再統合がついに公表された。おそらくはエンタテイメントのコングロマリットが集約されていく最近の流れに終わりを告げるものとなるだろう。主要プレイヤーは今、迫り来るストリーミング戦争を前に、買収後の統合や強化を図ったコンテンツライブラリの収益化に向かって動いている。

2019年第4四半期以降については、デジタルパブリッシングプラットフォームの集約が具体化する中、OTT(オーバー・ザ・トップ)のコンテンツ/データやAI重視の取引がM&Aを牽引していくものと当社では見込んでいる。

「第3四半期はまさに嵐の前の静けさという状況であった。DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)OTTプラットフォームという嵐によって、今後、エンタテイメント・メディア業界は大きく変わっていく。これにより消費はアナログからデジタルへの移行の最終章に入り、この業界を何十年も支えてきたビジネスモデルが変わることになるだろう」

バート・スピーゲル、PwC米国テクノロジー・メディア・テレコム、ディールパートナー

トレンドとハイライト

2019年第3四半期に公表された取引件数は184件に上り、2018年第3四半期と比べ減少しているものの、2019年上半期に改善の動きが見られ、第2四半期比では16%増となった。

2019年第3四半期に公表された取引金額は303億米ドルとなり、50億米ドルを超える大型案件が2件、10億米ドルを超える取引が6件あった。

2019年3四半期は、ほぼ全てのサブセクターが第2四半期を上回る伸びを示した。その中でも特に2つのサブセクターの取引が好調で、広告・マーケティングは53件、インターネット・情報は43件を記録した。

プライベート・エクイティと米国へのインバウンド取引の件数は引き続き好調で、2019年上半期と同様に、それぞれ取引件数全体の31%、21%を占めた。


2019年第3四半期のM&Aハイライト


メディア・テレコム業界のM&Aに関するサブセクター別分析

当四半期の通信業界はこの1年で最も好調で、サブセクター全体で取引件数が増えた結果、取引金額は50億米ドルとなった。同サブセクターを牽引したのは、DishによるSprintのプリペイド携帯事業と周波数帯の買収発表で、こちらは司法省からの承認獲得が難航していたSprintとT-Mobileの合併を視野に入れた動きである。

リクリエーション・レジャー業界を牽引したのはスポーツ関連の取引で、個人や投資家グループがプロスポーツリーグのNBA、NFL、MLBに出資した。

当四半期、放送業界は件数ベースで低調だったが、ディズニーが傘下の21世紀フォックスが保有するYES Networkの持分を35億米ドルでヤンキース、アマゾン、Sinclairが構成する投資家グループに売却した。


メディア・テレコム業界のM&Aの展望

この数年、断続的に話題に上っていたCBSとViacomの合併がついに正式に公表された。従来のメディアと通信会社が分割を経て再び統合され、業界の集約化が見られている。ディズニー、AT&T、Comcast、ViacomCBSほか、一握りのメディアコングロマリットだけが残ってフェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグル(FAANG)と競合することになる。2019年第4四半期以降は、こうした合併の結果が形となって現れ始め、新たなストリーミングプラットフォームDisney+、Apple TV+がサービスを開始し、2020年上半期にはAT&TのHBO Max、ComcastのPeacockがこれに続く予定である。

大型のM&Aが完了し、これらの企業が買収後の統合に移ることから、再編の動きはこの数年よりも鈍るものと見ている。また、競争の最前線がストリーミングプラットフォームに移行するため、新規・既存のコンテンツライブラリに対する需要、データ機能、視聴者のトレンドを把握・予測できる人工知能がM&Aを牽引すると予測している。当社では先般、「The rise of Artificial Intelligence in M&A」と題した調査レポートを公表したので、ご参照いただきたい。

同様の傾向はデジタルメディアの分野でも見え始めている。パブリッシャーは収入源を多様化させるとともに、規模を拡大してフェイスブックやグーグルといった巨大IT企業と広告収入で競合できるようにすることを目指して再編を進めている。2019年第2四半期にFusion MediaがGizmodo Groupを買収したのに続き、第3四半期にはVoxがNew York Mediaを買収した。この流れは第4四半期に入っても続いており、ViceがRefinery29の買収を、Group NineがPopSugarの買収をそれぞれ発表している。

OTTや出版、その他デジタルサブセクターのいずれを問わず、メディア・テレコム業界のM&Aは、今後も、より視聴者に届き、よりよく視聴者を理解するための手段とコンテンツによって、牽引されると当社では予測している。

データについて

メディア・テレコムセクターは、技術の進歩、従来型メディアと新しいメディアの融合、消費者の嗜好の変化などに伴い、常に変わり続けています。

当社はその変化に着目し、分析を行っています。分析に当たっては、原則としてThomson Reutersの定義による「メディア・テレコムセクター」を対象としています。ただし通信、インターネットソフトウェア&サービス、Eコマース分野は、分析の目的上、「通信」および「インターネット・情報」に名称を変更しています。また特記しているものを除き、公開された取引金額として示している数値は、取引の金額をもとに決定しております。一部の事例では企業価値が取引金額を上回る場合がありますが、分析の際はその点を考慮しておりません。

本資料では、以下の定義を用いております。「米国メディア・テレコム業界のM&A」は、買収、合併、少数株主持ち分の統合、株主によるスピンオフ、売却、再編を指します。「買収先企業」は、米国もしくは外国の他企業(プライベート・エクイティ、ストラテジックバイヤーの両方を含む)に買収された米国企業を指します。本資料に掲載されているクロスボーダーのディールは、米国内の企業が買収した米国外に所在する被買収企業の公表済み買収案件のみに限定しています。取引金額は、既述のとおり取引された金額を指します。

公表された案件の買収企業と被買収企業が異なるセクターに属している場合、両方の業種のレポートに含めております。従って、異なる業種のレポートの取引金額や取引件数を合計する場合は、重複した案件を除外する必要があります。

翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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