アジア諸国との相互協議

2018-12-05

2015年10月のBEPS最終報告書が公表されて以来、いわゆる「パナマ文書」・「パラダイス文書」の公開もあり、各国税務当局の国際課税に対する取り組みが一斉に進んでいる。

各国とも、クロスボーダーで行われる租税回避及び脱税の機会を排除し、二重課税を効果的かつ効率的に防止することは、経済成長及び強靱な世界経済を支える国際課税システムの構築にとって不可欠であるとの共通認識にある。

そして、税源浸食と利益移転に対処するためにBEPS行動計画に基づき策定された措置を導入することによって、法令を順守する納税者にとって不必要な不確実性をもたらし、意図しない二重課税を引き起こすことがあってはならないということに合意するに至っている。そのため、相互協議といった、紛争解決メカニズムの改善は、BEPSに対する取組において不可欠の要素であるといえる。

BEPSプロジェクトでは、新たなルールの導入に伴う予期せぬ二重課税の発生等の不確実性を排除し、予測可能性を確保するために、租税条約に関連する紛争を解決するための相互協議手続をより実効的なものとすることが図られた。

2015年に公表された最終報告書(行動14最終報告書)では、実効的な相互協議の実施を妨げる障害を除去するために各国が最低限実施すべき措置(ミニマムスタンダード)等が勧告された。ミニマムスタンダードについては、その実施を確保するため、OECD非加盟国であるアジア各国も含めたモニタリングが行われていることから、特にこの20数年間、アジア諸国との移転価格問題に向かい合ってきた日系企業にとって、今後の移転価格に対する方針や戦略の検討に資するべく、本稿を取りまとめたものである。

さらに、アジア諸国との各国固有の相互協議に係る課題や関連戦略については、今後考察したいと考えている。

なお、文中における意見および見解は、筆者の個人的なものであり、筆者の所属する組織・団体等のものではないことをお断りする。

「月刊国際税務」2018年11月号 寄稿

(全文はPDFをご参照ください。)


著者:
PwC税理士法人
常任顧問 岡田 至康
同国際税務サービスグループ(移転価格) パートナー 黒川 兼
同ディレクター 藤澤 徹