PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

国内販売の低迷と輸出急拡大に直面する中国自動車産業(2026年5月)

  • 2026-05-29

今や生産・販売・輸出の全てで世界最大規模に成長している中国自動車産業は、その成長ドライバーに大きな変化が生じている。2025年以降は国内販売の伸びが鈍化する一方で、輸出が急速に拡大し、全体成長を下支えする構図が鮮明になっている。実際、2026年1-4月通算の国内販売台数(644.7万台)は前年同期比-20.6%まで落ち込んだ一方で、輸出台数(312.7万台)は同+61.5%と大幅な伸びを示している。

こうした「中国国内販売の低迷」と「輸出急拡大」との構造は、単なる景気循環で説明しきれるものではなく、中国国内に根強く定着している生産過剰や競争激化を背景とした構造変化とも捉えられるものである。足元で顕在化している自動車セクターの動きから中国経済および産業の方向性がうかがえ、今後も業界の動向を見極めていく必要がある。以下では、中国自動車産業が直面している国内市場の低迷や輸出急拡大の背景、要因などを確認しつつ、今後の動向について筆者の見解を述べていく。

1. 世界最大の自動車大国の位置付けを確立する中国

まずは中国の自動車生産台数の推移を振り返ると、2000年代初頭は年間200万台規模であったが、2001年のWTO加盟を契機に市場が開放されたことに伴い本格的な成長拡大期に突入した。この20年超に亘って「世界の工場」として拡大を続け、2009年には1,000万台、2013年には2,000万台、2023年には3,000万台を突破、2025年の自動車生産台数は3,453万台と過去最高を記録し、世界最大の自動車生産国となっている(図表1)。

1990年代までは国有企業が中国自動車市場を主導していたが、経済発展とともに外資系自動車メーカーが合弁事業を通じて外資系ブランド車を製造・販売し、中国市場に進出した。国有企業は外資系メーカーからの技術導入を通じて急速に実力を高めてきた。これらの国有企業は合弁企業の経営を行うとともに、自社ブランドの自動車を製造・販売している。また、民族系国内メーカーも自主ブランドを主体とする事業を展開しており、中には欧州ブランドの外資系メーカーを買収するなど、実力を示す企業も現れている。広大な国土と膨大な人口を有する中国において、これまで自動車はヒトやモノを運ぶモノとして、外資系サプライヤーも含めたサプライチェーンの構築が進められてきた。企業各社が「走る」「曲がる」「止まる」の基礎機能を軸に「モノ作り」の観点から技術蓄積、高品質・高機能を追求することを通じて、グローバルな自動車生産拠点として成長を遂げてきたのである。

また、自動車販売台数(国内販売と輸出の合計)は2025年に3,440万台に達した(図表2)。世界第2位の米国市場(2025年:1,639万台)の約2倍の規模に達しており、これに続くインド(同552万台)や日本(同457万台)を大きく引き離し、世界最大の市場となっている。過去を振り返ると、中国の自動車販売台数は2000年代から拡大基調を辿り、2004年に500万台を超えた後、2000年代後半には所得向上や都市化の進展などに伴い需要の拡大スピードが加速し、2009年(1,364万台)には1,000万台の壁を越え、2010年代には世界最大の自動車市場へ成長。2013年(2,198万台)には2,000万台、2023年(3,016万台)にはついに3,000万台を突破した。こうして2015年以降は毎年2,500万台超の規模で中国国内に自動車が販売されており、中国における自動車保有台数は2025年時点で約3億5,900万台に達している。ヒトやモノの「移動手段」としての“クルマ”の基礎機能が追求されるとともに、物質的豊かさの象徴として自動車が普及し、市場や日々の生活に深く浸透している。

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執筆者

薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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