{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
EUは2025年1月、包装材のリサイクル率のさらなる向上と、包装廃棄物のさらなる削減を目的とする「包装および包装廃棄物規制(PPWR)」を公布しました。
プラスチック資源の浪費や、プラスチックごみの増加が環境にもたらす悪影響は、年々深刻さを増しています。EU域内においても、プラスチックを原料とする包装廃棄物の著しい増加と、環境への悪影響が大きな問題となっており、現行の法規制では効果が不十分であるとの判断からPPWRが採択されました。
自社が生産・製造・流通・販売する包装・包装材について、PPWRで規定されている持続可能性要件を満たしていない、あるいは適合宣誓書の作成を遵守しない場合には、EU域内での製品販売や域内への輸出が一切禁止されます。そのため、EU域内にバリューチェーンを広げる域内外の事業者が事業を継続・拡大するには、PPWRへの対応が必要不可欠です。
本コラムでは、PPWRの内容およびタイムラインと、日本企業が対応すべきポイント、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)による支援サービスについて解説します。
PPWRは、「食品に限らず、全ての包装廃棄物削減に向け、包装廃棄物の発生を削減し、包装材のリサイクルを推進すること」を目的に制定された、EUの新たな法規制です。規制の成果として、1人あたりの包装廃棄物の削減量(2018年比)を2030年までに−5%、2030~2035年に−10%、2035~2040年に−15%とする目標を掲げています。
また、EU域内における包装材のリサイクル率については、2025年までに包装全般で65%、紙・段ボールで75%、プラスチックで50%とする目標です。さらに、2030年までには包装全般で70%、紙・段ボールで85%、プラスチックで55%と、段階的に目標とするリサイクル率を引き上げます。
では、なぜEUはPPWRを公布したのでしょうか?
それは、EU域内における包装廃棄物の量が、現行の法規制では抑えきれないほど増え続けているからです。2021年時点のEU域内における包装廃棄物の量は8,400万トンと、2010年比で24%も増加しました。このままのペースだと、2030年にはさらに19%増加し、約1億トンの大台を突破することが見込まれます。
包装廃棄物を減らすためには包装材のリサイクル率を高め、「捨てられず、再利用される材料」を増やすのが有効です。ところが、包装廃棄物が急激に増えた結果、現行の法規制が定めるリサイクル率では、包装廃棄物の増加ペースをとても抑えきれなくなりました。
そこで、現行の法規制よりも包装廃棄物の削減目標を高め、同時に包装材のリサイクル率の目標も高めに設定したPPWRが公布されることになったのです。
PPWRが公布されたのは、EUのみならず、世界が直面する慢性的な環境負荷の低減が大きな狙いであることは言うまでもありません。EU域内では、紙資源使用量の約50%、プラスチック資源使用量の約40%が包装材として使用されています。包装材を減らし、リサイクル率を高めることは、資源浪費の大幅な抑制にもつながります。
また、EU域内で出る海洋廃棄物の約50%は包装材であり、これを減らすことは海洋汚染の防止や海洋生物の保護にも結び付きます。さらに、包装材の生産・処分などから生じるCO2排出量は中規模のEU加盟国の排出量と同等のため、リサイクル率の向上は地球温暖化対策にも一定程度寄与することが期待されます。
EUにおける包装全般に関わる規制は、1994年の包装廃棄物指令(PPWD)に始まりました。2000年代に入ると、食品接触材(FCM)に対象を絞った枠組み規則(2004年)、FCM適正製造(GMP)規則(2006年)、材料別規則(2005~2011年)などが制定され、少しずつルールが厳格化、複雑化していきます。
そして2024年、PPWDに代わる規制としてPPWRが採択され、2025年1月に公布されました。今後は、2025年夏から2027年末にかけて委任立法で要件の詳細が策定され、決まった要件については、2026年8月から適用が開始される予定です。
