欧州で製品を販売する企業や輸出企業は早めの対応を

包装および包装廃棄物規制(PPWR)にどう備えるべきか?

  • 2025-06-05

はじめに

EUは2025年1月、包装材のリサイクル率のさらなる向上と、包装廃棄物のさらなる削減を目的とする「包装および包装廃棄物規制(PPWR)」を公布しました。

プラスチック資源の浪費や、プラスチックごみの増加が環境にもたらす悪影響は、年々深刻さを増しています。EU域内においても、プラスチックを原料とする包装廃棄物の著しい増加と、環境への悪影響が大きな問題となっており、現行の法規制では効果が不十分であるとの判断からPPWRが採択されました。

自社が生産・製造・流通・販売する包装・包装材について、PPWRで規定されている持続可能性要件を満たしていない、あるいは適合宣誓書の作成を遵守しない場合には、EU域内での製品販売や域内への輸出が一切禁止されます。そのため、EU域内にバリューチェーンを広げる域内外の事業者が事業を継続・拡大するには、PPWRへの対応が必要不可欠です。

本コラムでは、PPWRの内容およびタイムラインと、日本企業が対応すべきポイント、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)による支援サービスについて解説します。

これまでの規制の流れとPPWRのタイムライン

EUにおける包装全般に関わる規制は、1994年の包装廃棄物指令(PPWD)に始まりました。2000年代に入ると、食品接触材(FCM)に対象を絞った枠組み規則(2004年)、FCM適正製造(GMP)規則(2006年)、材料別規則(2005~2011年)などが制定され、少しずつルールが厳格化、複雑化していきます。

そして2024年、PPWDに代わる規制としてPPWRが採択され、2025年1月に公布されました。今後は、2025年夏から2027年末にかけて委任立法で要件の詳細が策定され、決まった要件については、2026年8月から適用が開始される予定です。

日本国内の事業者に求められる対応

ここまで、PPWRの概要を見てきましたが、日本国内の事業者はどのように対応していけばいいのでしょうか。

  1. 現状把握:製造・加工・流通・販売・廃棄している包装材やその原材料、廃棄量、リサイクル率などを一覧化
  2. バリューチェーン全体における包装材の最適化:原材料のサプライヤー、製造・加工企業、販売企業、リサイクル企業などのバリューチェーン全体を対象として、「持続可能性要件」に適合するよう包装材を改善
  3. 「適合宣言書」の作成:製造・加工・販売している包装材がPPWRに適合していることを科学的根拠に基づいて明示できる仕組みを構築、有効な「適合宣言書」を作成

以上がPPWRへの対応策ですが、難易度が高いことに加え、自社の事業活動だけでなく、バリューチェーン全体の調査、課題分析、改善が求められるため、対応を終えるまでには長い時間を要します。対象製品にもよりますが、半年から1年程度の時間は要するとみておくべきです。すでに2026年8月から適用が開始されるというタイムラインが決まっていることから、なるべく早く対応準備を進めておくことが大切です。

また、さらに先を見据えて、包装材のリサイクルグレード(リサイクル可能な原材料の割合に基づく等級)やリサイクル材の含有率の改善を図っておくことが求められます。2030年以降、拡大生産者責任により、EU域内で販売される製品に使用される包装材にリサイクル費用が発生することが予定されており、2030年までに改善を図ることで、リサイクル費用の最小化が期待できます。

図表2:日本国内の事業者に求められる、包装および包装廃棄物規制(PPWR)への対応事項とPwC支援

おわりに

PwCコンサルティングは、国内外を問わないあらゆるい業界の支援、そしてコンサルティング・リーガル・アシュアランスなど、多様な専門領域における支援実績があり、PPWRへの対応を迫られている国内の事業者向けにも多彩な支援サービスを提供しています。

まず、現状把握と改善については、当社がこれまで数多く手掛けてきたバリューチェーン全体を最適化するノウハウを駆使しながら、課題の特定や原因分析、「持続可能性要件」を満たす改善案の提示、バリューチェーン上の子会社・取引先を含めたPPWRへの理解醸成、改善案の実施に至るまで、トータルな支援が可能です。

また、科学的根拠が求められる「適合宣言書」の作成には専門的な知識が必要ですが、国・業界・専門領域を問わず蓄積したPwCメンバーの知見を活用し、各事業会社の事業内容・事業規模・事業拠点などに合わせた支援が可能です。

さらに、2030年以降、EU域内で販売される製品に使用される包装材にリサイクル費用が発生することへの対策として、リサイクルグレードの改善や、リサイクル材の含有率を向上させるための支援も提供できます。

PPWRの適合開始まで1年余りと、すぐ先に迫っています。地球環境のみならず、EU域内における自社のビジネスを持続可能にするため、出来るだけ早く対策を始めることをお勧めします。

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執筆者

北崎 陽三

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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青山 紗弓

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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