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企業が持続可能な社会の実現に向けて責任を果たすには、サステナビリティ経営の実効性を高める必要があります。その鍵となるのが、サステナビリティデータの適切な管理と活用です。シリーズ第4回となる本稿では、その実現に必要な推進体制について、サステナビリティデータのオーナーシップから始まり、全社的な体制とリーダーシップの在り方、そして乗り越えるべき課題と対策を論じます。
TCFDやISSBなど国際的な枠組みの整備が進み、企業は環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する情報の開示責任を負うようになりました。しかし、報告が制度化される一方で、これらのサステナビリティ指標が経営の意思決定や企業施策との連動に十分に活用されているとは言い難い状況が続いています。
その背景には、サステナビリティデータのオーナーシップが不明確であるという課題があります。対象となるデータ範囲や改善推進の対象が企業全体に及ぶため、責任の所在が曖昧になりがちなことが原因です。まずは自社の推進レベルに応じて、明確なオーナーシップを定義する必要があります(図表1)。
図表1:役割分担・責任所在に関する課題(例)と原因
この定義にあたっては、「データとプロセスの違い」、そして「ソースデータと集計データの違い」という2つの観点が重要となります。ソースデータは各ビジネスオペレーション部門が、集計データや報告プロセスはサステナビリティ部門が、それぞれ責任を担うべきです。
企業ごとに実組織の体制や役割分担は異なりますが、こうした原則に基づいて体制/役割を構築することで、サステナビリティ経営の実効性が高まります。特に、経営マネジメントに生かすための集計データは、計画やモニタリングと密接に関わるものであり、そのリーダーシップを誰が担うかが今後の鍵となるのです。
サステナビリティ指標の真価は、単なる報告ではなく「経営への活用」にあります。企業が持続可能な成長を目指すには、これらの指標を経営戦略と連動させ、価値創造の手段として位置付ける必要があります(図表2)。
サステナビリティ経営を実現するには、企業内外の施策をマネジメントする体制が不可欠です。個別部門に任される領域もあるが、多くは関連部門の協働によって推進されます。
図表2:経営マネジメントプロセス(イメージ)
これらを統合的に管理するためには、組織横断的な統制と役割分担が求められます。その基本的な推進体制は次のようになります(図表3)。
このような体制を整えることで、サステナビリティ指標を経営の中核に位置付けていくことができます。
図表3:サステナビリティ経営の推進体制(イメージ)
価値創造に向けて、サステナビリティ指標を経営戦略と連動させた真のサステナビリティ経営を実現するには、CSOが経営企画の一翼を担い、戦略策定段階から積極的に関与することが不可欠です。加えて、CFOと連携し、サステナビリティ活動と財務成果の因果関係を管理会計の枠組みで可視化し、財務・非財務の統合的な意思決定を可能にする体制が求められます。さらに、CDO/CIOが加わることで、ESG関連データの収集・統合・品質管理が高度化され、意思決定の精度とスピードが飛躍的に向上していきます(図表4)。
この三位一体の体制が確立されれば、サステナビリティ活動はCSRや広報的な取り組みを超え、企業の競争力強化に直結する流れを作れます。例えば、気候変動リスクへの対応がサプライチェーン戦略に影響を与えるなど、サステナビリティ指標は経営の意思決定に深く関わるようになります。指標づくりにおいては、サステナビリティ活動の成果を定量的に示すことが必要となるため、PwC Japanグループの「インパクトパス」などの手法を活用することが有効になります。
この取り組みは、投資家やサステナビリティ説明責任を果たす上でも重要であり、統合報告の信頼性向上にもつながります。サステナビリティ指標が経営の言語として機能する体制こそが、持続可能な企業経営の基盤となるのです。
図表4:経営企画・実行管理の具体的な役割分担
サステナビリティ経営において監査部門は、サステナビリティ情報の信頼性を高めるだけでなく、企業の持続可能な施策が適切に行われているかを確かなものにするための、経営陣や利害関係者に対する「経営に直結する監査」がより重要視されます。監査には、大きく分けて法定監査と内部監査の2つの側面があります(図表5)。
法定監査と内部監査の効果的な連携を通じて、企業のサステナビリティデータの活用を一体化し、持続可能な未来への歩みを加速させることが重要です。
図表5:サステナビリティ情報にかかわる法定監査と内部監査の主な論点
しかし、このような理想的な体制構築には、乗り越えるべき壁が存在します。
第一の壁は、サステナビリティ指標の抽象性と定量化の難しさです。CO₂排出量や人的資本の状況などは数値化できても、それが企業価値にどう影響するかを説明するのは容易ではありません。結果として、経営層との対話が表層的になり、戦略的議論に発展しづらい状況を起こします。
この壁を乗り越えるには、サステナビリティ指標の「意味付け」と「価値への変換プロセス」を明確にする必要があります。例えば、インパクトパスやサステナビリティフレームワークを活用し、サステナビリティ活動が財務成果にどう結びつくかを可視化することで、経営層との対話の質を高めることができます。また、KPIの設計段階で、定性的な指標に対しても評価基準やスコアリングを導入することで、戦略的議論の土台を整えることが可能となります。
第二の壁は、社内の分断です。サステナビリティ部門が報告義務に追われ、経営企画や財務部門との連携が希薄なままでは、サステナビリティデータが経営判断に生かされる機会を逸することが多くなってしまいます。
この壁を乗り越えるには、部門横断の推進体制を構築することが不可欠です。CSOを中心に、CFO、経営企画、IT、事業部門など関係する全部門が連携する「サステナビリティ推進会議」や「統合経営委員会」のような場を設け、情報の共有と意思決定の一体化を図るべきです。また、データガバナンスの観点から、非財務情報の収集・管理・活用に関する共通ルールや責任分担を明文化することは、分断の解消につながっていくでしょう。
第三の壁は、世間との認識のずれにあります。サステナビリティは「理想論」や「コスト要因」と見なされがちで、短期的な利益を重視する風潮の中では軽視される傾向があります。これにより、社内での優先順位が下がり、経営資源の配分も限定的になってしまいます。
この壁を乗り越えるには、サステナビリティの取り組みが企業価値や競争力に直結することを、社内外に向けて継続的に発信する必要があります。統合報告書やIR資料において、サステナビリティ指標と財務成果の関係性を具体的に示すことで、投資家や経営陣の理解を促進できます。また、社内教育やエグゼクティブ向けワークショップを通じて、サステナビリティの本質的な意義を浸透させることも有効な施策です。
サステナビリティ経営の実現には、サステナビリティ指標を財務的成果と結びつけるストーリーを描き、経営層やステークホルダーとの共通言語として再定義することが求められます。まずは、CSOとCFOが連携し、戦略と会計の両面から非財務情報を統合的に扱う体制を築くこと、その上でCDO/CIOの協力の下でデータ管理と活用が可能なデジタル基盤を用いたオペレーションを構築することこそが、持続可能な企業経営への第一歩となるのです。
これまで全4回にわたり、価値創造に向けて今後必要となるサステナビリティデータガバナンスの取り組みの方向性を述べてきました。目下の課題である開示対応からいち早く抜け出すにも、今こそサステナビリティを経営の中心に据え、持続可能な未来に向けた一歩を踏み出す時であると考えます。PwCはその取り組みを推進する各種サービスで、クライアントの成功を支援します。
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