農業改革の方向性とこれからの農業法人

2015-06-17

現安倍内閣は、岩盤規制改革のひとつとして農業改革を主要政策課題に掲げており、今、農業が注目を浴びています。そこで今回のコラムは、日本農業の現状と問題点を俯瞰し、安倍内閣が目指す改革の方向性とともに、これからの農業を支える農業法人の概要と展望を取り上げます。

日本農業の現状と問題点

わが国の農業を巡る環境は大変厳しい状況にあります。最も重要な生産要素である農地の面積は全国で452万ha(関東1都6県に新潟県を加えた面積とほぼ同じ)ですが、そのうち耕作放棄地が40万ha(滋賀県、埼玉県とほぼ同じ)もあります。これは、農業者が高齢化(65歳以上が64%、平均年齢66.7歳)し、後継者が不足していることが背景にあります。

また、農業産出額8.5兆円(2013年)は、1984年の11.7兆円をピークに長期低下傾向にあり、特にコメの産出額の低下(3.9兆円→2.0兆円)が大きく影響しています。これは、日本人の食の志向の変化とともに、稲作の価格維持および生産調整(減反)を中心とした戦後の農政のあり方が関わっています。

さらに、戦前の小作農主体から転換した自作農を前提とする戦後の農地制度が、小規模兼業農家の増加の原因となり、その結果として農業生産性ならびに農業所得の低下を招いていることも大きな問題点として挙げられます。

農業改革の方向性

平成26年6月13日公表の規制改革会議第2次答申において、日本農業の現状に対する強い危機感の下、(1)農地の集積・集約による大規模かつ生産性の高い農業の実現を目指した「農地中間管理機構の創設」、(2)遊休農地対策を含めた農地利用の最適化などを目指した「農業委員会等の見直し」および(3)農業技術等の円滑な継承とさまざまな担い手の融合による農業経営・技術の革新等を目指した「農業生産法人制度の見直し」などの施策が打ち出されています。

特に、(3)農業生産法人制度の見直しについては、農業生産法人の諸要件のうち役員要件および構成員要件の緩和などにより、家族営農などの法人化または企業の農業参入の一層の促進を図ることとしています。

農業法人の概要と展望

農業法人は、法人形態で農業を営む法人の総称であり、株式会社などの会社法人と農協法上の農事組合法人に大別されます。また、これらのうち、農地法第2条第3項の要件を充たす法人を「農業生産法人」といい、農地を取得または賃借することが可能となります。

かつて、株式会社などは、農地法の規制により農地を取得または賃借できませんでしたが、平成15年にリース方式による農地利用が解禁され、さらに平成21年の農地法改正では農地の権利取得が認められました。

平成26年1月現在、農業生産法人の数は14,333法人ですが、日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)では、企業の農業参入のさらなる自由化や農業の担い手の多様化などにより、法人経営体を今後10年間で5万法人とすることを目指しています。その結果、株式会社などの農業参入のほか、家族営農または集落営農の法人化の動きが今後活発になることが予想されます。

PwCあらた監査法人は、こうした動向を踏まえ、地域農業の発展を担う農業法人の経営者の皆さまを会計と経営の専門家の立場から支援し、日本農業の再興と発展に寄与したいと考えています。具体的には、従来のプロダクトアウト型からマーケットイン型へ転換したビジネスとしての農業を志向し、法人経営を高度化、効率化することで「儲かる農業」を目指す、意欲ある経営者などをサポートいたします。そのために、事業計画策定、原価管理強化、事業承継、人材・労務管理および6次産業化支援など、さまざまなサービスを提供して参ります。
 

農業法人の体系図

(注)文中のデータは、農林水産省ホームページ「農林水産基本データ集」より引用しています。

PwCあらた監査法人
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