『セキュリティ・クリアランス制度』法制化の最新動向と日本企業が取るべき対応

【第6回】重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)の概説

  • 2026-05-15

1. 「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)」の概要

2024年5月、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(「重要経済安保情報保護活用法」または「法」)が成立して以降、施行に至るまで、以下の資料が公表されてきました。

2024年5月10日

重要経済安保情報保護活用法の成立

2025年1月31日

重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定に関し、統一的な運用を図るための基準案に対する意見募集の結果

重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定に関し、統一的な運用を図るための基準

2025年5月2日

重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(行政機関編)

重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)

適性評価に関するQ&A

2025年5月16日

重要経済安保情報保護活用法の施行

これらの資料のうち、「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)」(「適合事業者ガイドライン」)は、「重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定に関し、統一的な運用を図るための基準」(「運用基準」)に基づき、運用基準の内容を補足、具体化するとともに、別添として以下のひな型を提供し、各ひな型の条項について逐条解説的に説明するものとなっています。

① 適合事業者が策定することを求められる社内規程のひな型(重要経済安保情報保護活用法施行令(「施行令」)第16条第1項参照)

② 従業者に対して実施すべき重要経済安保情報の保護に関する教育資料のひな型(同項第1号参照)

③ 行政機関と適合事業者間の契約のひな型(法第10条第3項、施行令第17条参照)

④ 適性評価を受けるための名簿掲載予定者への説明文書のひな型

適合事業者ガイドラインは、適合事業者認定を受けることを目指す民間事業者にとって、ガバナンス体制の構築、社内規程の策定等の指針になるものであり、その内容を理解することが重要であるため、本稿においては適合事業者ガイドラインの概要について説明します。
なお、当該ガイドラインは、適合事業者の認定、適性評価の実施、重要経済安保情報の取扱い、事後の事情変更及びその他の5章から構成されていますが、本稿では主に、事業者の事前準備等の観点から特に重要と考えられる第1章乃至第3章について、解説します。

4. 重要経済安保情報の取扱い

(1)取扱者の制限

ア 取扱者の選定

重要経済安保情報は、適性があると認められた者でないと取り扱えませんが、適性があると認められた者であっても、従事している業務の実態に照らして、必要のない情報は取り扱ってはならないとされています。

例えば、契約において、重要経済安保情報を取り扱える者の範囲を部署単位で設定した場合でも、個々の重要経済安保情報の中身および当該情報を取り扱う業務の実態に照らして、実際に取り扱うことになる者は必要最小限度の範囲で設定することが必要とされています。

イ 取扱者名簿の整備

契約上、重要経済安保情報を取り扱えるとされた部署において、実際に重要経済安保情報を取り扱うことになる者を決定した場合には、重要経済安保情報を取り扱う前に、取扱者名簿を作成するとともに、当該名簿を行政機関に提出し、承認を受ける必要があります。

取扱者名簿には、当該名簿に掲載された従業者が取扱いの業務を行う対象の重要経済安保情報、当該情報を取り扱う従業者の氏名および当該従業者に適性が認められる旨の適性評価の結果の通知を受けた日のうち最も直近のものを記載する必要があるとされています。

(2)重要経済安保情報を保護するための措置

ア アクセス・立入制限措置

重要経済安保情報は、行政機関から承認された重要経済安保情報取扱区画の中でしか取り扱うことができず、当該区画の出入口には、適性があると認められていない者が立ち入ることができないよう、上記2.(2)イ(ウ)のような監視・警報装置等の物理的な防護措置を講じ、また、適性があると認められていない者が必要以上に当該区画に近づかないよう、その入口に、立入りが禁止されている旨の掲示を施す必要があるとされています。

また、重要経済安保情報を現に取り扱っている者であっても、業務の必要性を超えて不必要に立ち入ることがないよう、重要経済安保情報取扱区画への立入りに関して、実際に立ち入った者の所属や氏名、立ち入った時刻等を記録することも必要とされています。

