ドローンベンダー選定の要諦

2021-08-19

ベンダー選定の要諦

ベンダー選定の基本的な進め方としては、ベンダーをリストアップした上で、前項で定めた要件をもとに絞り込みを行っていくことになります。下記では、経験がないと見落としてしまいがちないくつかの要諦を列挙します。

①技術開発に継続的な投資が行えているか

ドローン業界は技術の進歩が速く、数年のうちに従来をはるかに上回る性能を持つ製品が多数生まれます。ベンダー選定にあたっては、ベンダー自身の技術開発に対する計画を精査する必要があるでしょう。ある時点で技術開発が停止し、現在はその販売だけを行っているというような企業は、将来的に競争力を失うおそれがあります。

②安全管理を入念に行っているか

ドローンの利活用において、避けては通れないのが安全管理です。現時点では、どこでも飛行してよいとされるレベルの安全性基準は確立されていません。明文化されていないルールが多いため、ベンダー側も手探りで安全性確保に努めている状態です。そのような環境下にあっても、自社の考えをもって安全性を高めるために冗長策を講じているベンダーとの関係を深めていくことが望ましいと考えられます。一度の事故が法規の厳格化や社会受容性の低下につながり、ドローン産業全体の進歩を遅らせかねないことに注意しましょう。

③安定した供給体制が確保されているか

主に機体などハードウェア周りの話となりますが、一部の大手を除き、多くのベンダーはハイレベルな生産設備を有していません。必要な時に必要なだけの供給が可能な能力があるか、また現時点ではない場合でも、それに対する手立てがあるかについては、ベンダー選定の際に気にしておくべきでしょう。

④フライトの要望にすぐ対応可能か

ドローンを飛ばすというのは意外にも面倒なものです。運用に必要な人員や機材、許可承認を揃えるだけでかなりの工数が発生します。とはいえ、サービスや技術の開発を進める上では、短期サイクルでのトライアル・アンド・エラーが可能な環境の方が望ましいのは言うまでもありません。ベンダーにフライトを依存する場合は、こちらの要望が増えた際に対応できる充分な余力を有しているかを確認すべきでしょう。

⑤内製化の希望にどこまで対応してくれるか

ベンダー側が提供サービスをブラックボックス化しているため、どのような要素が含まれているのかが分からず切り分けができないというのは往々にしてある話です。「ドローン運用を構成する要素の把握」で述べた要素の全部もしくは一部について、将来的に自社での内製化を希望している場合は、その可能性についてベンダー選定の段階であらかじめ考慮に入れる必要があるでしょう。

⑥日本の法規に適合可能か

ドローンの利活用において法規が大きな要素となるのは先に述べたとおりですが、国によってドローン関連の法規や今後の改正に対するスタンスは異なります。特に海外のベンダーとパートナーシップを組むことを考えている場合には、日本の法規に合わせてカスタマイズ対応が可能か事前にヒアリングしておきましょう。

⑦企業活動の実態があるか

投資を集めようとするあまり企業活動の実態を誇張するような企業も存在することを考慮し、公表されているとおりの企業活動の実態があるかを慎重に確認する必要があります。

おわりに

ドローンの国内市場規模は年平均成長率20%超の急速な成長を見せており、2025年度には6,468億円になると推計されています※1。また、2020年12月18日、国土交通大臣が会見で述べた※2ように、ドローンの飛行や物件投下の要件の緩和、飛行申請の合理化が今年度中に実施されることが示唆されています。これらに示されるように、全体としてドローンの社会実装は前進しています。将来的には現在のスマートフォンのように人々の生活に溶け込み、インフラの一部として重宝されるようになる可能性を秘めています。

今回挙げた要諦を完璧に満たすベンダーが見つかるとは限りません。しかしながら、どこを重視するのか、どこまで許容できるのか、自社の方針を固めた上で、その時々の最善の選択肢を見極め、アクセルを踏み込み推進していくことが、成功率の向上につながります。

参考リンク

執筆者

岡澤 佳祐

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

※法人名、役職などは掲載当時のものです。


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