今般9月に中国上海に出張を実施し、中国経済および産業の将来展望を見据えたテーマで100名超の参加者とともに「中国ビジネスフォーラム」を開催したほか、現地に進出する日系企業各社への訪問を重ね、足元の事業環境および今後の展望について意見交換した。ここ数年は不動産不況や消費の伸び悩みが続き、国内外の厳しい経済環境の下で先行き楽観しがたい状況にある中国において、日系企業各社は需要不足や根強いデフレ圧力のほか、「内巻(ネイジュアン)」と呼ばれる厳しい過当競争に直面している。特に近年は中国企業のプレゼンスが中国国内に止まらず、アジア各国ほか海外諸国でも拡大するなど業界内の競争が激しくなっているなか、企業各社は中国経済および産業の実態把握を進めつつ、海外拠点の目線も加えながら中国企業の競争力、海外進出の動向とそのインパクトを分析し、自社の事業上の打ち手を考えていくことが求められる。
本稿では、日系企業各社が現場で感じている問題意識を踏まえつつ、足元の経済状況および中期的な展望、さらに中国企業の東南アジア展開についての分析、示唆を共有する。そして、「中国」についての認識を本社と海外の拠点ですり合わせる重要性や中国企業が海外に浸透していくなかでの中国拠点の役割などについて、以下に述べていく。
まず足元における中国経済の状況を確認するため、鉱工業生産、固定資産投資および社会消費品小売総額(小売売上高)の動向についてみておく。国内外の需要の伸びは楽観しがたい状況下、図表1のとおり、前年同月比ベースでは、鉱工業生産が2025年8月には前年同月比+5.2%となり、+5.0%強の水準を維持しつつも減速基調を辿っている。新エネルギー車ほかクリーンエネルギー関連の分野などを主体に力強い生産が続いており、こうした一部の産業セクターにおいて在庫調整が進展している様子もうかがえる。その一方で、セメントや板ガラスなどマイナス推移を続けている分野もあり、分野や品目ごとにまだら模様となっている。また、固定資産投資は不動産開発投資の不振を主たる要因として2025年1-8月には前年同期比+0.5%まで大きく落ち込んでいる。社会消費品小売総額は2025年8月に前年同月比+3.4%となり、前月の同+3.7%から減速した。政府当局による「以旧換新」策など景気刺激策による効果も顕在化しており、2025年1-8月通算では前年同期比+4.6%と、2024年通算の伸び(前年比+3.5%)を上回った。このように生産、投資、消費全ての項目が足元で減速基調を辿っており、先行きは楽観しがたい状況にある。
続いて図表2で前月比(季節要因調整済)ベースの推移をみると、2025年8月には社会消費品小売総額が+0.17%と3か月ぶりにプラスとなった一方、固定資産投資は-0.20%と低下した。鉱工業生産は前月比+0.37%となり、2024年4月以降17か月連続でプラス推移しているが、足元では低下基調を示している。上述のとおり、中国の国内外を取り巻く経済環境は楽観しがたく、在庫調整の局面から脱して生産体制が正常化に至るまで今しばらく時間を要し、企業各社が最終製品の価格に転嫁しれきれない状況は当面続くとみられる。
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