イ 携帯型情報通信・記録機器の持込禁止措置

重要経済安保情報が電磁的記録として提供される場合、USBメモリなどの可搬型記録媒体にて提供されるところ、このような電磁的記録としての重要経済安保情報を取り扱うための電子計算機はスタンドアローンまたはインターネットに接続していないことが求められています。

また、同様の観点から、重要経済安保情報取扱区画に立ち入る場合には、携帯電話、スマートフォンなど通信可能な携帯型情報通信機器に加えて、録音機やビデオカメラなど撮影・録画・録音が可能な記録機器も持ち込んではならないとされています。

ウ 電子機器の使用の制限

上記のとおり、電磁的記録としての重要経済安保情報を取り扱うための電子計算機は、スタンドアローンまたはインターネットに接続していないことが必要であり、当該電子計算機に対して、生体認証等によるアクセス制限が講じられ、当該アクセス制限に関して行政機関から認定を受けることが必要とされています。

また、重要経済安保情報が記録された電磁的記録を電子計算機で取り扱う場合には、当該電磁的記録の可搬記憶媒体への書き出しログおよび印刷ログを保存しなければならないとされています。

(3)重要経済安保情報の取扱い

行政機関より提供される重要経済安保情報文書等の取扱いについては、適合事業者ガイドライン上厳格なルールが定められており、主要な内容は下表のとおりです。

取扱いの類型

主な取扱いのルール

接受

  • 重要経済安保情報文書等11は、保護責任者又は保護責任者から指名された者が接受しなければならない
  • 重要経済安保情報文書等を接受する際に行政機関から通知される重要経済安保情報の指定の有効期間などについて、適合事業者は、実際に重要経済安保情報を取り扱う者に周知する必要がある

保管・管理

  • 接受した重要経済安保情報文書等は、行政機関から承認された重要経済安保情報取扱区画において、行政機関から承認された保管容器の中に保管しなければならない
  • 重要経済安保情報が電磁的記録として、可搬型記憶媒体で提供された場合についても、当該可搬型記憶媒体に、暗号化措置を施した上で、上記の保管容器の中に保管しなければならない
  • 電磁的記録を取り扱う電子計算機についても、重要経済安保情報取扱区画に存置された上で、持出しや盗難、紛失等を防止するために、当該電子計算機に対して、ワイヤで固定する等の措置が講じられている必要がある

複製・作成

  • 重要経済安保情報文書等は、原則として、事業者内で複製されたり、重要経済安保情報を記録する文書等が新たに事業者内で作成されたりするといったことは想定されていない(行政機関から許可を受けた場合は可能だが立会いが必要となる)
  • 実際に重要経済安保情報文書等を複製または新たに作成をした場合には、「重要経済安保情報」の表示をするなどの措置を実施しなければならない

簿冊の整備

  • 重要経済安保情報文書等を接受し、保管または管理した場合には、当該重要経済安保情報文書等の交付元行政機関やその件名、有効期間が満了する日等の情報を簿冊(保管簿)に整理し、記録することが必要である
  • 複製または作成した場合には、保管簿とは別途の簿冊(作成記録簿)を整備し、保管簿と同様の情報を記録する必要がある

運搬

  • 適合事業者において、重要経済安保情報を取り扱おうとする場所や重要経済安保情報文書等を保管する保管容器を変更しようとする場合には、あらかじめ行政機関から承認を受けることが必要であるが、すでに承認を受けている重要経済安保情報取扱区画の中で、重要経済安保情報文書等を運搬する場合には、外部から視認できない施錠可能な運搬容器を用いて、2名以上の者で携行するなどの留意事項を遵守する必要がある

閲覧

  • 一時的な持出しや運搬等の際に、当該重要経済安保情報文書等の内容を筆記することを禁止する等の措置が必要である
  • 一時的な持出しや閲覧等の行為を管理するための簿冊(「閲覧簿」)を整備することが必要であり、閲覧簿には、閲覧した重要経済安保情報文書等、閲覧日、閲覧者などが記入される必要がある

