人事・組織とケイパビリティ

危機を乗り越えて生まれ変わる職場と働き方の未来像

なぜ2021年がリーダーにとって、従業員や社会と今までにない新しい関係性を構築するという意味において重要な1年となるのか

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、直ちに世界のあらゆるところでオフィス、工場、学校、店舗、レストランが閉鎖され、何億人もの人々が急ごしらえのリモートワーク環境に追いやられました。しかし、それがどういった結果をもたらすのか、当時は誰も分かっていませんでした。

今、私たちは当時より多くのことを理解しており、なおかつ非常に前向きでいられるようになりました。多くの企業がデジタル化への緊急対応を強いられたとはいえ、何百万人もの人々にとって、在宅勤務は実現可能なものとして受け入れられ、生産性が向上しました。企業は、この間に収集した従業員のデータを分析し、経験したことを新たな施策として実行に移すため、2021年の1年をかけて細かな調整を行うことになるでしょう。しかし、マイナス面もありました。COVID-19による連鎖的な経済悪化は、女性やマイノリティ、熟練度の低い労働者に特に深刻な打撃を与えました(英語)。雇用の70%がインフォーマルセクターであるアフリカなどの新興経済国は言うまでもありません(英語)。そして、ロックダウンによって1億5000万人以上の人々が貧困に追いやられると予想されています(英語)

COVID-19による連鎖的な経済悪化は、女性やマイノリティ、熟練度の低い労働者に特に深刻な打撃を与えました。

COVID-19の感染が拡大した2020年2月以降、以下の問題を報告した米国の成人の割合

請求書の支払い 家賃もしくは住宅ローンの支払い
性別
女性
27%
17%
男性
22%
15%
人種
黒人
43%
28%
ヒスパニック
37%
26%
アジア系
23%
15%
白人
18%
11%
教育水準
高卒以下
34%
23%
短大・専門学校卒
27%
18%
大卒以上
12%
7%

今回の危機は、社会システムを修復する上でビジネスが果たす重要な役割を際立たせました。そして、CEOにとってのチャレンジは、これまでになく明確になっています。社会のニーズは地理、セクター、スキルセット、リスク受容度、リモートワークの実現可能性によって異なりますが、働く環境はすべての人にとってより良いものである必要があります。健康、職場の安全、およびワクチンの準備が引き続き最優先課題ではあるものの、これとは別に、世界のリーダーが2021年に取り組むべき、相互に関連し合う2つの優先課題があります。

1つ目は、パンデミックによって生み出された(または悪化した)新たな現実に対処するために仕事をする場所を再定義すること。そして2つ目は、この取り組みをより公平で、多様性を尊重する包摂的な労働環境をつくる機会として利用することです。

仕事の再設計

私たちが働き方、そして働く環境について再考(rethink)(英語)するにあたって、まだ初期段階にあるということは言うまでもありません。PwCは最近、国際企業800社が参加するウェビナーを主催しました。ほとんどの企業にとっての最優先事項は、リモートおよび対面の明確な役割分担を備えたハイブリッドな働き方を推進することでした。こうした柔軟な働き方のモデルは、セクターを問わず、営業、財務、テクノロジーを含むさまざまな職種や役割の永続的な在り方となり得ます。これは大幅に再設定(reconfiguration)する必要がある課題であるため、企業によってその進捗度は大きなばらつきがあります。さらに難しいのは、サービス、運輸、小売などの業界が直面している課題です。この業界では、不可逆的なビジネスモデルの変更により、深く根付いた顧客の行動や従業員の働き方を大きく変える必要があります。

今後は地理的な要素が以前より問題とならなくなるでしょう。これだけ大規模に在宅勤務が導入されたことで、移動コストはもちろん、より程度は小さいものの不動産コストの削減可能性も見えてきました。また、一部の人が望んでいたほどではなかったものの、環境問題の点からも在宅勤務は有益でした。働く場所に依存しない人材プールへのアクセスも大幅に拡大しました。米国ハワイ州政府が、リモートワークのためにハワイへ移住してくる人々に航空運賃を補助するという制度(英語)を打ち出したように、さらに多くのイニシアチブが出てくる可能性があります。これはパンデミック以前から、小規模ながらも既にあった現象(英語)で、非中核都市がデジタルを活用するノマドワーカーを受け入れようと動いていました。今や、その動きを各国が追随してもおかしくありません。

