複雑かつ多様な社会課題の解決に向けたNPO法人等との共創のあり方

本レポートの要点

さまざまな社会課題の解決に向けて、企業も相応の責任を果たすべきという考え方は、「当たり前」のものとして社会に浸透しつつあります。もっとも、一言に社会課題といっても、その背景にある問題は多様かつ複雑です。特に、子どもの貧困や社会的孤立、家庭内暴力、難民の受け入れといった複雑性・個別性が高い問題は、一般的に、民間の関与は難しく、官による制度的な支援によって解決を図るべき領域と受け止められがちです。

しかし、官公庁や自治体の資源・労力は限られるため、真の問題解決に向けては「官まかせ」ではなく、より多くのステークホルダーを巻き込んだコレクティブな共創が必要になると考えられます。

そのような中、複雑かつ個別性の高い問題の解決に向けて活動している民間の組織・団体の代表格がNPO法人です。

PwCコンサルティングはこれまで、プロボノ活動などを通じて、多くのNPO法人を支援してきました。そして、NPO法人の活動に携わる中で、「厄介な問題」に向き合う「現場」には、外部からは見えづらい、さまざまな課題があることを知りました。

そのような「現場の課題」は、コレクティブな共創を進めるうえで、官公庁や自治体はもちろんのこと、「厄介な問題」の解決をサポートしたい民間のステークホルダーにも広く認識される必要があると考えています。

そこで本稿では、NPO法人の概要とその活動における課題を整理したうえで、PwCコンサルティングがプロボノ活動等を通じて得た知見・ノウハウを紹介し、社会課題の解決に向けたステークホルダー間の共創のあり方について、具体的に提案していきます。

第1章 はじめに ~問題の分類

社会課題の背景にある問題を「解決策に対する社会的合意(コンセンサス)の度合い」と「解決策に関するナレッジの充足性」の2軸で4つのタイプに分類し、双方の観点ともに不足している「厄介な問題」への対応が重要であることを指摘します。

図表1 社会的なコンセンサスとナレッジによる、問題の分類

第2章 NPO法人の概要

「厄介な問題」の解決に向けた支援の「現場」で活動を続けているNPO法人の制度動向や運営状況について、公表資料等を基に整理します。

第3章 さまざまな支援の「現場」における課題

PwC コンサルティングにおけるNPO法人との連携強化に向けた活動である「戦略的プロボノ人材育成プログラム」(Strategic Probono Development Program:略称SPDP)を紹介します。

この活動は、これまで、22の団体における、43のプロジェクトに対する支援を行った実績を有します。そのうえで、当該活動等を通じて私たちが把握した支援の「現場」における課題を、テーマ別(ヒト・モノ・カネ・その他)に整理します。

図表2 支援の現場における主な課題とその内容

第4章 社会課題の解決に向けた共創のあり方

私たちは前述のプロボノ活動などを通じて、第3章で示したさまざまな課題の解決に向けて取り組んできました。その経験を踏まえて、NPO法人とより効果的に連携し、現場の課題を解決していくための2つの階層におけるアプローチを考えます。

第一層は、NPO法人を支援する側が、自らのケイパビリティを活かし、個別に課題の解決を図るものです。第二層は、マルチステークホルダーが協働してエコシステムを形成し、包括的に「現場」の課題の解決を図るものです。

私たちがこれまで取り組んできた第一層における活動内容について簡単に紹介したうえで、今後マルチステークホルダーの協働により創り上げていきたい第二層の枠組みについて提言します。そして、ひとつの案として「支援をつなげる循環プラットフォーム」の概要を紹介します。

図表3 NPO法人との連携にける階層的アプローチ
図表4 支援をつなげる循環プラットフォームのイメージ(子どもの貧困をテーマとしたケース)

第5章 おわりに ~さらなるコレクティブ・インパクトの創出に向けて

PwCのPurpose(存在意義)、および「ソーシャル・インパクト・イニシアチブ(Social Impact Initiative 、SII)」の「想い」に基づき、重要な社会課題を解決するために自らもリスクをとる主体の一員となり、「厄介な問題」が起きづらい社会システムへの変革に向けて、業界やセクターを越えた共創をリードしていくことを宣言します。

各章の詳しい解説は、本レポートをご参照ください。登録不要・無料です。

主要メンバー

宮城 隆之

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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籾山 幸子

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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