伝達

  • 重要経済安保情報を伝達するに当たっては、電子メール、電話、FAX、ストレージサービス等のインターネットを介したもの等で実施してはならない
  • 伝達行為は、重要経済安保情報取扱区画内において、当該重要経済安保情報に係る取扱者名簿に掲載されている者に対してのみ実施されなければならない
  • 伝達の際には、その始めと終わりに伝達する情報が重要経済安保情報であることを明らかにするとともに、当該伝達の内容を筆記または録音することを禁止することが必要である

(4)有効期間の満了等の場合の重要経済安保情報文書等の扱い

適合事業者ガイドラインでは、指定の有効期間の満了の場合を含む3つの場合の重要経済安保情報文書等の扱いが定められており、主要な内容は下表のとおりです。

指定の有効期間が満了した場合

重要経済安保情報を提供した行政機関から、重要経済安保情報の指定の有効期間が満了した旨の通知があった場合には、以下の措置を講じる

  • 適合事業者において、当該重要経済安保情報を取り扱っている者に対して、当該指定の有効期間が満了した旨を周知すること
  • 当該重要経済安保情報の指定の有効期間が満了した文書等に、「重要経済安保情報」の表示を赤色の二重線等で抹消した上で、「重要経済安保情報指定有効期間満了」の表示をすること

指定の有効期間が延長された場合

重要経済安保情報を提供した行政機関から、重要経済安保情報の指定の有効期間が延長された旨の通知があった場合には、以下の措置を講じる

  • 適合事業者において、当該重要経済安保情報を取り扱っている者に対して、当該指定の有効期間が延長された旨を周知すること

指定が解除された場合

重要経済安保情報を提供した行政機関から、重要経済安保情報の指定が解除された旨の通知があった場合には、以下の措置を講じる

  • 適合事業者において、当該重要経済安保情報を取り扱っている者に対して、当該指定が解除された旨を周知すること
  • 当該重要経済安保情報の指定が解除された文書等の、「重要経済安保情報」の表示を赤色の二重線等で抹消した上で、「重要経済安保情報指定解除」の表示をすること

(5)検査・周知

ア 検査の実施

適合事業者は、毎年1回以上、重要経済安保情報取扱区画ごとに、取り扱っている重要経済安保情報文書等の保管状況を検査する必要があり、重要経済安保情報取扱区画が複数ある場合には、それぞれの区画における検査結果をとりまとめた上で、行政機関に報告しなければならないとされています。

イ 適切な管理に向けた従業者への周知

適合事業者は、従業者が適合事業者の定める規程に違反して、重要経済安保情報文書等を紛失し、漏えいした場合には、就業規則に基づく懲戒の対象となることを担保するとともに、このような旨を社内に周知しなければならないとされています。認定申請に際して、かかる懲戒が就業規則上担保されているかを事前に確認することが必要となります。

(6)重要経済安保情報文書等の返却・廃棄

ア 重要経済安保情報文書等の返却

接受した重要経済安保情報文書等について、行政機関から返却の指示のあったときは、返却しなければならないとされており、返却した場合には、保管簿にもその旨を記載する必要があるとされています。

イ 重要経済安保情報文書等の廃棄

接受した重要経済安保情報文書等の廃棄は、行政機関から指示があった場合に限り実施でき、廃棄に当たっては、当該重要経済安保情報を取り扱うことができる者が、焼却、粉砕、細断、溶解、消磁および破壊等の手段により、重要経済安保情報文書等の内容が識別できないように確実に行うことが必要であるとされています。

また、廃棄に当たっては、保護責任者等の適合事業者内の然るべき者が立ち会って、上記の方法により確実に廃棄させることが必要であり、廃棄が完了した場合には、その旨を行政機関に報告することが必要であり、保管簿にも記載する必要があるとされています。

ウ 緊急時の対応

重要経済安保情報の漏えいのおそれがあるような緊急の事態が起こった場合には、当該漏えいを防止するために注力しなければならず、その際、他に適当な手段がないと認める場合には、上記と同様の手段により廃棄することができるものの、原則としては、行政機関への申請が必要とされています(このような申請をしている暇がないといった止むを得ない場合に限り、行政機関への事後報告が可能)。

