月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 3月号

2018-03-05

2018年3月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 法人税改正とインセンティブの導入(フランス)
  2. 2018年度財政法 - デジタル経済とクロスボーダー課税の重要規定(イタリア)
  3. 対内直接再投資に係る源泉税の繰延べの取扱いを公表(中国)
  4. クロスボーダーの電子サービスの提供を行う外国事業体が稼得する台湾源泉所得の課税(台湾)
  5. 税に関する第三国の非協力的法域の公表 - 8法域の除外(EU)

法人税改正とインセンティブの導入(フランス)

2017年12月21日、議会は、2017年度修正財政法(2017 Act)と2018年度財政法(2018 Act)をそれぞれ可決した。これらは、2017年12月29日と12月31日の官報でそれぞれ公表されている。これらの財政法には、フランス経済の競争力向上を意図した法人税措置が含まれている。また、富裕税(wealth tax)、個人課税、個人地方税と付加価値税(VAT)に影響するその他の多くの規定も含まれる。

法人所得税率の漸減(2018 Act 第84条)

2017年9月に首相が公表した行動計画では、(収入が7.3百万ユーロ超のすべての法人について)、5年間にわたり、法人所得税(CIT)率が引き下げられる。

  • 2018年1月1日以後開始課税年度 - すべての法人の標準CIT率は、50万ユーロまでの課税所得は28%、それを超えると33.1/3%になる。
  • 2019年1月1日以後開始課税年度 - すべての法人の標準CIT率は、50万ユーロまでの課税所得は28%、それを超えると31%になる。
  • 2020年1月1日以後開始課税年度 - すべての法人の標準CIT率は、28%になる。
  • 2021年1月1日以後開始課税年度 - すべての法人の標準CIT率は、26.5%になる。
  • 2022年1月1日以後開始課税年度 - すべての法人の標準CIT率は、25%になる。

3%の配当分配税の廃止(2018 Act 第37条)

2017年9月の政府のコミットメントといくつかの最近の判決に従って、2018年1月1日以後の支払について、3%の分配税が完全に廃止される。

利子損金算入制限(「Carrez」)規定の改正(2018 Act 第38条)

「Carrez」規定は、事実上国外で管理されているフランスの事業体によるフランス/国外の資本参加に係るフランスでの利子損金算入を阻止する濫用防止法である。つまり、意思決定、支配及び影響力行使が、資本取得をするする当該フランスの事業体自体か、会社法上直接間接に当該事業体を支配するフランス設立法人ないし直接の兄弟会社となるフランス設立法人によって実際に行われない、ということである。2018 Actでは、この制限を緩和し、フランスと税務執行共助条約を締結しているEU/EEA加盟国に管理地(seat of management)があるフランス設立法人に関して、EU法に従うようにしている。この新たな制度は、2017年12月31日以後に終了する課税年度から適用される。

CICE税額控除を雇用者負担金の軽減へ転換(2018 Act 第86条)

CICEとは、フランスの最低賃金の2.5倍未満を受領する従業員の年間支払賃金の一定率で計算される税額控除である。2018年1月1日以後に支払われる賃金について、2018 Actでは、CICE税額控除の率が7%から6%に引き下げられる。2019年1月1日以後に支払われる賃金について、CICE税額控除は廃止され、社会保障財源である雇用者支払給与負担金の恒久的な軽減に代替される。

CVAE税率目的での税グループメンバーの稼得収入額の計算(2018 Act 第15条)

CVAEは、納税者が創出する付加価値に基づく租税で、総収入額によって決まる。2017年5月19日、フランス憲法裁判所は、連結納税グループ会社に適用されるCVAE税率の決定方法が、連結納税グループの事業体の一員か否かで正当化できない取扱いの差異を創出しているとして、違憲判決を下した。2018 Actでは、納税グループを構成する要件(95%の資本関係)を満たすグループ会社に適用されるCVAE税率は、実際に連結納税グループの一員であるか否かにかかわらず、その年度のグループ会社が認識する連結総収入額に基づくことになる。この新たな制度は、2018年以降のCVAEに適用される。

