Worldwide Tax Summary 2025年11月号

  • 2025-12-22

PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問
岡田 至康 監修

Worldwide Tax Summary 2025年11月号トピックス

  1. DAC9の実施に係る法案(オランダ)
  2. ミニマム課税(第2の柱)に係る税務当局のQ&A文書(オランダ(2))
  3. 国際租税協力枠組条約に関する交渉の状況(国連)
  4. コロラド州、タックスヘイブンリストを拡大、FDDEIは加算(米国)

DAC9の実施に係る法案

2025年9月16日、DAC9(本誌2025年1月号および5月号参照)の実施に係る法案が提出された。DAC9では、OECD/G20 BEPSの包摂的枠組みにおけるGloBE情報申告書(GIR)フォーマットをEU(欧州連合)法に取込むことにより、企業の事務負担を軽減することを目的としている。さらに、DAC9では、EU加盟国の税務当局間の自動的情報交換に係るシステムを構築する。オランダは、国内法を通じてこれらを実施する見込みである。企業グループ全体で単一のトップアップ税情報申告書の提出とすることで、第2の柱のコンプライアンスが合理化、簡素化される。オランダ税務当局は、関連情報をEU域内の他の税務当局と共有する。さらに、オランダはGloBE情報交換に関する多数国の権限のある当局間協定の署名国であるため、DAC9の国内法への取込みにより、この協定に参加している国・地域の税務当局とも情報を共有する。なお、オランダのグループ事業体は、最終親事業体(UPE)の所在地が国外の場合でも、グループ全体の指定申告事業体になることができ、その場合、他の全てのEU加盟国または特定のEU域外国・地域のグループ事業体は、これらの国・地域でこの情報申告書を提出する必要がなくなる。

トップアップ税情報申告書(TTIR)

2021年の15%グローバルミニマム課税に関する国際合意の一環で、トップアップ税情報申告書(GIR:GloBE Information Return)が導入された(DAC9では、GIRをトップアップ税情報申告書(TTIR:Top-up Tax Information Return)と称している)。第2の柱ルールの適用対象となる企業は、2023年12月31日以後に開始する報告年度に関して、18カ月後(12月決算の場合、2026年6月30日)までに、TTIRを提出する必要がある(次年度以降は、報告年度終了後15カ月が期限)。DAC9には、TTIRに係る提出様式、内容、方法に関する詳細なルールが記載された付属文書(annex)が含まれている。移行期間に係る簡易国・地域報告フレームワークを含むGIRフォーマットをEU域内で義務化(2023年12月31日以後の開始報告年度から)することを目標としている。簡易フレームワークは、GIRの初期実施年度(2028年12月31日以前に開始する会計年度。なお、2030年6月30日後に終了する会計年度は含まれない)を対象にしている。TTIRには、次の情報が含まれる。

  • 一般的な事業データとグループ事業体/グループストラクチャーと組織構造の変更/実効税率(ETR)とトップアップ税計算/国・地域別トップアップ税配分

DAC9を国内法に導入することで、オランダはGIRフォーマットを正式に法律に取込むことになる。

申告義務との関係

TTIRは、ミニマム税(第2の柱)の既存の申告義務を代替するものではない。ミニマム税が課されるグループ事業体は、税法に従って、ミニマム税に係る申告書を提出する必要がある(自主申告メカニズム)。オランダでは、税務申告書は、TTIRの提出から2カ月後が期限となる(EU域内を含む他の国・地域では、異なるルールが適用される)。

TTIRの提出(Central filing)

DAC9実施法案では、TTIRの一元提出の法的根拠を規定している。UPEの所在地国がオランダか、オランダのグループ事業体がグループ全体の指定申告事業体の場合のいずれかにおいて、企業はワンストップショップシステム(éénloketsysteem)を通じてTTIRを提出できる。これにより、各EU加盟国で個別にTTIRを提出する必要がなくなる。TTIRが別のEU加盟国で提出されている場合、オランダのグループ会社は、TTIRを提出するグループ事業体およびその設立地について、オランダ税務当局に通知する必要がある。

EU域内の情報交換

DAC9では、EU加盟国がTTIRに係る第2の柱関連データをEU加盟国間で自動的に交換することを規定している。EU加盟国間の情報交換促進のため、欧州委員会は実施規則(Implementing Regulation 2025/1325)を公表した。本実施規則では、OECD策定版ベースの共通ITスキーマ(XSDスキーマ)を定めている。これにより、DAC9に基づく報告とOECDの枠組み間の完全な相互運用性が確保され、税務当局と企業の両方の負担が軽減される。この交換は、欧州委員会が開発した標準化デジタルフォームを使用して、関連するグループ事業体によるTTIRの提出後3カ月(初回は6カ月)以内に行われる。税務当局は、関連データを他のEU加盟国の当局とタイムリーに共有することになる。なお、新制度への対応のため、最初の交換は最も早い場合で2026年12月1日が期限となる。

