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スピーカー
PwCアドバイザリー合同会社
シニアマネージャー
小松 健太
※本セミナーの内容は2024年12月6日時点の情報に基づいています。本セミナー後、2025年2月26日、欧州委員会は、「オムニバス法案」を公表し、CSDDDに関する修正の提案をしており、当該法案審議の動向にも留意が必要です。
EUでは、サプライチェーンにおける環境や人権リスクの防止・軽減を強く求め、欧州バッテリー規則、コーポレート・サステナビリティ・デューディリジェンス指令(以下、CSDDD)、森林破壊防止規則、強制労働禁止規則といったデューディリジェンス(以下、DD)関連規制を次々に制定しています。PwCアドバイザリー合同会社のシニアマネージャー 小松健太が、このうちの欧州バッテリー規則/バッテリーDDとCSDDDを例にとり、サプライチェーンDDの体制構築について解説しました。
欧州バッテリー規則は、欧州グリーンディールの一環として、バッテリーの原料採掘からリサイクル、廃棄に至るまでのライフサイクル全体を規制するものですが、その中で定められたバッテリーDDは、原料の採掘からEU域内への流通・販売に至るまでのサプライチェーン全体を対象としています。この運用開始は2025年8月を予定しており、バッテリー製造に用いられるコバルト、天然黒鉛、リチウム、ニッケルに関するサプライチェーンを対象に、環境や人権リスクの防止・軽減のためのDD実施が義務化されます。
小松は、「EU域内で対象のバッテリーを上市する企業で、グループ全体を含めた全世界での売上高が4,000万ユーロを超える企業がDDの対象となります」と、解説しました。
また小松は、ポリシー策定、管理システム構築、リスク管理、情報開示といった「4つのバッテリーDDの実施義務」についても解説。それらに加えて、「対象企業は、通知機関(Notified body)という各国の当局から認証された第三者によって、ポリシーや社内体制について検証を受ける必要があり、検証を経なければ製品をEUに上市することができません。バッテリーDDは国連の指導原則などのソフトローとは異なり、違反すればEU市場での販売などが認められなくなるという制裁があります」と注意を促しました。
このバッテリーDDに対応するために企業が実施すべき事項について、小松は、タスク管理、ガバナンス整備など、具体的な取り組み手順である「5つのステップ=タスク整理、ガバナンス整備、DD実施、開示準備、第三者検証対応」を提示。「バッテリーDDが求める要件を整理した上で、現在の社内体制とのギャップ分析を通じて必要なタスクを洗い出し、ガバナンス整備・DDなどに取り組んでいく必要があります」と説明しました。
続いて、企業規模に応じて2027年から段階的に適用される予定のCSDDDについて、「まずはバッテリーDDに適切に対応することが、CSDDDにおいても有効である」ことを、双方の規則の特徴などを比較しながら解説しました。義務への対応の観点からみると、バッテリーDDで課されるポリシー策定、管理システム構築、リスク管理、情報開示は、CSDDDで求められる義務とおおむね共通します。バッテリーDDと同じアプローチで準備を進めることで、CSDDD対応を効果的に進めることが可能であると、小松は結論付けました。
一方でCSDDDは、バッテリーDDとは適用対象企業に違いがあるなど注意すべき点があります。小松は、「1つは、DD対象の範囲。CSDDDは、あらゆる製品が対象となり、なおかつ上流・下流のサプライチェーンに関してもDDを実施することが求められます。バッテリーDDと同様にリスクベースアプローチが求められますが、対象となるサプライチェーンの範囲が広いため、リスクの高い分野を特定し、優先順位をつけたうえで取り組みを進めることが重要になるでしょう。また、CSDDDはグローバルに広がるサプライチェーン全体を対象とするので、日本本社だけではDD実施が難しい場合もあり、各地域の拠点を巻き込んだグローバルなガバナンス体制を整備しておくことも必要になります」と、強調しました。