20%の増加賃金税率の廃止(2018 Act 第90条)

賃金税は、その活動がVATの対象にならない雇用者が、毎年支払う総賃金と経済的利益に課される。賃金税の標準税率は、4.25%であるが、一定の閾値を超える総個人賃金には、増加税率(7,799ユーロから15,572ユーロまでの賃金は8.5%、15,572ユーロから152,279ユーロまでの賃金は13.6%)が適用される。2018 Actでは、外国人管理職の採用増のために、2018年1月1日以後に支払われる152,279ユーロ超の賃金について20%の増加税率は廃止される。

金融取引税(2018 Act 第39条)

2018 Actでは、2018年1月1日以後の買収に係る日計り商い(intraday trading)に適用予定であった金融取引税(FTT)規定が廃止される。したがって、FTTの範囲には変更がなく、日計り商い取引は除外される。

企業再編に適用される課税繰延べ制度の改正(2017 Act 第23条及び15条)

2017 Actでは、フランス税法第210条A以下に規定する優遇税制について、いくつかの改正が行われている。

  • 2017年3月8日、欧州司法裁判所は、フランスの事業体がフランス国外の事業体に吸収合併される際、課税繰延べ制度の適用を受けるために事前ルーリングを取得するという要件が、EU法に適合しないとの判決を下した。その結果、2017Actでは、この要件を廃止し、課税繰延べ恩典を受けるための新たな要件を導入する。即ち、被合併事業体の資産は、外国受領事業体のフランスに所在するPE(恒久的施設)に帰属しなければならない。
  • フランス国外事業体が恩典を受ける合併等(absorptions)について、特定の申告が必要になる。
  • 新たな濫用防止規定では、脱税/租税回避が主目的である合併、スピンオフ及び部分現物出資は、課税繰延べ制度の対象外になる。
  • 従前の規定では、一事業部門の現物出資が課税繰延べ制度の恩典を受けるのは、現物出資事業体が、受領した株式を3年以上継続保有する場合のみであった。2017 Actでは、この要件が廃止される。
  • 部分現物出資について、現物出資事業体の株主への株式の帰属は、一定の累積的要件を満たせば、事前ルーリングなしに可能である。
  • 法人が行ういくつかの中間オペレーション(例えば、分割(division)/株式再編)は、税務当局が一定の要件でこれらの取引に課税繰延べを付与しない限り、通常課税対象となるキャピタルゲイン/ロスが生じる。この繰り延べ制度はフランス税法の一部として法制化され、課税繰延べが適用される。以上の措置は、2018年1月1日以後に完了する合併、分割(demerger)、現物出資及びスピンオフオペレーションに適用される。

外国源泉税の損金算入制限(2017 Act 第55条)

源泉税の外国税額控除を受けている欠損ポジションのフランス法人は、利得からの税額控除ができず、結果として、国外払いの税額に相当する費用は税務上損金に算入されていた。税務当局はこのポジションに異議を申し立てていたが、行政最高裁判所は、このような損金算入が租税条約で明確に禁止されない限り、法人の損金算入は認められると判示した。新たな規定では、当該租税条約にかかわらず、外国源泉税は損金算入されない。しかしながら、源泉税を適用する国と租税条約の締結がない、ないし、関連条約の規定に反して源泉税が課された場合には、税務上、引き続き損金算入可能である。

延滞税率の軽減(2017 Act 第24条)

延滞税の税率は、月0.4%(年4.8%)であった。2017 Actでは、2018年1月1日から2020年12月31日まで、月0.2%(年2.4%)に引き下げられる。


出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2018年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

2018年度財政法 - デジタル経済とクロスボーダー課税の重要規定(イタリア)

