グループガバナンス強化(海外子会社を含む)~企業価値の向上を実現~

グループガバナンスとは

グループガバナンスとは、企業グループ全体の企業価値向上を維持・向上していくために必要な管理体制を意味します。

事業の推進に際しては、さまざまな法令遵守、リスク管理、不正防止などに適切に配慮した管理体制を構築し、運営することが必要です。また、企業は経営資源の最適な配分、M&Aや組織再編を通じたシナジーの創出、新しい技術を利用した成長戦略の策定と実行など、企業価値を維持・向上させるための取り組みを行いながら、ビジネスを推進しています。こうした活動をグループ全体の企業価値向上につなげる取り組みがグループガバナンスです。

グループガバナンス強化が求められる背景

グループガバナンスは「リスク管理」だけでなく、企業価値の維持・向上、持続可能な成長のための経営基盤として位置付けられるようになっています。

多くのグループ会社を持つ企業体では、その分多様なリスクにさらされており、グループ会社においてリスクが顕在化した場合、その影響は当該グループ会社だけでなく親会社にも及ぶ可能性があります。

そのため親会社は、海外を含むグループ全体にリスクマネジメントの範囲を拡大せざるを得ない状況です。このリスクマネジメントの拡張は、グループガバナンスが注目される重要な背景の一つと言えます。

また、グループ会社の設立目的もそれぞれ異なります。企業活動を活性化させる目的や、本社・本業の機能効率化のために設立されたものもあれば、新規事業推進のために新たに買収された会社もあります。これらの会社を一律に管理対象として扱うのではなく、期待度や経営の成熟度に応じて経営の裁量を変える、いわば自主的な成長を促すための仕掛けとしても、グループガバナンスは注目されています。

  • 各国における独自規制の増加やルールの複雑化(ESG関連規制、生成AIに関する規制、データ保護/プライバシー規制、各産業における業法の変更など)
  • 海外におけるM&Aや再編の活発化
  • 現地の法規制や文化に起因するリスクを親会社が把握しきれず、「見えないリスク」への対応が困難
  • サイバーリスクの高まり
  • 企業における不祥事(会計不正、品質偽装、サイバー攻撃による情報漏えい、独禁法違反、ハラスメントなど)が企業価値やレピュテーションに大きな影響を与える事例が増加
  • 投資家、取引先、監督当局などから、グループ全体の統制・透明性に対する期待が高まっている
  • 特に上場企業では、サステナビリティ、ESG、人的資本などの非財務情報の開示が求められ、グループ全体での整合性が不可欠
  • コーポレートガバナンス・コードでは、グループガバナンスの強化が明示的に求められるようになっており、特に親会社による子会社管理のあり方、子会社の独立性、取締役会の監督責任などが焦点となる
  • グループ会社の中には従来型の機能分社や海外拠点型もあれば、新規事業の推進役として新規に獲得した会社もあり、役割や立ち位置が多様化
  • M&Aの活性化により、親会社の経営管理のルールが通用せず、組織風土がまったく異なるグループ会社も増加

企業価値を向上させるポイント

事業展開のスピードが高まる中、有効かつ効率的にグループガバナンスを整備・運用していくためには単なる統制強化ではなく、グループ全体の価値最大化を意識した設計が重要となります。検討の際には、以下の5点が主なポイントとなります。

一律のルール適用ではなく、業種・規模・地域・リスクに応じたリスクマネジメントを設計します。

  • 事業内容・業務プロセスの特性
    グループ会社が担っている事業の種類(製造、販売、サービスなど)や業務プロセスの構造を把握し、企業価値に影響を与える重要なリスクを理解します。
    製造業では品質管理やサプライチェーンリスク、金融業では信用リスクや規制対応が重要リスクとなります。不祥事を起こしたグループ会社には再発防止を徹底するガバナンスの設計や、海外子会社には現地法規制や文化を踏まえた柔軟な対応が必要です。
  • 外部環境・規制の違い
    グループ会社が所在する国・地域の法規制、政治・経済状況、文化的背景などを考慮する必要があります。特に海外子会社では、現地特有のコンプライアンスリスクや規制対応がガバナンス設計に大きく影響します。
  • 組織体制・ガバナンス成熟度
    グループの戦略、グループ会社の経営体制、内部統制の整備状況、人材の専門性などを評価することで、どの程度のガバナンス支援が必要かを判断します。外部経営環境の変化や技術革新などに応じたグループ会社の集権化や分権化、新設子会社や中小規模の会社では親会社による支援や統制強化が重要になる場合もあります。

