中国では2026年3月5日~3月12日の8日間、第14期全国人民代表大会第4回会議(以下、全人代)が開催された。足元の中国経済は長引く不動産不況や雇用不安が続くなか、内需は力強さに欠ける状況がみられる。そのうえ、米中貿易摩擦やその他の主要貿易相手国・地域においても中国の過剰生産に端を発する貿易摩擦の問題を抱えており、外需環境も楽観しがたい。こうした経済環境下、李強首相による「政府活動報告」で示された経済成長率の目標は、2023年から3年連続で続いた「+5.0%前後」が見直され、「+4.5~5.0%」とする旨が発表された。
2026年は「第15次五カ年計画」がスタートする年である。政府当局としては、足元の景気減速や根強いデフレ圧力、少子高齢化など中国が直面する課題を踏まえ、「より積極的な」財政政策と「適度に緩和的な」金融政策の下、景気動向に応じた追加的な施策の打ち出しも含め、柔軟な対応を重ねていくとみられる。また「政府活動報告」では、「自立自強」や「強国」の実現に向けた方向性が示された。内需拡大とイノベーションを重視する方針の一方、現行政策でのGDP成長率の目標達成は容易でないとみられるが、不動産不況への対策や追加的かつ効果的な財政出動の有無など、政府当局の追加政策も含めた今後の動向が注目される。以下では、今般の「政府活動報告」で示された主要なポイントを踏まえつつ、2026年の中国経済の展望について筆者の見解を述べていく。
今般の全人代における李強首相による「政府活動報告」で示された政府の主要目標の中で、最も注目されたのは2026年の実質GDP成長率の目標であるが、2023年から3年連続で続いた「+5.0%前後」が見直され、「+4.5~5.0%」とされた(図表1)。「第14次五カ年計画(2021~2025年)」期間中のGDP成長率は+5.2%に達したが、後述のとおり、足元の厳しい経済環境と不確実性にも鑑み、現実路線を踏まえたものと考えられる。なお、目標に4%台の数字が並ぶのは建国以来初となる。しかし、実際の経済政策の運営において「より良い成果が得られるよう努める」とのスタンスは堅持しており、引き続き経済成長に対するこだわりは根強いように思われる。
ここで足元の中国経済の動向をみると、2025年の実質GDP成長率は前年比+5.0%となり、政府当局の目標である「+5.0%前後」の経済成長を2年連続で達成した。しかし、これは政府当局の景気刺激策に支えられた最終消費であり、トランプ関税の影響から大幅減少している米国を除く、アジアなど他地域向け貿易の伸びに伴う純輸出が寄与したものである。中国国内では人口減少や少子高齢化といった供給・需要の双方に影響する構造的な問題を抱えている。相変わらず長引く不動産不況に加え、雇用不安が続くなかで需要不足に直面しつつある。さらには、米国のトランプ大統領の対中スタンスは厳しい状況が続いているだけでなく、その他の主要貿易相手国・地域も中国の過剰生産に端を発する貿易摩擦の問題を抱えており、外需環境も楽観しがたい1。こうした中国内外を取り巻く経済環境も踏まえつつ、今後の中国経済が安定的かつ質の高い成長を持続する道筋を見出しうるのかを占うべく、「第15次五カ年計画」のなかで打ち出された政策や方針の方向性について、以下で具体的にみていこう。
1 中国における足元の経済動向については、薗田直孝、「「+5.0%」の経済成長を実現しつつも、減速傾向に直面し先行き楽観しがたい中国経済」(PwC Intelligence、2026年1月)を参照のこと。
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