また、上記により廃棄した場合についても、保管簿に記載する必要があるとされています。

エ 事故発生時の対応

重要経済安保情報文書等を紛失した場合、重要経済安保情報が漏えい若しくは破壊された場合またはそれらの疑いがある場合は、直ちに適切な処置を講じるとともに、保護責任者または業務管理者に報告し、また、報告を受けた保護責任者は、その保護のために必要な措置を講じて事故の拡大防止に努めるとともに、直ちにその事実の調査を行って把握し得る全ての内容を、行政機関に報告する必要があるとされています。

また、上記の報告後、遅滞なく次に掲げる事項について調査を行い、その調査結果に所見および対策を添えた調査報告書を行政機関に提出しなければならないとされています。

① 事故等が発生した日時及び場所並びに当事者の氏名及び職務

② 事故等発生に係る重要経済安保情報文書等の名称、登録番号、一連番号、数量及び内容

③ 事故等発生の原因及び経過

④ 事故等発生の及ぼす影響

⑤ 事故等発生に対して講じた措置

⑥ その他参考となるべき事項

5. おわりに

適合事業者ガイドラインは、運用基準を補足するものと位置付けられているものの、単なる制度の解説にとどまらず、民間事業者に対して具体的な体制整備や運用上の対応を求める内容となっています。

各事業者においては、制度の趣旨を理解したうえで、各事業者の実態に即した体制整備や対応を検討していくことが重要といえます。

1 施行令第11条第1項第1号、第3号及び第5号乃至第12号並びに第16条第1項第1号及び第2号

2 運用基準第5章第1節2(2)①、②参照

3 運用基準第5章第1節2(2)③参照

4 運用基準第5章第1節2(2)④、⑧乃至⑩参照

5 現行法上は、金商法に基づく大量保有報告制度の適用対象(5%超)となる場合を除き、株式会社が実質株主を確認する制度が存在しないため、現在、法制審議会会社法制部会において、実質株主確認制度の導入に向けて、制度趣旨、適用対象となる株式会社の範囲、確認対象となる株主の議決権保有割合、株式会社が実質株主を確認する仕組み、確認に応じない場合の制裁等について議論が行われています。そのため、「真の株主」の把握方法については、会社法改正の動向にも留意する必要があります。

6 この点、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、特定秘密保護法及び防衛生産基盤強化法の下において、装備品の調達や建設工事等について「特別防衛秘密」「特定秘密」および「装備品等秘密」を扱う民間事業者を対象に公益財団法人防衛基盤整備協会が保全講習を提供しています。保護責任者や業務管理者が情報保全の知見を習得するにはこのような講習も有益と思われますが、本分野について、類似の講習等が行政機関ないしその外郭団体等から提供されるか否かは現時点では明らかではありません。

7 重要経済基盤に関する公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、重要経済基盤に関して我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるもの並びに重要経済基盤に支障を生じさせるための活動であって、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人を当該主義主張に従わせ、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で行われるもの(法第12条第2項第1号)

8 ①重要経済安保情報の取扱いの業務を新たに行うことが見込まれることとなった者、②重要経済安保情報の取扱いの業務を現に行っており、適性評価から10年経過後も引き続きこれを行うことが見込まれる者、または③当該行政機関が直近に実施した適性評価において重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた者のうち、引き続き当該おそれがないと認めることについて疑いを生じさせる事情があるもの。なお、法第12条第1項第1号イ又はロに該当する者であっても記載することが必要。

9 過去10年以内に内閣府の調査結果に基づき1つの行政機関から「漏らすおそれがない」と認められた者について、他の行政機関が適性評価を実施する場合

10 適合事業者ガイドライン第2章第4節及び第5節参照

11 重要経済安保情報である情報を記録する文書、図画、電磁的記録若しくは物件又は当該情報を化体する物件(施行令第4条柱書)

執筆者

makoto hibi

日比 慎

パートナー, PwC弁護士法人

蓮輪 真紀子

蓮輪 真紀子

PwC弁護士法人

湯澤 夏海

PwC弁護士法人

池田 侑希

PwC弁護士法人

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

本ページに関するお問い合わせ