【2023年】PwCの眼(7)サステナビリティ開示が企業に求める変革

2024-03-18

気候変動に代表されるサステナビリティへの関心の高まりは、企業の情報開示に大きな影響を及ぼしている。多くの企業が自社のウェブサイトでサステナビリティに関する情報を充実させており、世界中でサステナビリティに関する企業の情報開示規制の整備が進んでいる。この変化は早く、ここ1年間でISSB(国際サステナビリティ基準審議会)によるIFRSサステナビリティ開示基準が公表され、EUでは開示制度であるCSRD(企業サステナビリティ報告指令)が承認された。日本でもISSBの基準をベースに検討が進む。企業の情報開示制度は長い発展の歴史を持つが、近年のサステナビリティ情報の開示にかかる動きは過去からの連続性を感じさせない変化だ。

企業のサステナビリティ情報開示には従来の財務情報開示と異なる特徴がある。
まずステークホルダーの多様さだ。財務情報の主な利用者は投資家だが、企業のサステナビリティには投資家の他に消費者、近隣住民、従業員などの多様なステークホルダーが関心を持つことから、求められる情報も気候変動、生物多様性、人権、人的資本など多岐にわたる。そのため、情報開示要求の対象は上場企業にとどまらず、CSRDでは一定の規模以上の非上場企業にも適用される。

開示情報も多く、CSRDでは1,000以上の開示指標が提示されている。中には企業が現状未保有な情報、保有していても収集や保管のプロセスが確立されていないものもある。既にシステム化が進む財務情報と違い、サステナビリティ情報はEメールとエクセルで収集している会社も多い。開示制度は第三者保証を求めており、企業はそれに耐えうるプロセスと内部統制を構築しなくてはならない。

開示タイミングにも注意がいる。EUではサステナビリティ情報と財務情報はほぼ同時開示だが、現状日本では、サステナビリティ情報の開示は財務報告よりも平均3ヶ月ほど遅い。投資家への報告として両者は同時開示が求められる。今後、企業は情報収集の大幅な早期化が必要だろう。

次に、範囲の違いが挙げられる。サステナビリティはサプライチェーンを含むバリューチェーン全体が対象となり、連結グループに限定される財務情報よりも広い。温室効果ガス排出量におけるスコープ3を正確に開示し削減目標を達成するためにはサプライヤーとの情報連携が欠かせない。サプライチェーンにおける人権リスクを回避するために、サプライヤー選定基準の厳格化や行動規範の共有などのガバナンスの強化が必要となってくる。逆に、自社が他社のサプライヤーの立場である場合は、顧客からの情報要求やガバナンス強化の要請に応えていかなくてはならない。ここでも情報の信頼性、適時性が求められるのは言うまでもない。

このように、世界中で構築されつつあるサステナビリティ開示規制により、非上場会社を含む多くの企業が直接的、間接的な影響を受けることになるだろう。その影響は単なる情報の収集と報告にとどまらない。基準の精緻化により、従来は難しかったサステナビリティにおける企業間比較が可能となり、ステークホルダーによる企業の選定が進む。この変化は早く、企業は変革に迫られている。

執筆者

川曲 弘城

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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※本稿は、日刊自動車新聞2023年11月27日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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