特別対談:デジタルトラストの構築に向けたPwCのアクション

サイバー犯罪情勢と京都府警察における取り組み―官民連携を中心に

  • 2026-08-10

ランサムウェア、偽サイト、不正アクセス――サイバー犯罪の被害は大企業だけでなく、地域の中堅・中小企業にも広がっています。予算や人材が限られるなか、中堅・中小企業は何から対策を始めればよいのでしょうか。京都府警察サイバー対策本部で副本部長を務める塩野亜由美氏を迎え、京都府内の相談状況や警察の支援体制、官民連携による地域全体の防御力向上について伺いました。(本文敬称略)

登壇者

京都府警察 サイバー対策本部
副本部長
※2026年2月時点の所属組織
塩野 亜由美氏

PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー
日比 裕介

※ 本稿は「Digital Trust Forum 2026」(2026年3月公開)のセッション12「サイバー犯罪情勢と京都府警察における取り組み――官民連携を中心に」の内容を基に、再構成したものです。
※ 京都府警察は特定の商品やサービスを推奨するものではありません。

左から、日比 裕介、塩野 亜由美氏

サイバー犯罪の相談は過去最多に、京都府警察は体制を強化

日比:
最初に、京都府警察サイバー対策本部が担う役割について教えてください。

塩野:
京都府警察サイバー対策本部では、サイバー犯罪の捜査に加え、サイバー攻撃への対処、人材育成、府内企業や関係機関との連携、広報啓発などを担っています。私は副本部長として、またサイバー企画課長の事務取扱として、主に人材育成や人材確保、企業・団体との連携などを担当しています。

日比:
では早速、サイバー犯罪の現状について伺います。以下は警察庁が公開した「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を基に作成したグラフです※1。同資料によると、サイバー犯罪の検挙件数は平成30年の9,040件から令和6年には1万3,164件へと増加し、7年間で約1.5倍となりました。特に金銭の詐取を目的とした犯罪が多く発生しています。全国的に脅威が深刻化する中、京都府内でも同様の傾向が見られるのでしょうか。

図表1:サイバー犯罪の検挙件数の推移

サイバー犯罪の検挙件数の推移 ,

※1 令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R6/R06_cyber_jousei.pdf

塩野:
京都府内でも、サイバー犯罪などに関する相談は高い水準で推移しています。令和6年に過去最多の相談件数を受理しましたが、令和7年はそれをさらに上回り、過去最多を更新しました。

図表2:サイバー犯罪等に関する相談受理状況(京都府警察)

サイバー犯罪等に関する相談受理状況 (京都府警察)

図版出典:京都府警察
https://www.pref.kyoto.jp/fukei/anzen/seiki_h/cyber/documents/cybertorikumi.pdf

企業・団体からの相談も、近年は年間300件前後で推移しています。令和7年も297件の相談が寄せられており、企業にとってサイバー犯罪が身近なリスクになっていることを示しています。

日比:
企業からの相談には、具体的にどのような内容が多いのでしょうか。

図表3:サイバー犯罪等に関する企業からの相談受理状況(京都府警察)

サイバー犯罪等に関する企業からの相談受理状況 (京都府警察)

図版出典:京都府警察
https://www.pref.kyoto.jp/fukei/anzen/seiki_h/cyber/documents/cybertorikumi.pdf

塩野:
令和6年、令和7年ともに最も多いのは、偽サイトでの商品名や企業情報の悪用などを含む「詐欺、悪質商法等による被害に関するもの」です。企業・団体からの相談全体の約4割を占めています。

その他、名誉毀損や脅迫等に関する相談、SNSアカウントへの不正アクセス、ホームページの改ざん、サポート詐欺、ランサムウェア、DDoS攻撃など、内容は多岐にわたります。

日比:
お話を伺うと、企業から寄せられる相談は、詐欺や悪質商法から不正アクセス、ランサムウェアまで幅広いのですね。こうした多様な相談に対応するため、京都府警察ではどのような体制を整備しているのでしょうか。

塩野:
京都府警察では、令和5年と令和6年に、サイバー部門の体制を強化しました。現在はサイバー対策本部のもとに「サイバー企画課」「サイバー捜査課」「サイバー攻撃対策課」の3課を置いています。

図表4:京都府警察におけるサイバー部門の体制

京都府警察におけるサイバー部門の体制 ,

図版出典:京都府警察
https://www.pref.kyoto.jp/fukei/anzen/seiki_h/cyber/documents/r6cyber2.pdf

サイバー企画課は、サイバー人材の確保・育成、広報啓発、企業や関係機関との連携を担っています。サイバー捜査課は、サイバー犯罪の捜査を担当し、同課のサイバーサポートセンターがパソコンや携帯電話の解析などの技術支援を行います。

サイバー攻撃対策課は、APT(Advanced Persistent Threat:持続的標的型攻撃)グループの関与が疑われる事案や、サイバーテロ、サイバーインテリジェンスへの対処を主に担っています。また、企業への個別訪問や共同訓練も実施しています。令和7年は金融機関と合同で、大規模なサイバー攻撃を想定した訓練を行いました。なお、いずれの課にも情報処理安全確保支援士の資格を持つ警察官が所属しており、情報セキュリティの知識を備えた職員が対応に当たっています。

京都府警察 サイバー対策本部 副本部長 塩野 亜由美氏

被害を一社で抱え込まない、相談と情報共有が次の被害を防ぐ

日比:
今のお話で重要なのは、一つの企業で起きた攻撃が、他の企業でも起きている可能性があるという点ですね。攻撃者が同じ手口で複数の企業を狙うことは少なくありません。その意味でも、警察への相談や報告を過度にためらわないことが重要だと理解しました。

自社の事例が他社の被害防止に役立つだけでなく、他社で確認された情報が、いざというときの自社の対応に生かされることもあります。こうした情報共有の積み重ねが、地域全体の防御力向上につながるのだと思います。

最後に官民連携の今後について伺います。京都府警察とPwCコンサルティングは、2025年9月にサイバーセキュリティ領域で協定を締結しました※6。こうした民間企業との連携を通じて、京都府警察としてどのような効果を感じていますか。また、今後どのような取り組みを推進したいとお考えでしょうか。

※6 https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/2025/cybersecurity-kyoto-police.html

塩野:
サイバー部門には一定の専門知識を持つ職員がいますが、脅威の変化は速く、警察だけで最新の動向や実務知見を全て把握することは容易ではありません。ですから、民間企業の知見も取り入れながら、継続的に学び、対応力を高めていくことが重要です。

また、サイバー部門だけでなく、警察組織全体の対応力を底上げすることも課題です。そうした観点からも、協定に基づく職員向け研修には意義があります。

さらに、府内事業者や府民の意識向上も欠かせません。サイバーセキュリティは、企業活動だけでなく、個人の財産や情報を守る上でも重要性を増しています。府警単独で発信するだけでなく、民間企業や関係機関と連携することで、より幅広く、実効性のある啓発につなげられると考えています。今後も、研修やセミナー、情報発信などを通じて連携を深めていきたいと思います。

日比:
PwCコンサルティングも京都府警察との連携を通して、地域全体のセキュリティ強化に貢献していきたいと考えています。本日はありがとうございました。

左から、日比 裕介、塩野 亜由美氏

主要メンバー

日比 裕介

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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