―テキストマイニングによる分析―

有価証券報告書から読み解くガバナンスとリスクマネジメントの動向2025

有価証券報告書から読み解くガバナンスとリスクマネジメントの動向2025
  • 2025-09-05

PwCアドバイザリー合同会社は、PwC Japanグループの監査・保証業務、税務との協働体制のもと、有価証券報告書のテキストマイニングにより、国内上場企業のガバナンス、リスクマネジメントの取り組み・開示について取りまとめました。

本調査は、「コーポレート・ガバナンス」「リスクマネジメント」および「その他トレンドとなっているキーワード」の3つに焦点をあて、近年、企業および投資家の間でホットトピックスとなっており、その推移に顕著な変化がみられたキーワードを中心に分析・考察を行っています。エグゼクティブサマリーでは、上述の3領域で横断的に顕著な変化や動向が見られた「AI(人工知能)」と「関税」をピックアップします。

1.AI(人工知能)

近年、AIは驚異的な速さで普及が進んでいます。企業においても、AIによる業務効率化や競争力向上への期待から検討・導入が進み、現在では多くの国内企業がAIを活用、または導入の準備に着手しています。

有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「コーポレート・ガバナンスの概要」および「事業等のリスク」のいずれの記載区分においても、「AI」または「人工知能」を記載している企業の割合は2023年以降、増加傾向にあります。(図表A)。「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」においては、多くの企業では自社製品・サービスの機能としてAIを導入している旨を記載しており、その他、今後AIを活用して事業拡大を目指す旨や、AIにより技術革新が行われ、経営環境が変化する旨を記載している企業もみられました。一方で「事業等のリスク」においては、AIによる急速な技術革新や経営環境の変化に乗り遅れることによる製品・サービスの陳腐化をリスクとしてとらえている旨を記載している企業が多くあり、AIの利用による情報漏洩や偽情報の拡散、セキュリティの懸念について言及している企業も一定数みられました。

今後、AI活用による成果を組織全体の価値創出へと昇華させ、その過程や成果を投資家に訴求し、競争力を醸成しながら投資家からの期待に応えていくことが必要と考えられます。

図表A:「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「コーポレート・ガバナンスの概要」および「事業等のリスク」における「AI」または「人工知能」の記載割合

2.関税

第2次トランプ政権の発足以降、世界的な保護貿易の動きが強まるなか、日本企業にとって関税リスクは経営上看過できない重要課題となっています。

「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」および「事業等のリスク」において「関税」を記載している企業の割合は2024年から2025年にかけて急増しています(図表B)。具体的な記載内容は、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」においては、米国の関税政策による先行き経済の不透明感や経営環境の悪化、自社への影響を記載している企業が多くみられました。「事業等のリスク」においては、多くの企業が原材料価格高騰に伴うコスト上昇や販売価格への転嫁の必要性、自社の業績に影響を及ぼす旨や、金額的な影響が不透明である旨を記載していました。また、関税影響への対策としては、販売価格への価格転嫁や原価低減を挙げている企業が多くみられました。一方で、より長期的な視点で、調達網の構造改革や生産拠点の分散化・最適化に言及している企業もみられ、一定数の企業は将来の貿易戦争に備えた抜本的な対応策を検討していることを示していました。

事業等のリスクにおける業種別の記載割合は、自動車・輸送機、鉄鋼・非鉄、電機・精密において、40%以上の企業が記載しています(図表C)。これらの業種では、原材料価格の高騰や販売価格の上昇、将来的な需要の減退、サプライチェーンの混乱、およびそれらが業績や財政状態に大きな影響を与える可能性について記載していました。一方で、不動産、小売などの内需産業やグローバルサプライチェーンを保持しない業種においては、「関税」の記載割合は低い傾向にありました。

今後、各企業は将来の関税政策の動向変化を考慮したサプライチェーン・商流の検討や、関税コストの定量的把握など、関税リスクを戦略的にマネジメントするとともに、そのリスクと対応策を投資家に積極的に開示していくことが望まれます。

図表B:「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」および「事業等のリスク」における「関税」の記載割合

図表C:事業等のリスクにおける「関税」の記載割合

【2025年 業種別】

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ディレクター, PwCアドバイザリー合同会社

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