PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

中国の消費主導型経済への挑戦―消費拡大「第15次五か年計画」から読む中国経済の構造転換と方向性(2026年8月)

  • 2026-08-21

中国政府は2026年7月13日、消費拡大「第15次五か年計画(2026~2030年)」(以下、当計画)を発表した。消費拡大に特化した五か年計画としては建国以来初となるものである。社会消費品小売総額(2025年:50.1兆元、約1,200兆円)を2030年までに約60兆元(約1,440兆円)へ引き上げる数値目標を掲げるとともに、これまでの補助金に依存した短期的な消費拡大策から脱却し、消費構造を高度化しつつサービスやデジタル消費の制度改革を目指すとしている。

当計画は消費拡大策であると同時に、中国が投資主導型から消費主導型経済への転換を試みる重要な政策文書とも位置付けられ、当計画が示す今後の動向や方向性が注目される。一方で、不動産不況の長期化や雇用環境の悪化を背景に、消費・投資など内需は減速感を強めているうえ、その最大のネックである不動産不況への具体策も示されておらず、目標達成は容易ではない。中国の消費拡大策は短期的な景気刺激ではなく、制度改革を通じた成長モデル転換の試みと位置付けられるが、その成否は不動産市場の正常化、雇用・所得環境の改善、社会保障の充実、民営経済の活性化に左右される可能性が高い。以下では、足元の厳しい経済環境も踏まえつつ、当計画の概要や今後の方向性などについて筆者の見解を述べていく。

1.消費拡大「第15次五か年計画(2026~2030年)」が目指す方向性

当計画は国家発展改革委員会と商務部が策定し、2026年7月に国務院が承認したものである。中国政府は内需主導の成長を実現するため、消費拡大を最重要課題に位置付けている。詳細は後述するが、2030年までに社会消費品小売総額の約60兆元(約1,440兆円)を達成するほか、所得向上や社会保障強化、サービス・デジタル消費の拡大、消費環境の改善を進め、消費を経済成長の主要な原動力とすることを目指している。

主な方針としては以下図表1のとおりで、サービス・商品消費の高度化、新たな消費市場の創出、所得・雇用環境の改善、消費インフラ・制度改革を通じて、内需主導の成長を実現する方針が示されている。

これらの各方針の主たる内容について、以下個別に見ていく。

(1)サービス消費の質的向上および公益性の増進

サービス消費の拡大による内需強化を目的に、生活関連サービス、高齢者介護、育児、文化・観光、健康、スポーツ、教育分野の発展を推進する。外食・宿泊・家事サービスでは品質向上とブランド育成を進め、高齢者介護では在宅・地域・医療の連携強化やシルバーエコノミー、スマート介護の発展を通じて関連消費を拡大する。育児分野では保育サービスの拡充と質向上を図る。また、文化・観光、健康、スポーツ、教育の分野では、デジタル技術の活用や多様なサービス提供を促進し、新たな需要を創出する。総じて、サービスの質と供給能力を高め、人々の生活の質向上と消費拡大を同時に実現することを目指す。

(2)商品消費の拡大および高度化の促進

商品消費の拡大と高度化を通じて内需を強化し、消費主導型成長を目指す。主要な耐久消費財の消費を促進し、住宅分野では、保障性住宅や改善型住宅の供給拡大、老朽住宅や城中村(旧市街地、都市の中の村)の改修、高齢者向け・スマート住宅への改装を推進する。自動車分野では、新車・中古車市場に加え、リースやカスタマイズ、モータースポーツなどアフターマーケットの発展を支援する。家電・家具分野ではスマート家電やスマートホームの普及を加速し、日用品分野では高品質農産物や健康食品、衣料品、スポーツ用品、伝統工芸品などの消費拡大を図る。デジタル技術を活用した製品開発やカスタマイズ生産を促進し、多様化する消費ニーズに対応する。

また中国ブランドの育成を重要課題と位置付け、「老字号(老舗ブランド)」や新興ブランドの保護育成のほか、「IP+消費」モデルを推進し、IP関連商品の発展を支援する。中国文化を取り入れたブランド価値の向上と国際競争力強化を図り、国内外での認知度向上と消費拡大を目指す。

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執筆者

薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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