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自動車の機能においては、電動化・コネクティビティ・運転支援の進展により、ソフトウェアへの依存度が年々高まっています。従来、リコール対応の主戦場は部品交換を中心とするメカニカルな作業にありましたが、近年は制御ロジックや認識アルゴリズム、通信・UI(ユーザーインターフェース)に起因する事象が増え、ソフトウェア更新による対応が拡大しています。
直近10年の日本市場の推移を見ると、ソフトウェア更新によるリコール対応の割合は増加傾向にあり、2024年には26.8%、2025年では32.5%と1年で約6ポイント増加しています(図表1)*1。かつては「リコール=部品交換」というイメージが強かったのですが、今やソフトウェア更新が重要な役割を担っています。
また無線通信によりソフトウェア更新を行うOTA(Over The Air)によるソフトウェア更新のリコール対応件数は2021年以降に現れ始め、2021年の1件から2025年には11件と5年間で10倍以上に増加しています。
こうした傾向は日本市場にとどまらず北米市場にも共通して見られており、ソフトウェア更新およびOTAを中心としたリコール対応は、特定の地域に限定されないグローバルな潮流となりつつあります。
*1 本稿では乗用車、商用車のリコールを集計対象とし、二輪車および部品サプライヤは集計対象外としています
図表1:ソフトウェア更新でのリコール対応件数(日本市場)
出所:国土交通省 自動車局「自動車のリコール・不具合情報」を元にPwCコンサルティングでデータ整理(国産車・輸入車の合算値でグラフ化)
過去5年間の日本国内におけるリコール情報を分析すると、日本OEMよりも海外OEMの方がソフトウェア更新によるリコール対応件数が多いことが読み取れます(図表2)。海外OEMのリコールに占めるソフトウェア更新の割合は2021年の25.0%(22件)から2025年には47.4%(46件)となり、割合にして約1.9倍に増加しています。一方、日本OEMのソフトウェア更新割合は横ばいで、21.4~12.5%程度にとどまっています。
この結果から、日本市場におけるソフトウェア更新でのリコール対応実施率の増加(図表1)は、海外OEMがけん引している構図であることが分かります。
図表2:リコール届出に占めるソフトウェア更新での対応割合(日本市場)
出所:国土交通省 自動車局「自動車のリコール・不具合情報」を元にPwCコンサルティングでデータ整理(国産車・輸入車の合算値でグラフ化)
ソフトウェア更新の中でも、近年特に注目されているのがOTAです。OTAは無線通信を使って車両のソフトウェアを遠隔で更新する仕組みで、顧客はディーラーに車両を持ち込む必要がありません。メーカーにとっても、工賃負担の削減や入庫ピークの平準化が可能になる他、同一症状の修正を短期間で広範囲に配信できるため、是正スピードの向上と顧客負担の軽減が期待できます。特に海外OEMでは、ディーラーネットワークが日本のOEMほど充実していないこともあり、OTAによる遠隔対応を積極的に推進するケースもあると考えられます。
過去5年間の日本市場におけるOTAによるリコール対応においても海外OEMが先行していることが分かります(図表3)。海外OEMでは、ソフトウェア更新に占めるOTAの比率が2021年の4.5%から2025年には23.9%へと急上昇し、わずか5年間で約5倍に増加しています。件数で見ても、OTAによる更新は2021年の1件から2025年には11件に伸びています。
一方、日本OEMのOTA実績は、2024年の1件のみです。
図表3:リコール届出に占めるソフトウェア更新に対するOTAの割合(日本市場)
出所:国土交通省 自動車局「自動車のリコール・不具合情報」を元にPwCコンサルティングでデータ整理(国産車・輸入車の合算値でグラフ化)
2021年~2025年の5年間におけるOTAの適用範囲の内訳を詳しく見てみると、HMI・IVI(Human Machine Interface、In-Vehicle Infotainment)が最も件数が多く、6件と全体の2割以上を占めています(図表4)。HMI・IVIはOTA時のユーザー承認インターフェース機能を併せ持つこともあり、他部品に先駆けてOTA機能を実装していることが背景として考えられます。
日本・海外で比較すると、日本OEMのOTA対象部品は極めて限定的ですが、海外OEMはHMI・IVIだけでなく幅広い部品をOTA対象としていることが分かります。海外OEMは、SDV時代を想定し、OTAを前提とした設計を積極的に進めていることが推察されます。
図表4:OTAによるリコール対応の対象部品内訳(日本市場)
出所:国土交通省 自動車局「自動車のリコール・不具合情報」を元にPwCコンサルティングでデータ整理(国産車・輸入車の合算値でグラフ化)
車載ソフトウェアは年々大規模化が進み、かつ複雑性が増しています。また、AD/ADAS技術の進化に伴い、自動運転システムの対象となる運行設計領域(ODD)の範囲も拡張しています。こうした条件下でリコールゼロを前提にするのは現実的ではありません。重要なのは不具合が発生した際の初動対応の速さと、顧客にとっての負担をいかに低減できるかという点です。
その意味で、ソフトウェア更新、とりわけOTAは大きな可能性を秘めています。遠隔での修正対応が可能になれば、ディーラーへの入庫や長時間の待ち時間を避けられ、不具合対応における顧客への負担は大きく低減されます。メーカーにとっても、修正ソフトウェアを一斉に配信できることで是正スピードが飛躍的に向上し、従来の物理的な対応に比べてコストの削減や効率性の向上が期待できます。
加えて昨今では、ソフトウェア更新によって、販売後もクルマがアップデートを重ねて進化し続けることを前提とした考え方、いわゆるSDV化が進められています。ソフトウェア更新をより効率よく提供できるOTAは、SDV化を推進する上でも極めて重要となります。
OTAの採用は海外OEMで先行しているのが現状であり、日本OEMのOTA実績は極めて限定的な対応となっています。
これらを踏まえ、今後の自動車業界においてはリコール対応の負担低減だけでなく、車両機能の継続アップデートによるユーザー体験の向上を支える技術として、OTAの仕組みの構築および安定的な運用基盤の構築が求められます。OTAの採用は海外OEMが先行していることから、SDV時代におけるサービス品質の面で海外OEMに後れを取らないためにも、これらの取り組みは、日本OEMにおいて極めて重要な課題であると考えます。
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