PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

中国の「両新」政策の効果は今後も期待できるのか-消費拡大や質的向上は実現しつつも、持続性は要注目(2025年6月)

  • 2025-06-27

足元の中国経済は長引く不動産不況の下で需要不足の状態から脱し切れず、伸び悩みの状況が続いているなか、2024年から政府当局が打ち出している「両新」政策の効果が注目されている。「大規模の設備更新の促進」と「消費財の買い替え促進」を柱とするもので、2025年には買い替え促進に向けた補助金の対象品目を増加させたことも奏功し、足元では投資と生産が減速する一方で、消費はまず堅調に推移し、中国経済を牽引する役割を果たしている。

ただし、買い替え促進のための補助金の対象である自動車や家電など耐久消費財の分野では、需要先喰いの反動が顕在化する可能性もあるほか、今後は米中摩擦に端を発する貿易環境のさらなる悪化も想定され、先行きは楽観しがたい状況が続くとみられる。こうしたなか、政府当局は財政の追加投入や補助金対象品目の拡大など、さらなる施策の打ち出しが求められようが、ここで政策効果が十分得られない場合、政府当局としては生産や投資をテコ入れしつつ、経済成長の実現を目指す可能性もあろう。これにより企業各社の間では価格競争の激化やデフレ圧力の高まりも懸念されるなど、質の高い経済成長を維持していくために引き続き難しい舵取りが求められている。以下では、「両新」政策によるこれまでの成果や実情を確認しつつ、政府当局による個人消費テコ入れの切り口や持続性などを含めた今後の展望について筆者の見解を述べていく。

「両新」政策の概要と狙い

中国の「両新」政策とは、「大規模設備の更新」と「消費財の買い替え」を柱とする経済刺激策である。2024年3月に国務院から通知された「大規模設備更新および消費財買い替えの促進行動計画に関する通知」に基づき本格的に推進されており、2025年も継続・拡充されている。国内の景気低迷や不動産不況、外需の減少に対応するために導入されたもので、単なる消費拡大ほか景気刺激策にとどまらず、経済や産業の高度化やグリーン転換、消費構造の改善を目指す中長期的な戦略でもある。中国政府はこの政策を通じて、内需の潜在力を引き出し、経済の質的向上を図ろうとしている。「大規模設備の更新」とは、老朽化した工業設備やインフラを最新の省エネ・デジタル・スマート設備に更新するほか、半導体やAI、バイオ医薬、航空宇宙など戦略的産業への集中投資などを通じて生産効率や品質向上を図りつつ、中国政府当局が唱える「新質生産力」の育成を目指すものである。また、「消費財の買い替え」とは、自動車や家電、デジタル製品などを対象に、古い製品から省エネ・高性能な新製品への買い替えを促進するほか、地方都市や農村部での消費インフラ整備、サービス消費(観光・外食など)の活性化を目指すものである。補助金制度が導入されており、購入時には割引が適用されるなど、消費者の負担軽減を図ることとしている。

さらに、2025年1月には、上述の通知を踏まえた施策として、国家発展改革委員会および財政部より「2025年における大規模設備更新および消費財買い替え推進の強化・拡大に関する通知」が発表された。ここでは家電や携帯端末など耐久消費財の買換促進のため、補助金の支給対象とする品目を拡大する方針とするなど、政府当局から積極的な内需拡大策が打ち出されている。

今年3月に開催された第14期全国人民代表大会第3回会議(以下、全人代)で示された「政治活動報告」における10項目の重点活動任務の中でも、昨年には3番目であった内需拡大が最重点項目となっており、政府当局の本気度がうかがえる。2025年においては、中央政府分として1兆3,000億元の超長期特別国債の発行が見込まれており、うち5,000億元が「両新」に割り当てられる予定。「両新」分のうち、設備の更新のために2,000億元(前年比+500億元)、消費財の買い替え促進のために3,000億元(同+1,500億元)が割り当てられる計画とされている。この3,000億元については、地方政府には今年1月と4月に総額1,620億元の中央資金が割り当てられており、残りの1,380億元も今年後半に段階的に配分される予定。同時に、地方政府も適切な措置を取り、自主的に十分な地方資金を調達することとされており、実際、各地方政府からも買い替え促進への取り組み強化について言及されている。例えば、広東省深セン市は6月に発表した「深セン消費促進特別行動実施計画」の中で、補助金を活用し自動車の廃車や買い替え、老朽化した家電製品の買い替え、新しいデジタル製品の購入、古い電動自転車の下取りなどを支援するとともに、補助金の審査・交付を迅速化し、商店や店舗での補助金の追加を奨励するとしている。また、福建省では「福建省消費促進特別行動実施計画」に基づき、装飾資材や衛生陶器などの買い替えを促進することが示されている。


続きはPDF版をご覧ください。

レポート全文(図版あり)はこちら

( PDF 1001.88KB )

執筆者

薗田 直孝

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

Email

PwC Intelligence
――統合知を提供するシンクタンク

PwC Intelligenceはビジネス環境の短期、そして中長期変化を捉え、クライアント企業が未来を見通すための羅針盤となるシンクタンクです。

PwC米国の「PwC Intelligence」をはじめ、PwCグローバルネットワークにおける他の情報機関・組織と連携しながら、日本国内において知の統合化を推進しています。

詳細はこちら

本ページに関するお問い合わせ