2017年12月29日に官報に公告された法律第205号(2018年度財政法)には、デジタル経済と国際租税に関する重要な税務規定が含まれる。

2019年1月1日発効のデジタル取引新税

2018年度財政法では、デジタル取引の事業者間(B2B)新税(Web Tax)が導入される。Web Taxは、一定の例外を除き、イタリア居住法人、政府機関、パートナーシップ、個人事業主、自営の専門家と非居住者のイタリアPE(恒久的施設)に対して、電子機器を通じて提供されるサービスに適用される。本法律では、このサービスを、インターネットその他の電子ネットワークを通じて提供されるサービスで、その性質上、サービス提供が主として自動的であり、最小の人的関与、情報技術のサポートなしには提供不可能、という特徴があるものと定義づけている。財務省は、詳細について、2018年4月30日までに特別の省令(ministerial decree)を公表予定である。Web Taxの税率は3%で、サービスの支払対価(VAT除き)に適用される。Web Taxは、暦年で、Web taxの対象になる取引が3千超であるイタリア居住及び非居住サービス提供者の両方が課税対象になる。サービスの受領者が、支払対価からWeb Taxを源泉徴収し、支払月の翌月16日までに税務当局に納付する。サービス提供者が、請求書等で、当該提供者が暦年で3千取引の閾値を超えていないことを証明する場合には、サービス受領者はWeb Taxの源泉徴収を行わない。本税は、2019年1月1日からの適用になる。

恒久的施設(PE)の定義の改正

2018年度財政法では、2018年1月1日から、イタリア国内のPEの定義を拡大し、改正する。

重要かつ継続的な経済プレゼンス(新「ネクサス(nexus)」)

新たなネクサスが規定され、重要かつ継続的な経済プレゼンスの概念に基づき、非居住者企業がイタリアに物理的プレゼンスがない場合でも、イタリアのPE(課税プレゼンス)が創出されよう。しかし、経済プレゼンスの正確な意味合い(例えば、デジタルサービスが対象となるか、等)について、ガイドラインはない。また、この新たなネクサスについて、非居住者企業が条約の恩典を受けられる場合に適用される濫用防止規定と考えるべきなのか、現時点では不明確である。イタリア税務当局からの事前ルーリングの適用も選択肢となろう。

以上のほか、登録免許税上の証書(deeds)の解釈規定の改正、相当の株式持分のキャピタルゲインと配当に係る税制改正、ブラックリスト法域からの配当に係る税制改正、非居住者の被支配事業体に係るステップアップ制度の延長、イタリア非上場会社の資本参加に係る一時的な資産のステップアップ規定、特別償却の延長等、がある。

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2018年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

対内直接再投資に係る源泉税の繰延べの取扱いを公表(中国)

2017年8月、国務院は、外資誘致措置に関する通知(国発[2017]39号)を公表した。本通知には、国外投資者の事業環境を更に改善するための22の措置が含まれる。このうちの一つには、国外投資者が、中国国内居住者企業からの分配利益を中国の「奨励プロジェクト」に直接再投資する際の源泉所得税の課税繰延べの取扱い、がある。

2017年12月21日、財政部(MOF)、国家税務総局(SAT)、国家発展改革委員会(NDRC)及び商務部(MOC)は、共同で、国外投資者が居住者企業からの分配利益を直接再投資する際の源泉所得税の暫定繰延べ取扱いに関する通知(財税[2017]88号)を公表した。本通知では、課税繰延べ取扱いの適格要件、申請手続きと責任、税務当局の行政責任を明確化している。本通知によれば、繰延べの取扱いは、2017年1月1日に遡って発効となろう。同日以後の適格再投資に係る納税額は、還付可能である。

2017年12月28日、上述の四つの政府部門は、共同で、Q&AのリストをMOFの公式ウェブサイト上で公表しており、本通知における特定の規定と関連実施要件に関する解釈を示している。

本通知の主要メッセージ - 現行の中国の企業所得税法では、非居住者企業が中国で稼得する配当は、条約でより有利な税率が適用されない限り、源泉地である中国で、10%の源泉所得税の対象になる。中国政府は、国外投資者の長期発展のためのよりよい環境の創出と、中国での投資の継続の奨励のため、課税繰延べの取扱いを導入している。