情報交換に係るアプローチ

オランダの税務当局による第2の柱に係る情報交換は、DAC9で定められた「dissemination approach」に従って、関連情報のみがトップアップ税の課税権を有する他のEU加盟国と共有される。追加情報の求めがある場合、税務当局は関連するグループ事業体に必要なデータを要求し、当該EU加盟国と共有する。

受領情報に係る明らかな誤りの修正

税務当局は、DAC9に基づいて受領した第2の柱に係るデータに明らかな誤りがあると認められる場合、データ元の当局に通知する。なお、第2の柱の指令やOECDモデルルールの解釈の相違から生じる誤りは対象外で、また、税額に影響がある場合に限られる。

通知(notification)後に情報提供がない場合

DAC9に沿って、DAC9法案では、TTIRが他のEU加盟国で提出された旨の通知があるにもかかわらず、関連する第2の柱データを期間内に受領できない場合、税務当局は速やかに関係国の当局に通知する。一方、オランダの税務当局が他のEU加盟国の当局から同様の通知を受けた場合、TTIRが未提出、他の当局が指定受領者でない可能性や技術的問題といった理由を1カ月以内に説明する。

GloBE情報交換に関する多数国の権限のある当局間協定

オランダは、GloBE情報交換に関する多数国の権限のある当局間協定に署名している。2025年10月8日現在、21カ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、韓国、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スロバキア、南アフリカ、スペイン、スイス、英国)がこの協定を締結している。DAC9同様、本合意では、最終親事業体または指定申告事業体のレベルでGIRを単一の税務当局に一元提出し、本合意に署名している他の関連国・地域と関連情報を交換する。

Source:PwC Netherlands

ミニマム課税(第2の柱)に係る税務当局のQ&A文書

税務当局は、オランダの第2の柱の法律(2024年オランダミニマム税法)の適用に関する文書(Q&A)を公表した。本Q&Aでは、本法律の適用に関して実際に提起された質問に対する第2の柱専門チームからの回答を広範囲にまとめている。本専門チームは、税務当局内および財務省内の他のさまざまな部門と協力して、実務上の質問に対する回答を取りまとめた。本Q&Aは、適用される税法や裏付けとなる議会文書、および必要に応じて第2の柱に関するOECDのコメンタリーや文献などのその他の文書を含む関連法源に基づいている。なお、本Q&Aは網羅的ではなく、関連法の改正、OECDや欧州委員会の執行ガイダンスの見直しなどを踏まえて、定期的に更新される。なお、本Q&Aはあくまで参考情報(法的効力はない)とされており、特定の事項におけるオランダのミニマム税法の適用について法的安定性を求める場合、税務当局からの事前ルーリングの取得が選択肢となろう。本Q&A文書(全17章)には数十の質問と回答が含まれている(本Q&Aの章構成は、本ミニマム税法の章構成に従っている)。本Q&Aには、以下が含まれている。

米国のGILTI、Subpart F、リバースハイブリッド事業体関連

税務当局によると、米国GILTIとSubpart F規定は、本ミニマム税上、特定構成事業体への対象税額の配分について、別個の異なるCFC制度とされる。Subpart F制度では、ブレンド型(blended)CFC税制(GILTIなど)に係る特別配分規定は適用されず、CFC制度に係る通常の配分ルール(関係能動的所得項目に対して一般的帰属ルール)が適用される。米国のいわゆる「チェックザボックス選択」に関連して、「リバースハイブリッド事業体」の概念について、さらなる解釈を示している。米国親事業体が、オランダ子会社とその米国子会社(孫会社)を、米国の法人所得税上透明(transparent)と扱う選択をした一方、オランダは当該孫会社をオランダ法人税上不透明とみなす場合、当該孫会社は、本ミニマム税上、リバースハイブリッド事業体(フロースルー事業体)となるとしている。

MAP(相互協議)に係るタイブレーカ-ルールの適用

2019年12月9日付の政令(第2019-25404号)に従って関連する租税条約に二重居住事業体に係るMAPタイブレーカールールが導入された場合、本ミニマム税上での構成事業体の所在地判定にも適用されるとしている。