親会社とグループ会社の間で、意思決定権限や責任範囲を明確に定義します。グループ会社の権限を一律に制限するのではなく、各社のグループ経営上のミッションや経営の成熟度に応じた権限・責任範囲を設定することが肝要です。

  • 意思決定権限の整理と文書化
    親会社とグループ会社の間で、どのレベルの意思決定を誰が行うかを明確にすることが重要です。特に、投資判断、契約締結、人事、IT、コンプライアンスなどの分野での境界線を明確にすることで、グループ会社の自立を促し迅速な意思決定を行えるガバナンス構築が可能となります。
  • 責任範囲と説明責任(アカウンタビリティ)の明確化
    グループ会社の経営陣の責任範囲、親会社の関与度合いを明確にします。特に、重大リスクが発生した時の対応責任や報告義務について、曖昧さを残さないようにすることが重要です。
  • 実効性を担保する運用ルールとコミュニケーション
    権限と責任の設計だけでなく、それが現場で正しく運用されるためのルールや仕組みが必要です。定期的なコミュニケーション、教育・啓発活動を通じて、認識のずれや形骸化を防ぐことが重要です。

グループ会社の経営状況やリスク情報を親会社がタイムリーかつ正確に把握できる仕組みを構築します。

  • 報告内容・形式の標準化と一元管理
    グループ会社の報告情報(財務、リスク、コンプライアンスなど)を統一フォーマットで収集することで、比較・分析が容易になります。報告の頻度や提出方法も明確にし、グループ全体で一元管理体制を整備することが重要です。
  • 重要情報の可視化と分析基盤の整備
    ガバナンス上重要な指標(KPI/KRIなど)を定義し、ダッシュボードやBIツールを活用してリアルタイムで可視化します。トレンド分析や異常検知が可能な仕組みを導入することで、経営層の意思決定を容易にします。
  • 報告ラインとエスカレーションルールの明確化
    グループ会社から親会社への報告ルートや責任者、報告タイミングを明確に定義します。事象が発生した際のエスカレーションルール(誰が、いつ、どう報告するか)を整備し、迅速な対応を可能にします。

コンプライアンス、倫理、サステナビリティなどのグループ共通の価値観や行動規範を浸透させることが重要です。ガバナンスの基盤を構成する組織風土や文化は、各ルールの実効性を上げるために非常に重要な要素です。そのため、トレーニングやコミュニケーション施策を通じて、グループ会社の従業員にも理解・共感を促していくことが必要となります。

  • 共通方針・価値観の明文化と共有
    グループ全体で共有すべき経営理念、倫理規範、コンプライアンス方針、サステナビリティの考え方などを明文化します。子会社にも理解・納得してもらえるよう、多言語対応やローカル事例を交えた説明が重要です。
  • 浸透のための教育・コミュニケーション施策
    方針を単に伝えるだけでなく、継続的な教育(eラーニング、研修)や対話の場(タウンホール、ワークショップ)を設けます。経営層から現場まで、階層別・職種別に適したアプローチを設計することで、実効性が高まります。
  • 浸透度のモニタリングと改善サイクル
    方針や文化がグループ会社にどれだけ浸透しているかを、定期的にサーベイやインタビューで確認します。結果を元に、浸透施策の見直しや重点支援先の特定を行い、PDCAを回すことが重要です。

