
自動・自律化したドローンによる業務効率化事例の分析
ドローンの自動・自律化に伴い、農業、点検、土木・建築などのサービス分野でのドローン活用が広がる見込みです。自動・自律化したドローンが取得したデータを業務で活用し効果を発揮した先進的な事例を紹介し、取り組みにおける課題や今後の展望を考察します。
2020-11-18
人手で実施するには非効率な作業や人が容易に立ち入れない危険なエリアでの作業の省人化・デジタル化推進のツールとして、ドローンが注目されています。ドローンを活用したビジネスの市場は今後、急激に伸びると想定されていますが、同時に、法規制が整備途上にあることが活用を阻害する代表的な要因として挙げられています。例えば日本においては、操縦者の目視で見える範囲かつ第三者が不在のエリアでのみドローンの飛行が限られるという規制が存在します。そのため、利活用がなかなか促進されないのが実情です。
しかしながら、2022年を目途に大きな規制改正が見込まれています。国土交通省と経済産業省は、「無人航空機の目視外及び第三者上空等の飛行の検討」をテーマにした官民協議会を開催しています。そこでは、飛行の実現に必要となる制度の設計のために、機体の仕様や運用などに関するリスクをもとに適切な安全対策を適用する「リスクベースのアプローチ」や、将来的に技術の活用が可能となるよう安全基準を策定していく「パフォーマンスベースのアプローチ」の活用も視野に入れており、機体の安全性や操縦者の技能、運航管理機能がリスクレベルに合わせて適切であるかを評価する仕組みが検討されています*1。
また、機体の登録認証制度、操縦ライセンス(技能証明)ならびにその他の各ユースケースに紐づいた制度整備も進められており、技術の進化に合わせた制度整備によって、ドローンをはじめとする小型無人機の活用が今後、急速に進むことが想定されます。
ドローンは3次元での移動が可能なことから、2022年以降、広域での測量や調査、都市部の橋梁や建物などの点検や設備の監視、物の輸配送など、ニーズのあるエリアでの活用が広がると想定されます。さらに昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による社会環境の変化により、遠隔での作業やデリバリーなどでの活用も見込まれます。
遠隔での作業の例として、最近では遠隔医療診断などが実施され始めていますが、こうした事例はさらに増えることでしょう。デリバリーについて言えば、非対面での荷物・商品受け取りを指す「置き配」のサービスをデフォルトにしている宅配業者やピザチェーン増加しています。ドローンへの規制が緩和されれば、必要な医療キットを患者へ届けたり、オンラインで注文した商品を空輸したりといった活用のされ方が現実になると想定されます。非対面サービス市場が拡大する昨今の風潮も相まって、ドローンを活用するフィールドは今後、飛躍的に伸びると考えられます。
ここからは、世界におけるドローンの規制に関する動向を見ていきましょう。米国のある配送会社は、COVID-19の影響でアメリカ連邦航空局(FAA:Federal Aviation Administration)の協力を得て、当初の予定を前倒しして、限定されたエリアでドローンを活用した事業を開始しました。COVID-19の感染拡大を防止するため、FAAは数週間という異例の早さでドローンの使用を許可したのです。とはいえ、現在のドローン運航許可は、緊急医療用のための一時的なものであり、今後2年をかけて商業用ドローン運営の制度を整備し、最終的には患者の自宅に直接ドローンで宅配ができることを目指しています。またFAAは、有人航空機と無人航空機の両方の安全を確保しながら空域を統合するといった検討も進めています。
次に欧州です。欧州の企業は、EU全体で施行されるドローン規制に準拠するための活動に取り組んでいます。EU航空管制機関が策定した新しいドローン規制は、欧州のドローン業界に多くの影響を与えています。新しい規制の基準は3つあります。まず、2020年7月1日に無人航空機(UAV)オペレーターと認定ドローンの登録が義務付けられました。次に、UAVには3つのカテゴリー(「オープン」、「認定」、「特定」)が分類に適用されます(図表1)。分類は2020年7月1日までに実施され、EU加盟国は2021年7月1日までに規制に則った新システムへの転換を行う必要があります。またオープンカテゴリーで実施される業務であっても、2022年7月1日までは今回の規制に従う必要があります。業務用途ではないドローンに関連する協会やホビードローンを扱うクラブは、欧州航空安全機関(EASA)による承認を受ける必要があります。オペレーターとメーカーは、新しいEU規制の枠組みに準拠することが不可欠であり、そうしない場合は罰金が科せられる可能性があります。 各国の航空規制当局は、規制の実施に関してEASAと協力し、施行の責任が完全にEASAに移る2022年までに、プロセス全体に対して責任を負うことを期待されています。
特にCOVID-19の影響で不確実性が高い時期での決定ゆえ、「過剰規制ではないか」といった声が加盟国の議会、機関、省庁で聞かれ、内容についても広く議論されています。EU規制が市場の発展を妨げる可能性がある、との解釈も少なからず存在するようですが、EASAの規制の枠組みは、EUのドローンビジネスの競争市場を平準化するだけでなく、公正な事業化を可能にする方向性を定めた、と筆者は考えます。
最後に日本です。COVID-19による社会環境の変化で、ドローンを活用したビジネスへのニーズは高まっているものの、課題は山積しています。有人地帯での目視外飛行に向けて、機体を動態管理するリモートID付与の検討が進められる一方、サイバーセキュリティや取得データに対するプライバシーの保護、トラブル発生時の責任分担など、検討すべき課題は少なくありません。また、今後さらに増えるユースケースに対する個別検討も必要となってくるでしょうから、ドローンビジネスに従事または参入を検討する企業においては、今後の制度整備の動向に注視する必要があります。
ドローンの自動・自律化に伴い、農業、点検、土木・建築などのサービス分野でのドローン活用が広がる見込みです。自動・自律化したドローンが取得したデータを業務で活用し効果を発揮した先進的な事例を紹介し、取り組みにおける課題や今後の展望を考察します。
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