
ドローンの運航における3次元空間情報の必要性
本稿では、ドローンの運航において3次元空間情報を共有することの価値や、そのためにはどのような取り組みが必要かについて述べていきます。3次元空間情報インフラによって、3次元空間情報の提供者が容易に参入できるようになれば、結果としてドローンサービサーの情報取得コストを削減する効果が期待できます。
2021-08-19
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、ソーシャルディスタンスを保った生活が求められるようになってから早一年以上。あらゆる商業施設の入り口には消毒液や非接触の体温測定器が置かれるのが当たり前になり、リモートワークや食事宅配サービスなど、新しい生活様式・業務形態への転換は今後も加速していくでしょう。
そのような環境下において、人と人の接触を減らし、遠隔でデータ収集や輸送といった作業を遂行できるドローンへの期待が高まっています。
ドローンはその導入自体が目的と捉えられがちですが、実際は利活用によって作業の効率化を図るための一つの手段です。ドローンを単なる飛行ラジコンとして捉えるのではなく、データを活用してアルゴリズムを組み、場面に即した運用によって従来を大幅に上回るパフォーマンスを発揮する機器として役立てることこそが、ビジネスにおける価値創出につながります。
ドローンの利活用を推進する際に検討すべき課題は多数ありますが、ドローン導入を目的と捉えてしまった場合、導入を急ぐあまり、本来行うべき準備を飛ばしてベンダーとパートナーシップを結ぶという例が散見されます。
本稿では、企業がドローンの利活用を推進していくにあたり直面する課題の1つである「ベンダー選定」の要諦について解説していきます。
ベンダー選定の要諦に触れる前に、そもそもベンダー選定を行うための準備が整っているかを確認しましょう。次に挙げる3つのステップを踏み、基本的なベンダー選定の型を定めた状態で、ベンダー選定の要諦をご参照ください。
国土交通省の管轄する航空法と総務省の管轄する電波法は、ドローンの活用を考える上で極めて重要度の高い法規です。とりわけ航空法については、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が策定した「空の産業革命に向けたロードマップ2020」で示されるように、2022年の制度開始に向けて急速に制度作りが進行しているため、官民協議会の議論についてこまめに確認しキャッチアップしておくとよいでしょう。
ドローン利用分野は、先述のロードマップでは「物流」「警備業」「医療」「災害対応」「インフラ維持管理」「測量」「農林水産業」の7つに分類されています。これらに発想を限定する必要はありませんが、すでに先行しているこれらの分野については把握しておき、技術的に流用できる部分を模索するのが効率的でしょう。基本的には物を運ぶのか、データを運ぶのかといった使い方に大別されますが、現在のところ物理的制約の軽さから、データを運ぶ利用法の普及が先んじています。また、「目視内/外」「操縦/自律」「無人/有人地帯での飛行」といった軸により、難易度に合わせ社会実装レベルが4段階に区切られています。自社が実現したい利用法がどの程度の難易度に相当するかは事前に把握しておくべきでしょう。
ドローン運用には、基本的に次の要素が必要です。利用する場面によって追加されるものや削除されるものがあるため都度詳細を検討する必要はありますが、大まかな全体像を把握できていれば先の検討に進むことができるでしょう。
実用化ラインに到達している、もしくはめどが立っているサービスの利用者としてのドローン利活用を望むのか、これから拡大していく市場でドローン関連製品の提供者をして参入するのかを明確にする必要があります。
先の項目で提供者となることを目的とした場合は、自社が業界内でどのような役割を果たすのかについて検討する必要があります。「ドローン運用を構成する要素の把握」で挙げた要素のうち、何を提供するのか、利用分野は何か、顧客セグメントはどこかなどです。必ずしも現時点のケイパビリティに縛られる必要はありませんが、自社の強みを踏まえて検討を行うことで強固なビジネスモデルを構築できるでしょう。
最初期は外部委託の領域が大きくなるかと思いますが、その後どこまで範囲を広げる可能性があるかについて検討を行います。この時点では詳細まで決めきる必要はありませんが、できる限りイメージをしておいた方が後々スムーズに進行します。
