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写真右:鶴見 一裕 氏 大阪市デジタル統括室長CDO補佐監、CIO/CISO
同左:綾部 泰二 PwC Japan有限責任監査法人上席執行役員 リスク・アシュアランス部 部長
人口減少や2050年問題、Society5.0といった社会的課題を背景に、国・自治体のデジタル政策の転換期において、大阪市は「大阪市DX戦略(Re-Design おおさか)」を掲げ、自治体DXの先行事例となることを目指しています。本対談では、大阪市デジタル統括室の鶴見氏をお招きし、大阪市とPwC Japan有限責任監査法人で実施した「AIガバナンス」アセスメント*を踏まえて、大阪市のDX戦略とAI活用の現状にはじまり、データガバナンスや国・府/県・市町村それぞれの役割分担、人材育成や組織文化の変革、そして急速に進化するAI技術に対する自治体のAIガバナンスのあり方など多岐にわたる観点から、AI活用を加速させる上での課題について議論しました。
* 2026年2月26日 ニュースリリース
「PwC Japan監査法人と大阪市、「AIガバナンス」アセスメントを実施し、「AI戦略」「管理・推進体制」「データ」整備の重要性を提言」
PwC 金嶋:
日本全体、そして地方自治体としても、2050年問題やSociety5.0の取り組みなど対応すべき課題のほとんどは、国の政策や多くの関係者を巻き込んだ連携が求められています。そうした点を踏まえて、大阪市DXの取り組みについてお聞かせいただけますでしょうか。
大阪市 鶴見氏:
まず、大阪市のDX戦略についてご説明します。大阪市では2023(令和5)年3月に「Re-Design おおさか~大阪市DX戦略~」を策定・発表し、現在はその戦略に基づいて取り組みを進めています。
大阪市にはこれ以前にも、ICT戦略などIT・デジタルに関するさまざまな戦略が存在しましたが、今回のDX戦略は、文字どおりデジタルトランスフォーメーション(DX)を目的とした戦略です。従来のようなテクノロジー偏重ではなく、テクノロジーやデータを活用して、行政サービスや市役所の業務、組織運営そのものをどう変革していくか、という視点から策定した点に特徴があります。
この戦略に基づき、現在さまざまな取り組みを進めています。総論としては、まずデータやデジタル技術の活用を前提とし、その上に、サービス利用者の目線から、大阪市のまち・地域のあり方やサービス、行政のあり方を総合的に再デザインすることで、社会環境の変化にも的確に対応していくことを目指しています。
そしてその先に、大阪市で生活される方々や、経済活動を行っておられる事業者の皆さまが、それぞれの幸せ、つまりウェルビーイングを実感できる都市へと発展させるため、DXを推進しているところです。
具体的な政策としては、「サービスDX」「都市・まちDX」「行政DX」という3つの観点から取り組みを進め、総合的に市民のQoLと都市力の向上を図りたいと考えています。
2050年問題との関係で言えば、そもそも戦略を策定した背景には、人口減少が大きな要素としてあります。人口減少に伴い、さまざまな社会変化が想定されますが、行政組織の職員数や組織規模も一定程度縮小せざるを得ないと考えています。その中でも、インフラの維持管理や災害時の対応を含め、よりコンパクトな体制で高度な行政サービス水準が求められると想定しており、それを実現するための戦略としても位置付けています。
国の提唱するSociety5.0についても、我々の戦略の少し前に示されたと記憶していますが、テクノロジーとフィジカルが高度に融合し、社会課題の解決を進めるという点では、まさに我々の取り組みはそのコンセプトに沿った戦略・取り組みであると認識しています。
また、国のさまざまなデジタル政策との関係について言うと、自治体にとって大きなテーマの一つが、自治体システムの標準化です。住民サービスなど、どの自治体でも主要となる業務について、これまでは自治体ごとにシステム開発・整備を行ってきましたが、データフォーマットや業務プロセスを標準化し、自治体の規模に応じたいくつかの共通システムを共同で利用する方向が示されています。
これは、先ほどお話しした人口減少などの課題も踏まえると、非常に有意義な取り組みだと考えており、大阪市としてもその方針に沿って進めているところです。
いずれにしても、社会変化や人口減少といった環境変化に的確に対応していくためには、日本全国の自治体がDXを通じて、自らを変化させていくことが非常に重要だと考えています。大阪市としても、その点において一つのリーディング自治体として、取り組みを進めていきたいと思っています。