アーンアウト(資本参加免税)

税務当局によると、買収後に特定の条件が満たされずアーンアウト義務が免除される場合、本ミニマム税上、除外キャピタルゲインとなる(適用財務会計基準による)。同様に、関連する株式保有がポートフォリオ持分でない場合、アーンアウト請求権の喪失は除外キャピタルロスとなる。

財務報告(現地会計基準)

EU承認のIFRS(EU-IFRS)は、本ミニマム税上、現地会計基準として適格となる(EU承認がないIFRSは、適格でない)。これは、オランダの会社法がEU-IFRSをオランダで承認された基準として指定していることによる。オランダGAAPは、本ミニマム税上、現地会計基準としても機能する。最終親事業体が連結財務諸表の財務会計基準としてIFRSを使用する場合、オランダに所在するグループ構成事業体は、適格国内ミニマム税の計算上、IFRSを使用しなければならない。これは、全てのオランダの構成事業体が連結財務諸表についてIFRSに従って報告している一方、オランダ商工会議所への単体ベースでの提出の際、一部構成事業体はオランダGAAP、他の構成事業体はEU-IFRSに従って報告している場合に当てはまる。多国籍企業グループが、オランダGAAPとEU-IFRSの両方に基づいてオランダの全ての構成事業体について利用可能な勘定を有している場合、適格国内ミニマム税の計算には、オランダGAAPを使用する必要がある。オランダの構成事業体の1つについてEU-IFRSのみが利用可能で、他のオランダ構成事業体についてEU-IFRSとオランダGAAPの両方が利用可能な場合、本ミニマム税に係る適格国内ミニマム税の計算上、EU-IFRSを使用する。

前年度の税調整

前年度の税調整に関して、ミニマム税法の関連規定では、過年度のトップアップ税情報申告書(GIR)提出後の当該修正処理のみを扱っているとしている。一方、GIR提出前における当該税調整の取扱いについてはOECDで検討中であり、今後何らかの執行ガイダンスが見込まれるとしている。

執行面

本ミニマム税上の登録義務はないとしており、国別(CbC)通知は、本ミニマム税上の通知とは異なるとしている。トップアップ税額がある場合、税務当局が管理するオンラインポータルのフォームで申告書を提出する(GIRの提出とは別途)。なお、当該納税に係る課税構成事業体への資金提供方法は、多国籍グループ次第であるとしている。また、本オランダミニマム税には重要性の閾値がなく、全ての移転価格調整がトップアップ税の計算に含まれる。報告年度の合計金額が3,500万ユーロ未満のグループ内取引に係る移転価格調整について、GIRでの報告義務はない。

Source:PwC Netherlands

国際租税協力枠組条約に関する交渉の状況

国連は、グローバルな税務上の課題に対処するために、国際租税協力に関する包括的な枠組条約を策定中である(本誌2024年8月号2025年3月4月5月号参照)。この作業は、開発途上国と先進国が参加する政府間交渉委員会によって主導されている。2025年8月には、本条約、およびクロスボーダーサービス課税と紛争解決を対象とする2つの初期的議定書に関する実質的な交渉が行われた。最終テキストは2027年までに総会に提出される予定である。これまでの議論は、先進国と途上国の違いを反映している。かなりの数の国が国連租税枠組条約の策定を支持しており、国際租税におけるOECDの優位性に異議を唱えている。結果は少なくとも2年先であるが、成功すれば、クロスボーダーの課税、特にクロスボーダーサービスに大きな変化をもたらす可能性がある。

国連租税枠組条約の構造とワークストリーム

本委員会の作業は、次の3つの主要なワークストリームで構成されている。

  1. 枠組条約では、持続可能な開発、課税権の公正な配分、効果的な紛争解決という条約の中核的なコミットメントに焦点を当てている。各国は公正性と課税権についてさまざまな解釈を持っていることが認識されている。
  2. クロスボーダーサービス課税に関する議定書では、ネクサスとしての物理的プレゼンスの関連性、重要な経済的プレゼンス(SEP)などの新しいネクサスルール、ネット/グロス課税、対象となる税の種類と範囲など、クロスボーダーサービス所得への課税の複雑さに対処している。本議定書では、デジタルサービスに限定すべきか、それともより幅広いサービスを含めるべきかについて議論がある。
  3. 紛争予防と解決に関する議定書では、クロスボーダー税務紛争の複雑さの増大を考慮して、紛争の予防と解決におけるギャップに対処することを目的としている。この議定書は、仲裁プロセスにおけるリソースバランスに関する懸念があることから、仲裁を含む選択肢を提供するとみられている。

