PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

物価の落ち着きが消費拡大につながるかに注目(2026年1月)

  • 2026-02-12

I.2026年1月のまとめ:物価の落ち着きが消費拡大につながるかに注目

日本経済の足元の動向を確認していこう。まず国内消費をみると、家計調査では、実質消費支出が11月に前年比+2.9%、前月比+6.2%と増加したものの、12月は前年比-2.6%、前月比-2.9%と減少に転じた。傾向をみるために四半期の動きでみると、7-9月期は前期比-0.2%、10-12月期が同-0.8%と2四半期連続での減少となった。実質可処分所得(勤労者世帯)は、11月に前年比-2.5%の減少となった。12月には同+1.2%と増加に転じている。一方、12月の商業動態統計では、小売業販売額は前年比-0.9%、前月比-2.0%と減少した。減少は4か月ぶり。次に設備投資動向をみておこう。11月の機械受注統計では、「船舶・電力を除く民需」(コア受注)が前月比-11.0%と3か月ぶりに減少した。「外需」は、同+5.3%と増加した。次に12月の鉱工業生産は、前月比-0.1%と2か月連続で減少した。1月調査では生産計画見込みが1月に前月比+9.3%、2月に同-4.3%となっている。生産実績とのズレを考慮した補正値では1月は同+7.2%と減少に転じる見込み。次に対外関係に目を向けると、12月の貿易収支では、名目輸出金額は前年比+5.1%となり、4か月連続で増加した。輸出数量は、前年比-1.3%と2か月ぶりに減少した。関税の影響が大きいとみられる自動車の輸出金額は、12月に前年比-3.1%となった。自動車の地域別輸出をみると、米国向けは12月に前年比-7.1%と減少した。なお、12月の自動車の輸出平均価格は419.0万円、前年比-4.3%となっている。価格は1月の448.3万円から30万円ほど下回っている。

以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。景気動向指数における一致指数は11月の改定値で114.9となった。速報値の115.2から下方修正となり、3か月ぶりに悪化した。夏場からやや回復していたが、再び悪化している。物価面をみると、12月の国内企業物価指数は前月比+0.1%(前年比+2.4%)となった。輸出物価指数は、円ベースで前月比+1.7%(前年比+4.9%)、契約通貨ベースで同+1.0%、輸入物価指数は、円ベースで前月比+1.1%(前年比+0.0%)、契約通貨ベースで同+0.6%となった。輸出入物価指数は前年比で上昇傾向を強めている。12月の消費者物価指数(全国)は、総合で前年比+2.1%、生鮮除く総合で同+2.4%、生鮮・エネルギー除く総合で同+2.9%となり、いずれも伸びが弱まった。また食料(酒類除く)及びエネルギー除く総合(欧米型コア指数)は同+1.5%と、先月からわずかに減少した。エネルギー価格の前年比は-3.1%と11月の同+2.5%から一転して減少している。なお、食料については、生鮮食品が前年比-2.7%と5月以来の前年比マイナスとなった。米類の価格は前年比+34.4%と依然として高いものの、緩やかに伸びは弱まってきている。2026年に入ると、ガソリンの旧暫定税率廃止に加え、政府の物価高対策が主にエネルギー価格に影響して、物価は2%前後となると予想される。物価安定の観点からは、引き続き欧米型コア指数の伸びが2%程度でアンカーできるかが鍵となるだろう。

日本経済は消費低迷が継続する中で、物価は落ち着きをみせ始めている。企業収益は、トランプ関税の影響を受けつつも、AI関連投資拡大を受けて増加基調を保っている。今後の春闘での賃上げ動向が注目される。今後は実質所得が増加に転じる中で消費が拡大に転じるかが注目される。海外では、米国経済が堅調に推移する中で、追加利下げが実施されるかが注目される。欧州ではドイツがプラス成長に転じ、緩やかに拡大している。中国では関税の影響を受けつつ、デフレ圧力が強まっており、今後の政策対応の有無などを注視したい。

図表1:各国・地域の経済・物価・政策・先行きについて

  日本 米国 欧州・中国など
経済

物価高対策による物価抑制が、実質消費を増加させるかが焦点。利上げを受けた企業・家計の金融環境悪化の影響も注視すべき。

2025年7-9月期の実質GDPは消費を中心に前期比年率+4.4%増加となった。失業率は緩やかに悪化しているものの、消費は堅調さを維持している。 2025年10-12月期のユーロ圏の実質GDPは前期比年率+1.3%となった。ドイツのプラス成長が寄与。中国の実質GDPは2025年に+5.0%成長を達成した。
物価 物価高対策の効果等により、落ち着きをみせ始めている。需要が強くない中で、賃金と物価の好循環が弱まり2%以下での推移となる可能性がある。 インフレ率・予想インフレ率ともにやや鈍化している。一方、インフレ再加速がないか、米大統領と新FRB議長の関係を含めた金融政策動向に注目。 1月のユーロ圏の消費者物価(総合)は、エネルギー価格下落もあり、前年比+1.7%と2%を割り込んだ。中国では2025年12月の同指標は同+0.8%となった。
政策 所得税、エネルギー関連での減税が期待される一方、財政拡大による長期金利の動向も注目される。 関税の不透明感は低下しているものの、財政政策は景気刺激的となっている。利下げが継続するか注目される。 欧州は5会合連続で政策金利据え置きを決定。中国では経済成長の減速基調への対応があるかが注目される。
先行き 短期的には経済対策の効果を受けた実質の所得・消費動向、長期的には成長17分野の投資拡大の動きが焦点。 経済・物価が安定している中で、利下げが実施されており、追加利下げによってインフレが再加速することがないかが注目される。 ユーロ圏は緩やかな回復基調。不振だったドイツが回復に向かいつつある。中国は不動産不況を受けたマクロ経済低迷が回復に迎えるかが注目される。

(出所)筆者作成。


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執筆者

伊藤 篤

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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片岡 剛士

チーフエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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永野 督和

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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