行動10:移転価格税制(③他の租税回避の可能性が高い取引)

概要

行動10(移転価格税制(③他の租税回避の可能性が高い取引))は、非関連者との間では非常に稀にしか発生しない取引や管理報酬の支払いを関与させることで生じるBEPSを防止するためのルールを策定することを目的とした取組みです。

行動10に関する議論については、下記のディスカッションドラフトが公表され、パブリックコメントおよびパブリックコンサルテーションが行われました。

  • 2014年11月3日: 移転価格ガイドライン第7章の改正案 - 低付加価値グループ内役務提供に係る取扱い
  • 2014年12月16日: コモディティ取引に係る移転価格上の取扱い
  • 2014年12月16日: グローバルバリューチェーンにおける利益分割法の使用

また、2014年12月19日に、行動8、9、10に関する議論として、「リスク、再構築および特別措置に関するOECD移転価格ガイドラインに係るディスカッションドラフトが公表され、パブリックコメントおよびパブリックコンサルテーションが行われました。

最終報告書は、他の移転価格に関連する行動である行動8および行動9とあわせて1つの報告書として取りまとめられ、2015年10月5日に公表されました。

最終報告書のなかで、行動10に関連する部分の概要は以下の通りです。

  1. 取引単位利益分割法
    グローバルなバリューチェーンにおける取引単位利益分割法の適用を明確にすることを目的に、2014年12月のディスカッションドラフトでは、まず、取引単位利益分割法の適用が適当と考え得られる事例について検討を行い、どのような点について明確化することが必要かについて整理されました。ディスカッションドラフトに対するコンサルテーションを受け、最終報告書では、取引単位利益分割法に関するガイダンスの改訂について、そのポイント及び方向性等について提言しています。主要な指摘事項は次のとおりです。
    • 改訂ガイダンスでは、取引単位利益分割法がどの様な状況に最も適した移転価格算定方法なのか、及び、どのようなアプローチが信頼の高い利益の分割方法となるのかを明確にする必要がある。
    • 改訂ガイダンスでは、他のBEPSプロジェクトの提言による移転価格ガイドラインの改訂、及び、行動1(電子経済の課税上の課題への対処)における報告書の内容を考慮に入れる必要がある。
    • 改訂ガイダンスでは、関連会社間の取引など比較可能取引の入手が困難な状況での移転価格のアプローチに関する今後の議論の内容を考慮に入れる必要があり、また、そのような状況における適切手法の選択方法を明確にする必要がある。

      ガイダンスの改訂については、2017年上半期を目途に継続して議論が行われることとされています。

  2. 低付加価値グループ内役務提供
    グループ内役務提供については、CUP法が最適な独立企業間価格の算定方法であるものの、適用できない場合には、コストをベースにした算定方法が適当であるとした上で、低付加価値グループ内役務提供の取扱いについて、次の6つの項目について新たな指針が追加されています。
    • 低付加価値グループ内役務提供の定義
    • 株主活動や重複業務の意義の明確化(特に、低付加価値グループ内役務提供に着目して)
    • 低付加価値グループ内役務提供の適切なマークアップ(5%)のガイダンス
    • 低付加価値グループ内役務提供に関する適切な費用配賦方法のガイダンス
    • 低付加価値グループ内役務提供に関する簡略した便益確認テストのガイダンス
    • 簡略した独立企業間価格の確認方法を行った場合の文書作成ガイダンス

  3. コモディティ取引
    市場価格のあるコモディティ取引に係る独立企業間価格算定については、税務当局と納税者との間の一貫性のある考え方、および、価値創造を反映したプライシング決定が必要であるとしています。
OECDより公表された報告書等

PwCの行動10(移転価格税制③その他)関連ニュースレター

OECDディスカッションドラフトに対するPwCのコメント