課税繰延べの取扱いの要件 - 源泉所得税の繰延べの適用を受けるためには、国外投資者は、以下のすべての要件を満たさなければならない。

要件1: 直接再投資 - 直接再投資とは、国外投資者による中国居住者企業からの分配利益を使った持分投資であり、中国居住者企業の資本金や資本積立金の増額、新たな中国居住者企業の設立、非関連者からの中国居住者企業の持分の取得、MOFとSATが定めるその他の方法、が含まれる。国外投資者と国内A株上場企業が、外国投資者の上場企業に対する戦略投資管理弁法(商務部令2005年第28号)で規定される「戦略投資」の要件を満たす場合を除き、直接再投資には、上場会社への投資は含まれない。

要件2: 分配利益の性質 - 国外投資者への利益分配は、中国居住者企業が、国外投資者に対して、持分投資からの実現留保利益に基づいて行う配当・利益分配でなければならない。

要件3: 直接支払 - 本通知によると、利益分配は、現金か有形物・有価証券等の非現金であるかにかかわらず、被投資企業又は持分譲渡者に直接移転されなければならない。

要件4: 「奨励プロジェクト」 - 国外投資者の「奨励プロジェクト」とは、外商投資産業指導目録の「奨励目録」分類のプロジェクト及び中西部地区外商投資優遇産業目録の事業、である。いずれも2017年に改訂されている。被投資者の事業活動がこれらに該当するかの判断に当たり、税務当局は、NDRC及びMOCに意見を求めることができる。Q&Aの解釈に基づき、国外投資者は、再投資時の被投資者の事業活動が「奨励プロジェクト」であれば課税繰り延べの取扱いが受けられる。

届出手続きと事後管理 - 配当分配を行う中国居住者企業である配当源泉徴収義務者は、源泉税繰延べのために、国外投資者が提供する資料を適切にレビューし、適格性を判定の上、関連税務当局に記録を提出しなければならない。

遡及的取扱い - 本通知では、国外投資者が2017年1月1日以後に受領する配当について、課税繰延べ又は既納付税額の還付が認められる(税額支払日から3年間、遡及的繰延べの取扱いの適用と、還付請求が認められる)。

繰延べ源泉税の精算 - 繰延べの取扱いを受け、持分譲渡、持分買戻し又は清算を通じて直接再投資を回収する国外投資者は、関連支払いの受領後、7日以内に関連税務当局に報告し、繰延べ税金の支払いを精算しなければならない。

以上のほか、本通知では、直接再投資後にグループ内再編を行う国外投資者のための特別な救済規定がある。

 

出典:PwC China, News Flash / PwC, Tax Insights 
「月刊 国際税務」 2018年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

クロスボーダーの電子サービスの提供を行う外国事業体が稼得する台湾源泉所得の課税(台湾)

2018年1月2日、財政部は、台湾の消費者(個人、営利企業・組織を含む)にクロスボーダーの電子サービスを提供する外国企業が稼得する報酬の所得税上の取扱いに関する通達(台財税字第10604704390号通達)を発出した。本通達は、2017年に遡って適用される。

課税所得は、供与サービスの形態に応じた台湾源泉収入額からすべての関連コスト/費用を控除した額(又は、標準利益率によるみなし利益)に、台湾での利益貢献度を乗じて計算される。標準源泉税率は、20%である。プラットフォームサービス提供者には、特別規定が適用される。

 

出典:PwC Taiwan, Taiwan Tax Alert
「月刊 国際税務」 2018年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

税に関する第三国の非協力的法域の公表 - 8法域の除外(EU)

2017年12月5日、閣僚理事会(ECOFIN Council)は、税に関する(第三国の)非協力的法域のリスト(ブラックリスト)を公表し、最終的に17の法域が当リストに掲載された(本誌2月号参照)が、2018年1月23日、政治的コミットメントを受けて、8の法域がリストから除外された。同日時点でリストに掲載されているのは以下の9法域である。

米サモア、バーレーン、グアム、マーシャル諸島、ナミビア、パラオ、セントルシア、サモア、トリニダード・トバゴ

 

出典:EU website
「月刊 国際税務」 2018年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

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