全世界で強化が進むプラスチック関連の法規制

現状と今後の動向予測を踏まえ、日本企業が取るべき対応とは

  • 2026-02-27

はじめに

企業活動においてサステナビリティが重視されるようになり、ESGリスクにどう備えるかが世界共通での課題となっています。その中でも早くから問題視されてきたのがプラスチックごみです。現在、海洋プラスチック汚染や健康被害の深刻化、石油資源の枯渇への懸念といった課題を背景に、世界的な規制強化が進んでいます。

海洋プラスチックごみは総量で1億5,000万トン、毎年800万トンが新たに発生していると言われ、2050年にはプラスチックごみが魚の総重量を上回るとの予測もあります(※1)。海洋プラスチックごみのうち8割以上は、陸上で発生し不適切な処理やポイ捨てにより流出したものであり、海へと流れ出たプラスチックごみは、海洋生物による誤飲や接触事故を引き起こし、生態系に悪影響を及ぼしています。

生態系への悪影響に加え、最終処分でプラスチック製品を燃焼した際、プラスチックごみに混入した汚染物質が健康被害を引き起こすという人への悪影響も発生しています。

また、プラスチックの原料である石油の埋蔵量が減っていることから、企業はプラスチック製品の削減や、リサイクルやリユースなどによるプラスチック廃棄物の削減などの対応策を講じることが求められています。

こうした背景を踏まえ、本コラムでは世界各国・各地域におけるプラスチック関連の法規制の現状を紹介するとともに、今後の動向を予測し、国内事業者への影響とその対応策について概観していきます。

※1:WWF, 2018. https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html(2026年2月6日閲覧)

有害廃棄物の国際間移動について定めたバーゼル条約

プラスチックごみによる環境への影響は早くから指摘されていましたが、ヨーロッパ先進国からアフリカを中心とした発展途上国へのプラスチック廃棄物の移動が深刻な課題として顕在化したのが1980年代です。その後、プラスチック以外にも世界的に有害廃棄物への懸念が強まる状況の中、UNEP(国連環境計画)が中心となって1989年に「バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関する条約)」が採択されました。本条約は1992年に発効され、その名称が表すように有害廃棄物全般を規制対象としています。日本は発効翌年の1993年に加盟し、2024年2月時点では191の国・地域・機関が加盟しています。各国は、本条約へ加盟することにより、条約内容を担保する国内法を制定・改正する必要があります。

バーゼル条約では、有害廃棄物の拡散を防ぐため、以下のような禁止事項や手続き上のルールが定められています。

  • バーゼル条約で特定する廃棄物の輸出には、輸入国の書面による同意が必要
  • 締約国は国内における廃棄物の発生を最小限に抑え、廃棄物の環境上適正な処分のため、可能な限り国内の処分施設が利用できるよう努めることが必要
  • 非締約国との廃棄物の輸出入の原則禁止
  • 廃棄物の運搬及および処分は、許可された者のみ可能
  • 国境を越える廃棄物の移動には、条約の定める適切な移動書類の添付が必要
  • 廃棄物の国境を越える移動が契約どおりに完了することができない場合、輸出国が当該廃棄物の引き取りを含む適当な措置を実施

これらの条項を見ると、廃棄物の発生から移動、最終処分まで、さまざまな規制を設けていることが分かります。本条約は、2019年の改正を機に特定有害廃棄物にプラスチックごみが正式に追加されました。これにより、本条約に加盟している各国の国内法についても、規制対象にプラスチックごみを追加することが求められることとなりました。

日本におけるプラスチック規制に関連する国内法

日本では、バーゼル条約を締結する前の1971年から、特定有害廃棄物の規制について定めた「廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)」がありましたが、バーゼル条約加盟を機に「バーゼル法」も施行しています。この廃棄物処理法とバーゼル法の2つが、日本のプラスチック規制に関連する大きな国内法になります。この2つの法規制について見ていきましょう。

まず、廃棄物処理法について解説します。規定内容は、廃棄物を「産業廃棄物(20分類)」とそれ以外の「一般廃棄物」で区別し、廃棄物の処理や清掃に関してルールを定めるというものです。

具体的には以下のような規制があり、違反すると場合によっては懲役もしくは罰金・併科が課せられます。

  • 事業活動に伴って生じた産業廃棄物を排出する際、事業者自身が処理するかほかの業者に委託すること
  • 廃棄作業を外部に委託する場合は、委託契約書の締結、マニフェストの交付と5年間の保存、廃棄物処理が適切に行われているかどうかの確認、年に1度の都道府県知事への報告を行うこと

さらに2025年の改正により、最終処分だけでなく、処分工程や各工程での処分量なども報告義務項目に追加されることが決まり、2026年から順次施行される予定となっています。

続いて、バーゼル法について解説します。内容については、前述したバーゼル条約が求める要求事項を日本の法規制に落とし込んだもので、輸出入の申請手続きについても規定されています。違反時は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金・併科が課されます。

バーゼル条約において、有害廃棄物にプラスチックごみが追加される改正があったことに触れましたが、日本のバーゼル法もこれを反映させる改正を2025年に実施しています。