写真右:鶴見 一裕 氏
同左:金嶋 義貴 PwC Japan有限責任監査法人リスク・アシュアランス部 シニアマネージャー
PwC 金嶋:
もう1点お伺いします。「Re-Design おおさか」で進めるさまざまな取り組みの中には、AI活用も含まれていると理解しています。
AIがDXにどのように寄与し、DXをどう加速させていくのかという観点から、大阪市でのAIへの取り組み方針や全体像についてお聞かせいただけますでしょうか。
鶴見氏:
AI、とりわけ生成AIについては、ビジネス利用が本格化したのはここ2年ほどだと認識しています。我々がDX戦略を策定した当時は、まだこのテクノロジーが一般的な認知を得る前でした。その後、対話型の生成AIが提供されるようになり、これが今、グローバルレベルでも「これから本格的なAI時代に入っていく」と言われるほどのテクノロジーになっています。そのインパクトは、インターネットやスマートフォンの登場と同等か、それ以上であると評されおり、AIは、DXを進めるうえで、当初想定していた以上の変革を実現し得る、極めて重要なテクノロジーだと認識しています。
ここ2年ほど、生成AIの利用やAIエージェントの実証といった取り組みも並行して進めており、今後は具体的なDXの取り組みに、いかにAIを実装していくかが大きなテーマになってくると考えています。
一方で、ご承知のとおり生成AIには、使い方を誤ると想定外のネガティブな結果を生み得る側面もあります。そのため、テクノロジーの導入と並行して、しっかりとリスクに備えるためのガバナンスを確立し、両輪で進めていくことが重要な課題だと考えています。
PwC 綾部:
生成AIや最近のエージェントAIについては、民間の事業会社においても、「優れた技術だから使おう」という機運は高まっている一方で、現場ではなかなか本格的に使いこなせていないという状況があります。
調べものや簡単な作業の代行といった限られた用途での利用は進んでいるものの、先ほど鶴見さんが触れられたような、スマートフォンを超えるような「革新の原動力」としての活用には至っておらず、そのジレンマを多くの企業が感じています。
そういった点について、鶴見さんはどのようにご覧になっていますでしょうか?
鶴見氏:
現状では、AIはアイデア出しの叩き台や、サポート的な用途にとどまっていて、それだけでは、あらゆる現場や業務シーンでAIが本格的に活用される状態にはなかなか至りません。当然、大きな業務効率化にもまだつながりにくい状況です。
エージェントAIの登場を踏まえ、この1年ほど取り組んできて特に感じることは、「AIを使うこと」を前提として、組織や制度、体制、業務プロセスそのものを、変えていく必要があるということです。
これは、デジタル部門だけでは完結しません。市役所全体の組織運営そのものについて、「AIがあることを前提に考え直すと、どのような形が理想なのか」を検討する必要があります。その意味では、AIを前提とした組織や制度に変革していくための、横断的なチームが必要だと感じています。
また、先ほどリスクの話もありましたが、AIがアウトプットした内容について、行政は一定の責任を負わなければなりません。企業でいう法務部門のような組織が、AIを使った行政サービスや業務に対して、どのように法的担保を行うのか、という点も課題です。
これらの点も含め、組織運営そのものに関わるテーマについて、もう一段踏み込んで考えていけるようにしていく必要があると考えています。
PwC 綾部:
私もまさに同じように感じています。AIの本格的な活用は、もはやDXやIT部門だけの範ちゅうを超えたテーマだと思います。
かつてセキュリティについて、「IT部門やセキュリティ部門だけがやっていればよい」と捉えられていたのと同じような感覚が、今なお事業会社にも残っているように感じますが、一方で、AIは私たちのワークツールそのものでもあります。
その利活用をどう組織として実現するか、また法整備や社内規定をどう整えるかが、今まさに求められているところだと思います。
PwC 金嶋:
AIのアウトプットの品質をどう担保するのかというテーマがあります。ガーディアンAI(Guardian AI/Guardian Agent)という言葉も出てきているように、品質担保の前提として、AIが前提とするデータ、すなわち「データの品質」が非常に重要になります。
データ品質やデータレイクの構築について、大阪市での取り組みの中で、苦労されている点や工夫されている点があれば、教えていただけますか。
鶴見氏:
