PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

経済対策により実質の所得・消費拡大に向かうかが焦点(2025年12月)

  • 2026-01-08

I.2025年12月のまとめ:経済対策により実質の所得・消費拡大に向かうかが焦点

日本経済の足元の動向を確認していこう。まず国内消費をみると、10月の家計調査では、実質消費支出が前年比-3.0%、前月比-3.5%となった。実質可処分所得(勤労者世帯)は、前年比-0.4%の減少となった。一方、11月の商業動態統計では、小売業販売額は前年比+1.0%、前月比+0.6%となった。総じて消費は弱い動きを示している。次に設備投資動向をみておこう。10月の機械受注統計では、「船舶・電力を除く民需」(コア受注)が前月比+7.0%と2か月連続で増加した。「外需」は、同-21.8%と大幅な減少となった。次に11月の鉱工業生産は、前月比-2.6%と3か月ぶりに減少した。12月の生産計画見込みは前月比+1.3%と上昇が見込まれている。生産実績とのズレを考慮した補正値では同-0.6%と減少に転じる。次に対外関係に目を向けると、11月の貿易収支では、名目輸出金額は前年比+6.1%となり、3か月連続で増加した。輸出数量は、前年比+0.5%と4か月ぶりに増加した。関税の影響が大きいとみられる自動車輸出は、11月に前年比-4.1%となった。4月から9月まで減少した後、10月にはわずかながら増加したものの、11月に再び減少となった。自動車の地域別輸出をみると、米国向けは前年比+1.5%と増加に転じた。なお、11月の自動車の輸出平均価格は408万円、前年比-5.7%となっている。1月から6月にかけて減少した後、増加に転じたものの、年初を40万円ほど下回っている。

以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。12月の日銀短観における業況判断DI(「良い」-「悪い」)は大企業製造業で15と9月から1ポイント改善した。大企業非製造業は34と引き続き横ばいであった。以上の製造業の業況改善、非製造業の業況維持を受けて、大企業全産業は24と9月から横ばいとなった。大企業製造業の需給判断DIがわずかに改善する中で、販売価格DI・仕入価格DIもわずかに改善した。景気動向指数における一致指数は10月速報で115.4となった。9月から0.5ポイント上昇して2か月連続での上昇となった。物価面をみると、11月の国内企業物価指数は前月比+0.3%(前年比+2.7%)、輸出物価指数は円ベースで前月比+2.0%となり2か月連続で2%台の伸びとなった。11月の消費者物価指数(全国)は総合で前年比+2.9%(前月+3.0%)、生鮮除く総合で同+3.0%(同+3.0%)、生鮮・エネルギー除く総合で同+3.0%(3.1%)となり、総合、生鮮・エネルギー除く総合では伸びが弱まった。また食料(酒類除く)及びエネルギー除く総合(欧米型コア指数)は同+1.6%と、1%台半ばの伸びであり、2%を下回って推移する状況が続いている。エネルギー価格の前年比は+2.5%と10月の同+2.1%からさらに加速した。だがガソリンの旧暫定税率が年内に廃止され、あわせて2025年度補正予算においても電気・ガス料金の補助が適用されることにより、エネルギー価格については2026年以降再び下押し圧力がかかるだろう。米についても現在の価格水準が続けば前年比の伸びは着実に鈍化する。以上から、全体として消費者物価指数の伸びは弱まる形になる。物価安定の観点からは、引き続き欧米型コア指数の伸びが2%程度でアンカーできるかが鍵となるだろう。

昨年(2025年)はトランプ関税による景気押し下げ効果が懸念されていたものの、企業収益は好調さを維持するなどそれほど顕在化していない。このまま賃上げの動きが継続し、国費21兆円規模の経済対策の効果と相まって実質所得がプラスに転じて実質消費が拡大するかが焦点となろう。さらに中長期的には高市政権の掲げる「危機管理投資」・「成長投資」の17分野への投資拡大の動きが広がるかに注目したい。

図表1:各国・地域の経済・物価・政策・先行きについて

  日本 米国 欧州・中国など
経済 25年度補正予算により、可処分所得を増やす政策が実質消費を増加させるかが焦点。長期金利上昇が進み、企業・家計の借り入れ環境は悪化している。 2025年7-9月期の実質GDPは消費を中心に4.3%増加となった。雇用の減速はみられるので、消費は増加を続けている。 欧州では物価高を受けた消費の低迷、中国では不動産不況に伴う需要の低迷といった構図に加えて、米国からの関税引き上げにより米国向け輸出が急減している。
物価 食料・エネルギー主導の物価上昇が継続、需要の弱さを反映した欧米型コアは前年比2%以下で推移している。 インフレ率は高止まりするが利下げが継続しており、インフレ再加速がないか、新FRB議長の経済物価・政策動向に注目。 ユーロ圏の食料・エネルギーを除く総合CPIは前年比+2.4%で横ばい。中国CPIの欧米型コアは同+1.2%で低迷。
政策 所得税、エネルギー関連での減税が期待される一方、財政拡大による長期金利の動向も注目される。 関税の不透明感は低下しているものの、財政政策は景気刺激に不足している。利下げが継続するか注目される。 ECBは4会合連続で政策金利据え置きを決定。中国は5%前後の成長達成見込みで対策実施はない見込み。
先行き 短期的には経済対策の効果を受けた実質の所得・消費動向、長期的には成長17分野の投資拡大の動きが焦点。 関税引き上げが消費者物価に転嫁され、物価上昇を受けた需要減少により、スタグフレーション的な状況となり政策対応が困難となるリスクがある。 ユーロ圏は緩やかな回復基調。不振だったドイツが回復に向かうかが注目される。中国は不動産不況を受けたマクロ経済の不振と、AI等の成長が継続していく見込み。

(出所)筆者作成。


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執筆者

伊藤 篤

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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片岡 剛士

チーフエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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