2025年3月に国連の国際租税協力専門家委員会で採択された国連モデル租税条約Article 12AAは、ワークストリームII(サービス課税)に関する交渉の基礎となる可能性がある。デジタルサービス税(DST)と同様に、Article 12AAは、締約国が、他方の締約国の居住者に支払われるサービスフィーに対して総額ベースで課税することを認めている。また、ネクサスと定式(formulary/fractional)配賦ベースの所得配分に関する新ルールも議論されており、これによりネットベースでの課税が可能となり得る。

タイムラインと交渉セッション

本委員会は2025年から2027年の交渉スケジュール中に年3回開催され、2027年までに本件条約の最終テキストと初期的議定書を国連総会に提出することを目指している。ワークストリームIIに係る選択肢の起草は、2025年後半には開始されるとみられる。持続可能な開発、課税権の公正な配分、紛争解決に係る条約のコミットメントの合意は、年末が期限である。その後の交渉では、富裕層個人への課税、効果的な執行支援、違法な資金の流れ、租税回避と脱税、有害な租税慣行、天然資源採掘からの収入など、条約の他のコミットメントに取り組むことになる。8月の会合中、委員会は、条約にハイレベルのコミットメントを設けることで広範なコンセンサスに達し、運用上および技術的な詳細は後の議定書で取り扱われる。シンプルで明確な紛争解決手続きには強い支持がなされている。

各国の立場の相違

各国参加者は、クロスボーダーサービスの課税権に係るネクサスとしての物理的プレゼンスの引き続きの関連性について議論した。多くの国は、特にデジタル経済において、この伝統的な基準は時代遅れであると考えている。重要な経済的プレゼンス(SEP)基準採用の可能性が検討されており、ケニア、ナイジェリア、インドは、デジタルおよびクロスボーダーサービスへの課税についてSEPを支持している。多くの発展途上国は、執行が容易であることから総額ベースの源泉税を支持しているが、ノルウェー、スウェーデン、UAEなどの先進国は、総額ベース課税は市場を歪め、利益率の低い企業にとって公平ではないと注意喚起している。紛争解決に係る諸選択肢を提供する柔軟な議定書は、ワークストリームIIIの議論で支持を集めた。発展途上国は制度的な不均衡を理由に義務的な仲裁に反対したが、カナダやスイスなどの国々は仲裁を選択肢として残すことを支持した。他の議論としては、適用対象となる紛争の範囲、特に既存条約のない案件や純粋な国内案件を対象とすべきかどうかに集中した。主要国ブロックの立場は、概して2024年から2025年初頭にかけて表明されたものと一貫している。当初から明らかなように、交渉では先進国と途上国の視点の間に根強いギャップがあり、この情勢がすぐに変わる可能性は低い。しかしながら、税収を増やすだけでなく、国内企業に対する差別を回避するよう、クロスボーダーサービスに係る代替課税方法を見つける必要性については、ある程度の合意があるとみられる。先進国は、そのような代替手段がない中で、DSTについての検討を継続している。米国は2025年2月にこれらの交渉から撤退し、本枠組条約プロセスの結論を拒否し、反対するとしている。これは、特に最終テキストが現状から大きく逸脱した場合、本条約の将来の有効性や受け入れを脅かす可能性がある。

Source:PwC, Global Tax Policy Alert

コロラド州、タックスヘイブンリストを拡大、FDDEIは加算

コロラド州特別会期で制定された法律(HB25B-1002、2025年8月28日に知事署名)では、2026年1月1日以降に開始する所得年度より、香港、アイルランド、リヒテンシュタイン、オランダ、シンガポールが、原則、関係グループ企業に係る合算申告が必要となるタックスヘイブン国・地域リストに掲載された(納税者は、内国歳入法(IRC)Section 7701(o)の経済実体原則に基づき反証の余地がある一方、本州法には、当局側も同様の理由でタックスヘイブン掲載国の法人と認定できる規定がある)。これらの国は、15%グローバルミニマム税を採用するとされており、州税との二重課税が懸念される。なお、従前と異なり、当該外国法人に係るIRC Section 78の加算額について、州課税所得算定上、連邦課税所得から控除されると規定される。本法律ではまた、FDDEI(foreign-derived deduction eligible income)に係る連邦税上の控除額と同額が、州法人所得税額算定上、連邦課税所得に加算されると規定している。

Source:PwC, Tax Insights

その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。

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