以上のステップで定めた目的に沿って、具体的な要件を作成します。「ドローン運用を構成する要素の把握」で述べた要素それぞれについて、定量的・定性的な判断基準を設け、ベンダー選定時に活用します。ただし、ドローンのような新技術領域の場合、開発段階から協力して行うことも想定されるため、必ずしもここで定めた要件だけで判断できるとは限りません。
ベンダー選定の基本的な進め方としては、ベンダーをリストアップした上で、前項で定めた要件をもとに絞り込みを行っていくことになります。下記では、経験がないと見落としてしまいがちないくつかの要諦を列挙します。
ドローン業界は技術の進歩が速く、数年のうちに従来をはるかに上回る性能を持つ製品が多数生まれます。ベンダー選定にあたっては、ベンダー自身の技術開発に対する計画を精査する必要があるでしょう。ある時点で技術開発が停止し、現在はその販売だけを行っているというような企業は、将来的に競争力を失うおそれがあります。
ドローンの利活用において、避けては通れないのが安全管理です。現時点では、どこでも飛行してよいとされるレベルの安全性基準は確立されていません。明文化されていないルールが多いため、ベンダー側も手探りで安全性確保に努めている状態です。そのような環境下にあっても、自社の考えをもって安全性を高めるために冗長策を講じているベンダーとの関係を深めていくことが望ましいと考えられます。一度の事故が法規の厳格化や社会受容性の低下につながり、ドローン産業全体の進歩を遅らせかねないことに注意しましょう。
主に機体などハードウェア周りの話となりますが、一部の大手を除き、多くのベンダーはハイレベルな生産設備を有していません。必要な時に必要なだけの供給が可能な能力があるか、また現時点ではない場合でも、それに対する手立てがあるかについては、ベンダー選定の際に気にしておくべきでしょう。
ドローンを飛ばすというのは意外にも面倒なものです。運用に必要な人員や機材、許可承認を揃えるだけでかなりの工数が発生します。とはいえ、サービスや技術の開発を進める上では、短期サイクルでのトライアル・アンド・エラーが可能な環境の方が望ましいのは言うまでもありません。ベンダーにフライトを依存する場合は、こちらの要望が増えた際に対応できる充分な余力を有しているかを確認すべきでしょう。
ベンダー側が提供サービスをブラックボックス化しているため、どのような要素が含まれているのかが分からず切り分けができないというのは往々にしてある話です。「ドローン運用を構成する要素の把握」で述べた要素の全部もしくは一部について、将来的に自社での内製化を希望している場合は、その可能性についてベンダー選定の段階であらかじめ考慮に入れる必要があるでしょう。
ドローンの利活用において法規が大きな要素となるのは先に述べたとおりですが、国によってドローン関連の法規や今後の改正に対するスタンスは異なります。特に海外のベンダーとパートナーシップを組むことを考えている場合には、日本の法規に合わせてカスタマイズ対応が可能か事前にヒアリングしておきましょう。
投資を集めようとするあまり企業活動の実態を誇張するような企業も存在することを考慮し、公表されているとおりの企業活動の実態があるかを慎重に確認する必要があります。
ドローンの国内市場規模は年平均成長率20%超の急速な成長を見せており、2025年度には6,468億円になると推計されています※1。また、2020年12月18日、国土交通大臣が会見で述べた※2ように、ドローンの飛行や物件投下の要件の緩和、飛行申請の合理化が今年度中に実施されることが示唆されています。これらに示されるように、全体としてドローンの社会実装は前進しています。将来的には現在のスマートフォンのように人々の生活に溶け込み、インフラの一部として重宝されるようになる可能性を秘めています。
今回挙げた要諦を完璧に満たすベンダーが見つかるとは限りません。しかしながら、どこを重視するのか、どこまで許容できるのか、自社の方針を固めた上で、その時々の最善の選択肢を見極め、アクセルを踏み込み推進していくことが、成功率の向上につながります。
岡澤 佳祐
アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
本稿では、ドローンの運航において3次元空間情報を共有することの価値や、そのためにはどのような取り組みが必要かについて述べていきます。3次元空間情報インフラによって、3次元空間情報の提供者が容易に参入できるようになれば、結果としてドローンサービサーの情報取得コストを削減する効果が期待できます。
3次元空間情報基盤による地理空間情報の連携機会が拡大することで、様々な処理の自動化・作業品質を向上させることが期待されています。
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