より良い仕事をつくる

COVID-19の影響は、私たちの視野を狭めるのではなく、広げるものであるべきです。私たちは、発展途上国と先進国の両方で、社会全体が実にあっけなく安定から危機に陥る様子を目の当たりにしてきました。ワクチンが広く接種可能になるまでは、この状況はさらに悪化する可能性があります。焦点となるべきは最も大きな打撃を受けた人々の回復であり、これが実現すれば、仕事の在り方に関する根深い問題を一気に解決することができるかもしれません。

雇用市場は何年にもわたって(英語)需要と供給の問題(英語)を抱えてきました。今日需要のある仕事に就くためのスキルを備えていない現実に直面する人はあまりに多く、第4次産業革命の中心となる仕事に求められるようなスキルを備えた人材は極めて少ない状況です。多くの先進国においては、COVID-19が拡大する前から低中所得の仕事の空洞化が進行しており、コロナ禍はその状況を悪化させただけです。

人材のスキルをバリューチェーンにうまく適合させ、職場の生産性を向上させるより良い仕事を生み出し、それらの仕事を遂行できるように労働者をスキルアップさせる。解決策は明確ですが、成功させるのは困難です。市民と投資家は「良い」ビジネスに価値を置き始めていることは確かであり、目的主導型のビジネスモデルが勢いを増しています。それでも、収支のつじつまを合わせることは容易ではなく、企業は良い仕事を生み出すためにも事業を継続できなければなりません。

搾取的であり、不安定で、士気を下げるような「悪い仕事」をなくすことが私たちの目標であるなら、今こそビジネスリーダーは、従来型の枠を超えて、人材、仕事の質、働きがいを重視する共通的な価値基準を遵守し、その結果を公に報告する責任を負うべきです。実際、これは、PwCが中心となって取りまとめた2020年9月の世界経済フォーラムの論文(「ステークホルダー資本主義の進捗を測定するために―世界のトップ企業がユニバーサルなESG報告に向け行動<英語>」)において、重要な論点でした。そして、模範的な企業は、特定の非財務情報の開示をどん欲に進めているのです。

重要な瞬間

COVID-19は、ハイブリッドな働き方の採用、ウェルビーイングと良い働き方の両立など、従業員を重要視するというコミットメントを一部のCEOから引き出しました。たとえば、マイクロソフトのSatya Nadella氏は、従業員がオフィスで過ごす時間を50%未満に短縮することを検討し(英語)、従業員の健康とお互いの共感は、大切にすべき企業文化の根幹であると公言しています。米国の大手銀行で初めての女性CEOに就任したシティグループのJane Fraser氏は、働く親としての役割など、女性が直面する課題について率直に語っています(英語)

人々はより良い未来を望み、組織もまた、より持続可能な事業運営モデルを模索しています。リーダーたちは極めて重要な時を迎えています。CEOと経営幹部は、危機対応のフェーズから抜け出し、この1年間の経験から得た知識を活用して組織を確実にリセットする方向へと軸足を移す必要があります。また、パンデミック以前からその傾向が見られたとおり、より共感力を伴ったステークホルダー資本主義へと世界が移行を続けるにつれて、必ず変革が訪れるということをリーダーは予期しておかなければなりません。

ビジネスラウンドテーブル2019(英語)では、こういった意志が正式に表明されました。しかし、リーダーたちが人と社会の進歩にどれだけ大きな価値を見出しているかを示す小さなアクションを積み重ねることで初めて、事態が大きく動き出し、重大局面を迎えるでしょう。だからこそ、2021年は、偉大なリーダーたちが美辞麗句ではなく、新たな断固としたコミットメントとして人への投資と多様性を尊重する包摂的な職場を実現する、これまでにない1年になると確信しています。

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Collage image of authors from the Take on Tomorrow series

著者紹介

本シリーズでは、PwCグローバルネットワークのさまざまな分野のプロフェッショナルが最新の考察を展開しています。著者のインサイトはESGトランスフォーメーションから、仕事の未来、AIアプリケーションやデジタル通貨に至るまで多岐にわたります。そして、それらはさまざまな業界の企業が将来を見据えて大きな課題に取り組むのを何十年にもわたって支援してきた経験によって導き出されたものです。

著者略歴はこちらをご覧ください
Hello Tomorrow illustration - person looking through a keyhole

Hello, tomorrow. 明日を見通す。未来をつくる。

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※本コンテンツは、PwCが2021年2月17日に発表した「A remarkable thing could happen as we return to work」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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