日本経済の足元の動向を確認していこう。まず国内消費をみると、6月の家計調査において、実質消費支出が前年比+1.3%、前月比-5.2%となった。実収入(勤労者世帯、持ち家の帰属家賃を除く総合で実質化)は前年比-1.7%と、3か月ぶりに減少した。一方、7月の商業動態統計では、名目の小売業販売額は前月比-1.6%となり、2か月ぶりに減少した。また、実質化した小売業販売額は物価高を反映して2025年4月以降減少傾向にある。次に設備投資動向をみておこう。6月の機械受注統計は、「船舶・電力を除く民需」(コア受注)は前月比+3.0%と3か月ぶりに増加した。4-6月期では前期比+0.4%と3四半期連続での増加となったものの、7-9月期は同-4.0%と減少が見込まれている。次に7月の鉱工業生産は、前月比-1.6%と2か月ぶりに減少した。生産予測調査に基づくと、輸送機械工業、生産用機械工業の増産が全体を牽引することで8月は前月比+2.8%の増加を見込む。9月は同-0.3%と減少見込みだが、こちらも輸送機械工業の減少が全体を牽引する形である。輸送機械の生産拡大の本格化は見通せていない。次に対外関係に目を向けると、7月の貿易収支では、名目輸出金額は前年比-2.6%となり、3か月連続で減少した。輸出数量は、前年比+1.2%と4か月連続で増加した。関税の影響を受けている自動車輸出金額は、7月に前年比-11.4%となった。1~3月に駆け込み輸出で増加の後、4~7月は4か月連続で減少した。地域別にみると、米国向けは前年比寄与度-9.5%ポイントと減少の大半を占めている。なお、7月の自動車の輸出平均価格は341.7万円、前年比-26.1%となっている。前年からは下落したものの、前月(6月)よりは価格が上昇した。今後、価格を引き上げるかどうかが注目される。
以上を踏まえ、景気動向を確認しておこう。景気動向指数におけるCI速報値(2020年=100)の一致指数は6月に116.8となった。5月から0.8ポイント上昇し、2か月ぶりの上昇となった。物価面をみると、7月の国内企業物価指数は前月比+0.2%(前年比+2.6%)、輸出物価指数は、円ベースで前月比+1.6%(前年比-5.4%)、契約通貨ベースで同+0.3%と2か月連続で増加した。7月の消費者物価指数(全国)は総合で前年比+3.1%、生鮮除く総合で同+3.1%、生鮮・エネルギー除く総合で同+3.4%となり、総合、生鮮除く総合では3か月連続で伸びが弱まった。また食料(酒類除く)及びエネルギー除く総合(欧米型コア指数)は同+1.6%と、1%台半ばの伸びであり、2%を下回って推移する状況が続いている。エネルギー価格の前年比は-0.3%と6月の同+2.9%から減速しマイナスの伸びとなった。内訳をみると、電気代、灯油の前年比が-0.7%、-0.9%と先月のプラスからマイナスへ伸びを弱めたことが影響している。なお、食料については、生鮮野菜は前年比+3.7%、野菜・海藻は同+5.0%といった形で先月よりも伸びは明確に強まっているほか、米を中心とした穀類は同+27.4%と20%を上回る価格上昇率を維持しており、食料全体としては前年比+7.6%と引き続き伸びは強まっている。こうした価格上昇が家計消費の重石として作用するのは必定である。
米関税の日本企業への影響は、輸出企業の価格引き下げ、売上・収益減少につながっている。ある程度関税の姿がみえ、引き上げから時間が経過したことで輸出価格の引き上げにつながるか、収益悪化が今後の賃上げ鈍化につながらないか、見極めていく必要があろう。2025年前半の米国GDPを均すと+1.4%に鈍化している。今後最終価格への転嫁、利下げにつながるかが注目される。国内では物価高による実質所得減少となり、財政政策による家計支援が議論されており、臨時国会での議論が注目される。
図表1:各国・地域の経済・物価・政策・先行きについて
| 日本 | 米国 | 欧州・中国など | |
| 経済 | 実質所得の動きは鈍く、政府から可処分所得を増やす政策が期待される状態。長期金利上昇が進み、企業の借り入れ環境が悪化している。 | 2025年前半は成長率が鈍化し、労働市場の軟化している。関税引き上げに伴う経済活動低迷が顕在化しつつあり、9月に利下げへ転じるかが注目される。 | 欧州では物価高を受けた消費の低迷、中国では不動産不況に伴う需要の低迷といった構図に加えて、米国からの関税引き上げにより米国向け輸出が急減している。 |
| 物価 | 食料・エネルギー主導の物価上昇が継続、需要の弱さを反映した欧米型コアは前年比2%以下で推移している。 | 関税の影響は、輸出元企業による輸出価格引き下げで吸収され、現状では消費者物価には反映されていない。 | ユーロ圏の食料・エネルギーを除く総合CPIは2.3%で横ばい。利下げによる景気刺激継続へ中国CPIは0%近傍で推移。 |
| 政策 | 所得税・消費税、エネルギー関連での減税が期待されるものの、数万円の給付金の議論進展に注目。 | 関税の不透明感は低下しているものの、財政政策は景気刺激に不足している。金融政策が利下げに転じるかが注目される。 | ユーロ圏は7月の利下げで打ち止めとなる見込みが高まる。中国は追加対策の効果がみられていない。 |
| 先行き | 米国の関税引き上げを受けた輸出価格の引き下げを受けて、企業の売上・利益が減少した。今後、米国経済・価格戦略により景気動向に影響を与えよう。 | 関税引き上げが消費者物価に転化され、物価上昇を受けた需要減少により、スタグフレーション的な状況となり政策対応が困難となるリスクがある。 | ユーロ圏は関税引き上げの影響もあり、年内の追加利下げはなしの方向。中国の追加の経済対策でも内需回復は困難で、さらに輸出減少が顕在化している。 |
(出所)筆者作成。
内閣府から2025年6月の景気動向指数が公表された。6月のCI速報値(2020年=100)は先行指数106.1、一致指数116.8、遅行指数112.0となった。先行指数は5月から1.3ポイント上昇し2か月連続の上昇、一致指数は5月から0.8ポイント上昇して2か月ぶりの上昇、遅行指数は5月から1.5ポイント下降して4か月ぶりの下降となった。一時的要因による振れの影響を除くため、3か月後方移動平均や7か月後方移動平均の前月差をみると、CI一致指数の3か月後方移動平均は0.34ポイント上昇して4か月ぶりの上昇、7か月後方移動平均は0.23ポイント上昇し、11か月連続の上昇となった。今回の結果を受けて、CI一致指数から機械的に導かれる基調判断は「下げ止まりを示している」と維持された。5月速報段階では「悪化」となっていたが、確報段階で上方修正され、6月も「下げ止まり」で維持という形だ。
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