日本経済の足元の動向を確認していこう。まず国内消費をみると、7月の家計調査において、実質消費支出が前年比+1.4%、前月比+1.7%となった。可処分所得(勤労者世帯)の動きをみると、7月は前年比-4.9%と2か月連続の減少となった。一方、8月の商業動態統計では、名目の小売業販売額は前月比-1.1%となり、2か月連続で減少した。また、実質化した小売業販売額は物価高を反映して2025年4月以降減少傾向にあり、足元では頭打ちから下落の状況にある。次に設備投資動向をみておこう。7月の機械受注統計では、「船舶・電力を除く民需」(コア受注)が前月比-4.6%と2か月ぶりに減少した。「外需」は、7月に同-8.4%(前月:同+8.8%)と2か月ぶりに減少した。3月以降、増減を繰り返しつつ横ばいの動きとなっている。次に8月の鉱工業生産は、前月比-1.2%と2か月連続で減少した。9月の生産計画は前月比+4.1%と上昇が見込まれており、生産実績とのズレを考慮した補正値でも同+2.3%と上昇が見込まれている。次に対外関係に目を向けると、8月の貿易収支では、名目輸出金額は前年比-0.1%となり、4か月連続で減少した。輸出数量は、前年比-3.9%と5か月ぶりに減少した。関税の影響を受けている自動車輸出は、8月に前年比-7.9%となった。1~3月に駆け込み輸出で増加の後、4~8月は5か月連続で減少した。地域別にみると、米国向けは前年比寄与度-9.5%ポイントと減少の大半を占めている。なお、8月の自動車の輸出平均価格は355.7万円、前年比-20.9%となっている。前年からは下落したものの、前月(7月)よりは価格が上昇している。今後、価格を引き上げるかどうかが注目される。
以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。9月の日銀短観における業況判断DI(「良い」-「悪い」)は大企業製造業で14と6月から1ポイント改善した。大企業非製造業は34と横ばいであった。以上の製造業の業況改善、非製造業の業況維持を受けて、大企業全産業は24と6月から1ポイント改善した。販売価格判断・仕入価格判断(「上昇」-「下落」)をみると、大企業の販売価格判断、仕入価格判断はともに下降した。先行はやや上昇する見通しだ。中小企業では最近の判断は低下、先行きは上昇といった結果になった。7月の景気動向指数における一致指数は105.9となった。6月から2.6ポイント上昇して2か月ぶりに下降した。物価面をみると、8月の国内企業物価指数は前月比-0.2%(前年比+2.7%)、輸出物価指数は、円ベースで前月比+0.2%(前年比-0.3%)、契約通貨ベースで同-0.1%となった。8月の消費者物価指数(全国)は総合で前年比+2.7%、生鮮除く総合で同+2.7%、生鮮・エネルギー除く総合で同+3.3%となり、総合、生鮮除く総合では4か月連続で伸びが弱まった。また食料(酒類除く)及びエネルギー除く総合(欧米型コア指数)は同+1.6%と、1%台半ばの伸びであり、2%を下回って推移する状況が続いている。エネルギー価格の前年比は-3.3%と7月の同+0.3%からさらに減速した。内訳をみると、電気代、灯油の前年比が-7.0%、-5.0%と政府による電気・都市ガス代の補助の復活により先月からさらにマイナス度合いを強めたことが影響している。なお、食料については、生鮮野菜は前年比+2.1%、野菜・海藻は同+4.1%といった形で先月よりも伸びは明確に弱まっているほか、米を中心とした穀類も同+22.7%と20%を上回る価格上昇率を維持しているものの、6月以降伸びは鈍化している。食料全体としては前年比+7.2%と引き続き伸びは高く、注意は必要であるが、一旦はピークを過ぎたとも解釈できよう。
高市新総理による拡張的な財政・金融政策、投資拡大への期待から円安・株高となっているものの、実体経済では弱めの動きが続いている。今後の政策対応が消費・投資拡大につながるかが注目される。
日本銀行から短観(2025年9月)が公表された。回答期間は8月27日~9月30日、企業が想定する2025年度の為替レートは1ドル=145.68円(上期145.94、下期146.41)と2024年度の想定為替レート148.44円と比べると円高の見立てである。1ドル=147円台で推移する足元の為替レートの動向と比べても、やや円高気味で企業が想定していることがわかる。
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