まさにその部分が、現在直面している最大の課題の一つだと認識しています。DX戦略の中でも、データ利活用やデータ整備について一定の方針を示し、取り組みを進めてきましたが、それらはもともと「AI活用のための基盤整備」という観点から始めたものではありませんでした。
しかし、今ご指摘いただいたように、データはAIが利用できる形にしっかりと整備されていなければ、業務やサービスのあり方を変えるような本格的な活用にはつながりません。まさに、データ整備の方針は、これから本格化させていく段階です。
行政の世界は紙文化が根強く、今なお紙の書類をベースに仕事をしている部門が多く存在します。デジタルデータとして蓄積されている部分があったとしても、データ整備のルールが全庁的に統一されているわけではなく、部門ごとに使いやすい形、言ってみれば「個別最適」な形式で保存されているケースがほとんどです。
ですから、こうしたデータを一定の水準で標準化し、さらにメタデータ化していくプロセスを経なければ、本格的なエージェントAI活用にはつながらないと考えています。その道のりは非常に長く大きなテーマです。
この部分を効率的に進め、AIが使える環境にシフトしていくためには、AIそのものとは別に、データ整備や移行を支援するためのテクノロジーも必要なのではないか、と感じているところです。
写真右:谷口 浩文 氏 大阪市DX推進担当部長
同左:藤堂 高士 氏 大阪市DX推進担当課長
PwC 綾部:
私たちコンサルティング業界でも、「AIが発展するとコンサルはいらなくなるのではないか」といったことがよく言われます。
社内でもよく話題になるのは、最終的にでき上がってくるAI自体は、おそらくどのコンサルティング会社も似通ったものになるのではないか、ということです。クライアントが抱える課題・ニーズは各社共通とも言えますから、プロセスは違っても、最終的な処理結果としては共通してくる部分が多いと言えます。その結果作られるAIアプリケーションも似通ってくるだろう、と。そうなると、AIそのものではビジネスの差別化が難しくなります。
その中で鍵になるのは、「いかにユニークなデータを、高い品質で集められるか」ということです。これが、今後のコンサルティング業界内での存在価値にも関わると見ています。
一例で言うと、PwC単独で蓄積しているデータだけに依拠していると、他のファームと差別化できない構造から抜け出せない可能性があります。そのため、外部との連携も含めた、新たなデータ連携のあり方が次世代のビジネスモデルとして求められていると感じています。
PwC 金嶋:
行政組織としてはいかがでしょうか。先ほど、政府の共通システム・共通基盤のお話もありましたが、一方で地域差や自治体ごとの個性もあります。その中で、大阪市としてのユニークさを残しながら行政を推進していくことは、非常に難しいテーマではないかと思います。この点について、現在お考えになっている「あるべき姿」があればお聞かせいただけますか。
鶴見氏:
自治体は、日本全国で大小あわせて約1,800あります。大阪市のような大都市もあれば、ごく小規模な町村もありますが、いずれも地方自治法という法律に基づき行政を運営しており、共通する業務やデータの部分は相当数存在します。
先ほどデータ整備が課題だと申し上げましたが、これからの時代を見据えて自治体がどのようにデータを持つべきかについては、国が一定の基準や標準を示していく必要があると考えています。
自治体のデータは、大きく二層構造になっていると捉えています。一つは「どの自治体でも共通して存在するデータ層」、もう一つは「地域特性や自治体規模の違いに応じて異なるデータ層」です。
共通部分については、国が一定の標準を示した上で整備を進めるのが望ましいと思います。一方で二層構造の「二階部分」、すなわち地域特性に応じて異なる部分については、自治体がそれぞれの特性に応じてデータ整備を進める、という進め方がよいと考えています。
また、データの性質に応じた取り扱いルールも重要です。この点で特に分かりやすい例が個人情報です。自治体は膨大な個人情報を保有しており、これをAIやそれ以外の何らかのテクノロジーで活用する場合に、個人情報保護法との関係でどこまで認められるのか、逆にどこからは認められないのか、といった線引きを明確にする必要があります。
併せて、現行の個人情報保護法制自体もデジタル・AI社会を前提とした枠組みにアップデートしていくことが求められていますし、それは自治体ごとの条例レベルではなく、国の法令として整備すべき課題だと考えています。
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