PPWRの要件には、EU加盟国向けのものと、事業者向けのものがあります。EU域内で製品を販売する事業者や、製品を輸出している企業が対応しなければならないのは、事業者向けの要件です。事業者向けの要件は多岐にわたりますが、特に留意すべきなのは、下図の7つの「持続可能性要件」です。
図表1:包装および包装廃棄物規制(PPWR)の主な要件
持続可能性要件:①有害物質の使用規制/②リサイクル可能な包装/③プラスチック包装の最低リサイクル含有割合/④プラスチック包装におけるバイオベース原料/⑤堆肥化可能な包装/⑥包装の最小化/⑦再利用可能な包装
この7つを含む全要件の詳細については、先ほども述べたように、2025年夏から2027年末までの間に順次策定されます。EU域内での製品販売や、域内への製品輸出を行っている事業者は、今後発表される要件の詳細を速やかに把握し、あらかじめ対策を打っておくことが必要です。
さらに、PPWRは各要件を遵守し、その要求基準を満たしていることを科学的根拠とともに証明する「適合宣言書」の作成も義務付けています。包装が要件を満たしていない場合や、「適合宣言書」を作成しない場合は、EU域内での製品販売や域内への輸出が禁止されるため、確実な対応が求められます。
PPWRが「適合宣言書」の作成において科学的根拠を求めているのは、昨今、根拠もなく「環境に優しい製品」であることをアピールする「グリーンウォッシュ」が世界的な問題となっていることが背景にあります。
EUの政策執行機関である欧州委員会は、「グリーンウォッシュ」対策として、企業が環境主張を行う際に第三者による検証結果を求める「欧州グリーンクレーム(環境主張)指令案」を発表しています。今後の発令に対応するためにも、科学的根拠に基づいた「適合宣言書」の作成が求められます。
ここまで、PPWRの概要を見てきましたが、日本国内の事業者はどのように対応していけばいいのでしょうか。
以上がPPWRへの対応策ですが、難易度が高いことに加え、自社の事業活動だけでなく、バリューチェーン全体の調査、課題分析、改善が求められるため、対応を終えるまでには長い時間を要します。対象製品にもよりますが、半年から1年程度の時間は要するとみておくべきです。すでに2026年8月から適用が開始されるというタイムラインが決まっていることから、なるべく早く対応準備を進めておくことが大切です。
また、さらに先を見据えて、包装材のリサイクルグレード(リサイクル可能な原材料の割合に基づく等級)やリサイクル材の含有率の改善を図っておくことが求められます。2030年以降、拡大生産者責任により、EU域内で販売される製品に使用される包装材にリサイクル費用が発生することが予定されており、2030年までに改善を図ることで、リサイクル費用の最小化が期待できます。
図表2:日本国内の事業者に求められる、包装および包装廃棄物規制(PPWR)への対応事項とPwC支援
PwCコンサルティングは、国内外を問わないあらゆるい業界の支援、そしてコンサルティング・リーガル・アシュアランスなど、多様な専門領域における支援実績があり、PPWRへの対応を迫られている国内の事業者向けにも多彩な支援サービスを提供しています。
まず、現状把握と改善については、当社がこれまで数多く手掛けてきたバリューチェーン全体を最適化するノウハウを駆使しながら、課題の特定や原因分析、「持続可能性要件」を満たす改善案の提示、バリューチェーン上の子会社・取引先を含めたPPWRへの理解醸成、改善案の実施に至るまで、トータルな支援が可能です。
また、科学的根拠が求められる「適合宣言書」の作成には専門的な知識が必要ですが、国・業界・専門領域を問わず蓄積したPwCメンバーの知見を活用し、各事業会社の事業内容・事業規模・事業拠点などに合わせた支援が可能です。
さらに、2030年以降、EU域内で販売される製品に使用される包装材にリサイクル費用が発生することへの対策として、リサイクルグレードの改善や、リサイクル材の含有率を向上させるための支援も提供できます。
PPWRの適合開始まで1年余りと、すぐ先に迫っています。地球環境のみならず、EU域内における自社のビジネスを持続可能にするため、出来るだけ早く対策を始めることをお勧めします。
{{item.text}}
{{item.text}}