PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

ガバナンス・インサイト・シリーズ ―価値創造経営― vol.4:コーポレートガバナンス・コード改訂――成長を目指して(2026年7月)

  • 2026-07-24

7月21日にコーポレートガバナンス・コード(以下、「コード」)の改訂が成立した。今回の改訂の最大の特徴は、有形・無形の成長投資の促進という「攻め」を中心的な目的に位置付けた上で、より実質的な対応を促進する手段として、取締役会の機能強化を強調していることにある。2015年のコード導入以降、取締役会における独立社外取締役は大幅に増加している。独立性の高まった、監督を主体とする取締役会が機能を発揮して成長を実現するためには、経営者または経営陣(マネジメントチーム)と取締役会の戦略を主体とするコミュニケーションの成功が一層重要となる。地政学的な変化や技術の進展などの不確実性が高まり、同意なき買収の提案や株主のアクティビズムを含む外部環境の不測の変化に直面しながらも成長が求められる中、企業経営における取締役会の役割や意思決定プロセスには各社の創意工夫が求められる。改訂コードにおいて補充原則が廃止され、多くがコンプライ・オア・エクスプレインの対象外となる解釈指針に移行することには各社の裁量が広がる意義があり、それだけに成長に向けた経営資源配分の決定を含む、実効性のある取締役会の運営の巧拙が問われる。

1. 改訂コードのポイント

(1)成長投資の促進

今回のコード改訂の政策的な目的を一言で表現すれば、「攻め」としての「成長投資の促進」であり、そのための手段が「取締役会の機能強化」である。当初のコーポレートガバナンス改革では「攻め」と「守り」の両立や持続的な成長が謳われたが、政府による日本成長戦略およびそれに基づく成長戦略投資の立案を反映して、「攻め」の側面が強調された形となった。改訂コードでは、主たる名宛人である「上場会社」に加えて、「取締役会」も主語として強調され、経営陣を監督する取締役会の役割・責務として「成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し等の経営資源の配分等」(原則4-1)が掲げられている(図表1)。解釈指針は「(参照しつつ対応する)期待」(序文9)を示したものでコンプライ・オア・エクスプレインの対象外であるが、そこでも取締役会の役割が強調されている。

株主との関係性に関しては、株主還元だけでなく成長投資の促進の観点からも、経営資源の配分の一環として「現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源」の有効活用が謳われている(原則4-2解釈指針)。株主は必ずしも株主還元だけを望んでいる訳ではない。むしろ研究開発や人的資本投資といった無形資産投資には不足感を感じている。コードと同日に確定した経済産業省「成長投資ガイダンス」にも登場した経済利益を無形資産投資に応用することは、この点でひとつの解決方法である。

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執筆者

朝岡 大輔

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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