ガバナンス体制は一度作って終わりではなく、定期的なモニタリングと改善が重要です。内部監査、セルフアセスメント、第三者評価などを活用し、PDCAを回します。

  • モニタリング体制の設計と多層的なチェック機能
    グループ会社のリスク状況や統制の有効性を把握するために、内部監査、セルフアセスメント、第三者レビューなどを組み合わせた多層的なモニタリング体制を構築することが重要です。モニタリングの頻度、対象範囲、評価基準を明確にし、形式的でなく実効性のある運用を目指します。
  • モニタリング結果の分析と可視化
    収集した情報を単に蓄積するだけでなく、傾向分析やリスクの早期検知に活用することが重要です。ダッシュボードやレポートを通じて、経営層が迅速に状況を把握できるような可視化を行います。
  • 改善アクションとPDCAサイクルの定着
    モニタリング結果に基づき、統制の見直し、教育施策の強化、ルール改訂などの改善アクションを具体的に実施します。改善の進捗や効果を継続的に確認し、PDCAサイクルをグループ全体で回す仕組みを定着させることが重要です。

PwCのサービスと強み:
サステナブルな企業価値向上の実現を支援

PwC Japan有限責任監査法人は、多様な企業のグループガバナンスの構築や見直し支援に関与した豊富な経験を有しており、クロスボーダー対応に加え、広範な産業に関係するさまざまな課題に対して適切なアプローチを提案し、実装から自立までを支援することが可能です。

1.グローバルな知見とローカル対応力

PwCは世界の主要国・地域に拠点を持ち、各国の法規制や文化に精通しています。これにより、グローバル企業のグループガバナンス構築において、現地事情を踏まえた実践的な支援が可能です。

2.ガバナンス体制の設計から実行までの一貫支援

単なるアドバイスにとどまらず、ガバナンス体制の設計、ルール整備、モニタリング体制の構築、実行支援までを一貫して提供できるため、実効性の高いガバナンスが実現できます。

サービス内容例

  • グループ会社の多様性に応じたグループガバナンス・ポリシーの策定
  • M&A後のPMI(Post Merger Integration)における、被買収会社に対するリスクマネジメントの導入、重要なリスクに対する内部統制の構築・運用支援
  • AIガバナンスやデータガバナンスの構築・強化支援
  • 組織再編に伴うガバナンスの見直しおよび税務面からの資本構成見直し支援
  • 不祥事発生(会計不正、サイバー犯罪、品質不正、贈収賄など)後の再発防止策(ガバナンス/機関設計の見直しや強化、リスクマネジメントと対応する内部統制の見直し、カルチャー変革のための施策など)の策定支援と導入支援

3.リスク管理・コンプライアンス・ITとの統合的アプローチ

私たちはリスク管理、内部統制、コンプライアンス、ITなど幅広い領域の専門家を多数擁しており、これらを統合したガバナンス支援が可能です。グループ全体のリスクを俯瞰した上で、適切な対応策を講じます。

サービス内容例

  • サイバーリスクへの対応
  • マネーロンダリング等への対応
  • 重大リスクの絞り込み、リスクのシナリオ分析、ESG対応による包括的なガバナンス対応など

4.デジタルツール・データ活用による効率化

データ分析を活用した効率的なガバナンス体制の構築にも強みがあります。企業の規模や複雑性、求めるガバナンスの成熟度に応じて、ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス(GRC)ツールや生成AIなどのデジタルツールをガバナンスの構築や運用に取り入れ、効果的に支援を行います。

サービス内容

  • グループ会社のリスク状況をダッシュボードで可視化するなど、経営層の意思決定を支援
  • 業務品質を維持した上でグループ会社の横串管理を実現し、グループの経理機能やリスクマネジメントやコンプライアンス機能等を推進するためのマネージドサービスの整備と運用を支援
  • 内部監査やJ-SOXの業務品質を維持するとともに、業務効率化に向けたGRCツールの導入や生成AIを利用した業務改革を支援

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主要メンバー

高木 和人

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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真木 靖人

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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田中 洋範

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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竹内 秀輝

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

辻田 弘志

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

Email

笠井 涼

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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