海外のプラスチック関連法規制の動向

プラスチックごみに関連する法規制の強化は世界的な潮流です。以下に、2022年以降の海外の動向にフォーカスして、プラスチック製品に関する主な動向をまとめました(図表1)。

図表1:2022年以降の海外のプラスチック関連法規制の動向

この表の示すとおり、流通だけでなく生産から廃棄プロセスまでが各国・各地域で規定され始めていることが分かります。また、タイやミャンマーのように、これまで先進国の廃棄物を受け入れていた側の国においても規制が進んでいる点は押さえておきたいポイントです。

近年で注目度の高かった動向に、EUの「PPWR(包装および包装廃棄物規制)」があります。この法規制は、プラスチックを原料とする包装廃棄物について、PPWRで規定されている持続可能性要件を満たしていなければEU域内での流通ができなくなるというものです。EU域内外の事業者がEU域内でバリューチェーンを広げる場合、PPWRへの対応なしには事業を継続・拡大できなくなるという厳しい規制内容になっています。

※PPWRについての内容や、PwCコンサルティングが提供できる対応策については、こちらのコラムに詳細をまとめておりますのでご参照ください。

さらに、2022年より以前に施行された海外の法規制の中で、日本企業に関係の深いものを2つ挙げて説明します。

1つはEUの「SUP(使い捨てプラスチック)指令」です。これは、プラスチック製カトラリーの販売禁止や、飲料カップなどのプラスチック含有マークの表示義務、製造者による製品の回収・処理費用の負担などを定めた規制です。また、ペットボトルの再生プラスチック平均含有量の将来的な到達目標を定め、2025年以降は25%、2030年以降は30%以上にとしています。

もう1つは中国の「固形廃棄物法」です。こちらは2020年の改定で、固形廃棄物の輸入や使い捨てプラスチックの使用を禁止するとともに、使い捨てプラスチック製品の使用やリサイクルについて、小売業者から当局への報告が義務化されています。

世界的なプラスチック関連法規制への対応事項とPwCコンサルティングの支援(図表2)

ここまで見てきたように、プラスチックごみ関連の法規制は、各国・各地域で整備状況や要件が異なるため、事業者は自社の事業の展開先や展開予定先の現状把握と今後の動向の予測が非常に重要です。また、こうした規制は定期的に改正され、要件がさらに複雑化することが想定されるため、各法規制へ正確かつ迅速に対応するためには、柔軟なバリューチェーンの構築と運用が欠かせません。しかし、自社事業だけでなくサプライチェーン全体を管理できている企業は極めて少ないのが現状です。プラスチック関連法規制への対応は、単純な要件整理や要件への対応ではなく、サプライチェーン上の全プロセスの見直し・再構築まで求められる複雑な課題だと言えます。さらに、各国の法規制に適切に対応するためには、必要となる各種書類を不備なく作成する必要があるなど、日本企業は難易度の高い多くの対応が求められています。

図表2:日本企業に求められる対応、およびPwCによる支援概要

PwCではこうした現状把握や今後の予測についてグローバルネットワークを活用して、世界各国の法規制を含む外部環境の把握や今後の動向予測を実施することが可能です。

抜本的な課題となるサプライチェーンの見直しについては、国や業界を問わずサプライチェーン全体を対象としたデューデリジェンスを支援します。具体的には、自社事業やサプライヤーの現状等を踏まえて、各国・各地域の法規制が事業へ与えるビジネスインパクトを特定・評価し、対応すべき課題の優先度付けを行います。その後優先度の高い課題から、ビジネスインパクトや各社の事業戦略・業務内容等を考慮した、実現可能性の高い対応策を検討します。これらの対応策の検討だけでなく、実行までを含めた包括的な支援をワンストップで提供します。

また、必要書類の作成も、要求事項や必須の記載事項などを整理した上で、根拠となる数値データの算出も含めてサポートします。

図表3:サプライチェーンデューデリジェンスの支援ステップ例

支援例

食品小売企業の包装最適化支援では、包装資材や包装設計に関する専門家とともに工場を訪問し、サプライチェーンの実情を正確に理解した上で、食肉製品の包装の最適化を検討・実施しました。その結果、在庫管理単位あたり約15トンのプラスチック削減だけでなく、個包装単位で最大30%のコスト削減を実現しました。

おわりに

プラスチックをはじめとする廃棄物について、海外企業との輸出入や他社への処理委託をしている日本企業は少なくありません。本コラムで解説したとおり、国内外で法規制が進んでいる現状を踏まえると、今後の自社の事業継続や成長のためには、事業展開先の国・地域ごとの法規制を正確に把握し、ビジネスインパクトを考慮した優先順位付けを行うとともに、それに沿った対策が必要です。

企業が対応すべき課題は多く、対応事項の洗い出し、プラスチック製品のライフサイクルに関わるサプライチェーンの管理・見直しに加え、調達先や廃棄先といったステークホルダーに対するアプローチなど、今後も複雑化することが考えられます。従って、まずは対応の必要性を認識し、事業に悪影響を及ぼす前に具体的な対応を進めることが重要です。

執筆者

山崎 幸一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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北崎 陽三

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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青山 紗弓

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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