Our alumni stories:新たな道を切り拓くPwC卒業生に迫る ~Vol.8 幸地正樹氏編~

インパクトというツールで、世界の在り方の視点を変える

PwCではできなかったこと、PwCであればできたであろうこと

大橋:
公共事業部に在籍中にも、社会課題に関する事業に関わっていたのですか。

幸地:
全く関わっていません。社会課題に関心を持ったきっかけはSIBのパイオニアのトビー・エクルズ氏の「投資で社会変革を」というプレゼンテーション動画を見たことです。

当時、官民連携の取り組みを主に支援していたのですが、とてもモヤモヤしていました。企業は契約までは頑張りますが、その後はコストを削減することや、とにかく進めていくことだけに目が向きがちになる。一方、行政は社会のためという目的を掲げるものの、現場では目の前のことしか考えられなくなるという実情を目の当たりにしていたからです。

そんな矛盾を抱えていた時期に、行政と企業が社会課題解決のために目線を合わせて取り組む契約の仕組としてのSIBを知り、日本でも普及させていくべきだと燃え上がりました。自ら社内で勉強会を開催したり、社外で個人として勝手にセミナーを開催したり、資金計画や事業計画を作って新規事業として上司に掛け合ったこともあります。ただ当時は、行政の中にさえ関心を持っている人がほとんどいない時期。市場もなく、説得することは叶いませんでした。

時を同じくして、2014年頃から日本財団がPFS/SIBやインパクト投資を日本でもやっていくべきだと動き始め、私はプロボノとして参画することにしました。その後、日本財団の活動は次第に経済産業省などに認められ、予算をつけたモデル事業が始まることになります。私は有給休暇を使ってプロボノ活動に従事したのですが、持続的ではないと判断し、思い切ってPwCを辞めることを決めました。なお当時の上司からは「駄目だったら戻ってこい」と背中を押していただきました。

大橋:
PwCに在籍していた時と外に出た後では、インパクト領域に関われる幅は全く違いましたか。

幸地:
全然違いましたね。そもそも当時は市場が存在しませんでしたし、社内で関わろうにも限界がありました。ただ現在ではインパクト領域に市場が生まれ、PwCコンサルティングを筆頭に、大手コンサルティングファームが続々と参入しています。PwCコンサルティングに残っていれば実現できた案件も多くあったと思います。

大橋:
逆に外に出てから感じるPwCの良さはありますか。また、ケイスリーを立ち上げられてから、PwC在籍者やアルムナイとのつながりはありますか。

幸地:
海外との連携は言うまでもないですが、メンバーのバックグラウンドが非常に多様な点が魅力だと思います。ケイスリーでは特定の領域の専門的な知見が必要だったり、規模が大きな案件は単独で受けられなかったりすることもあるので、どのような案件が来てもしっかり対応できるPwCの人材の多様性は強みだと改めて感じています。「PwCだから実現できた案件もあった」と言ったのは、そういう理由からです。

なおPwC時代はとても上司に恵まれました。誤解を恐れずに言うのであれば、上司ではなく友達のような近しい関係性で仕事させていただきました。そういう関係は今でも続いていて、大阪や東京に出張する際、または相手が沖縄に出張してくる際に、時間を合わせて食事することもしばしばあります。

プロフィール

幸地 正樹

ケイスリー株式会社 代表取締役社長

プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現PwCコンサルティング合同会社)で官公庁向け戦略策定から予算査定・事業者調達・実行支援などの経験を経て、2016年ケイスリー創業。成果連動型民間委託契約(PFS/SIB)や、社会的インパクトマネジメント、インパクト投資など、社会課題解決を軸にしたコンサルティングを行う。
内閣府次期PFSアクションプラン検討会議 民間有識者(2022年~)
内閣府沖縄総合事務局 市町村施策支援アドバイザー(2022年~)
一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ 理事(2020年~)
琉球大学 非常勤講師(2016年~)
The Global Steering Group for Impact Investment(GSG)国内諮問委員会 共同事務局(2016年~)
沖縄県那覇市出身。

大橋 歩

PwCコンサルティング合同会社 パートナー

地方銀行シンクタンクに10年以上勤務し、中堅・中小企業やスタートアップの事業計画および経営改善計画の策定、新規事業の立ち上げ、組織・人事改革推進など、経営課題に直結するテーマを中心に扱い、70社以上のプロジェクトに責任者として従事。
現職では、内閣府の担当パートナーとして、内閣府におけるさまざまな委託事業・補助事業の責任者として、プロジェクトマネジメント業務に従事。特に人材確保支援・人材マッチング、中小企業・スタートアップ支援、デジタル田園都市国家構想交付金活用など、「地域・中小企業の活性化」分野について豊富な知見・実績を有する。

  • 内閣府「プロフェッショナル人材事業にかかる専門的調査・分析業務」(2019年~2022年)
  • 内閣府「先導的人材マッチング事業」(2020年~2022年)
  • 金融庁「地域金融機関等による人材仲介を通じた事業者支援の高度化にかかる委託事業」(2022年)
  • 金融庁「地域企業経営人材マッチング促進事業」(2021年~2022年)
  • 中小企業庁「地域中小企業人材確保支援等事業」(2018年)

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