国際紛争に伴う食糧安全保障への関心への高まり、食糧価格の高騰や農家の高齢化を受けて農業の持続可能性が社会課題として注目されるようになっています。農業は私たちの生命に欠かせない食料を生産する産業であり、人類が将来にわたって発展し続けるために欠かすことのできない基盤です。
近年、企業が農業にビジネスとして参入するケースが増えてきました。その背景として、農業従事者の高齢化や人手不足が深刻化したために、企業の参入規制が緩和されてきたことが挙げられます。また、最新技術を活用したスマート農業の普及が進んでいますが、こうした取り組みには設備や機械、生産管理ソフトなどの設備投資が必要になるため、資金力を持つ企業が新たな担い手として期待されています。最近では、多額の設備投資を要する施設園芸や植物工場に参入する企業も現れています。
企業が農業に関わる目的は、単にビジネスとして利益を上げるためだけではなく、社会的責任(CSR)を果たすための取り組みのほか、従業員の健康やエンゲージメント向上といった複数の目的を同時に達成しようとしているように見えます。
本シリーズでは、近年における企業の農業との関わり方について、下記のとおり3回にわたって論考します。
第1回は、主として利益の獲得や事業の継続性確保といったビジネス的な理由からの企業の参入について、その背景や動機、ビジネスとして成功させるために克服すべき障害や課題、それらに対する取り組みのポイントを解説します。
なお、文中の意見は筆者の私見であり、PwC Japan有限責任監査法人および所属部門の正式見解ではないことをお断りします。
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