脱炭素、問われる透明性 ネットゼロに10提言 解説COP27

2022-12-07

エジプトのシャルムエルシェイクで開かれた第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)が2022年11月20日に閉幕しました。温室効果ガスの排出削減において進展が乏しかったとの指摘が出ている一方、国連の専門家グループがネットゼロ(温室効果ガス排出削減実質ゼロ)についてまとめた新たな基準案が話題を呼んでいます。脱炭素に透明性と客観性を求める5原則と10の提言は、日本の企業や自治体に今後大きな影響を与える可能性があります。

様子見せず、規制導入を見越した検証を

今回示された原則と提言が今後どの程度の速度で浸透するかは未知数です。しかし、昨今の環境機運の高まりと開示情報拡大の流れを踏まえると、いつ取引先や機関投資家がこの新しい基準を満たすことを要求するようになってもおかしくありません。国が規制の導入を検討することを見越して、基準案を意識した準備を進めることが推奨されます。

まずは自社の掲げている取り組みが、本当に温室効果ガスの排出削減につながっているのかどうか、それを対外的に合理的な説明ができるかどうかを検証する必要があります。もし排出削減につながっていないものが見つかった場合は、速やかな見直しや新たな取り組みを検討することが重要です。

また、今回の基準案では、ネットゼロを掲げながら化石燃料事業に投資し続けることなどをグリーンウオッシュであると位置付けました。こうした行動が自社の事業展開に含まれていないかという観点の見直しも必要です。一見して脱炭素につながると認識されている取り組みであっても、専門的な見地からみると正しくない可能性があります。一連のレビューには、幅広い視点や専門的な情報を取り込まなければなりません。

こうした対応を進めていれば、実際に国が規制を導入しても、迅速に対応することができるでしょう。

10の提言には含まれていませんが、報告書では「行動への道筋」として、中小零細企業が脱炭素に取り組むことの重要性を指摘しており、そのためには大企業が支援すべきだとしています。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)も、温室効果ガス排出についてサプライチェーン(供給網)を含む「スコープ3」を対象と決めており、自社にとどまらない広い視点の取り組みが欠かせなくなりそうです。

これらを検討する中で、計画や目標と現状のビジネスモデルや組織体制の間に乖離が見つかるかもしれません。その際には、計画の妥当性を再考しつつも組織やビジネスモデルの変革が必要となります。環境関連の動きは勢いがつくと一気に加速するため、ともすれば後手に回りかねません。様子見をせず、積極的に動き出すことが先々の有利なポジションを獲得することにつながるでしょう。

執筆者

磯貝 友紀

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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本多 昇

ディレクター, PwCサステナビリティ合同会社

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