米トランプ政権が打ち出す対中輸入関税ほか各種政策が中国の貿易動向に与える影響が注目されている。中国の2024年の実質 GDP 成長率は前年比+5.0%となり、政府当局が掲げる2024年通年の経済成長率「5%前後」との目標を達成した。2024年9月以降、政府当局が相次いで打ち出した景気刺激策が奏功し、消費小売や固定資産投資、鉱工業生産などの主要指標には底打ちの兆しもうかがえる。しかし、中国国内では長引く不動産不況に加え、雇用不安もあり個人消費は勢いに乏しく、足元の経済成長は外需に大きく支えられているのが実情である。
近年は欧米諸国ほか主要貿易相手国・地域で中国の過剰生産に端を発する貿易摩擦の問題が生じている。加えて、トランプ米大統領が中国からの全ての輸入品に2月4日より一律10%の追加関税を課し、3月4日からはさらに10%上乗せの追加関税の賦課を表明するなど、対中スタンスを厳格化する動きが一層顕在化している。今後の米中両国の交渉次第では貿易環境のさらなる悪化が想定され、足元で外需依存を強めている中国の経済成長にマイナスの影響が及ぶ可能性が懸念される。
以下では、第2次トランプ政権による追加の輸入関税ほか「トランプ2.0」の政策動向を踏まえつつ、中国の貿易を取り巻く現況および今後の展望について筆者の見解を述べていく。
まずは図表1および図表2で2001年の WTO 加盟以降の中国の貿易総額をみると、2024年の輸出総額は前年比+5.9%、輸入総額は同+1.1%となり、輸出入ともにプラスを維持して着地した。貿易総額は6.2兆米ドル(輸出3.6兆米ドル、輸入2.6兆米ドル)に達し、2002年時点の10倍となり、10年前の2014年と比較しても1.4倍に増加している。過去を振り返ると、2008年からはリーマンショックに端を発した世界金融危機の影響を受けたほか、2015年以降は長年の人件費高騰による輸出競争力の低下や企業各社の現地生産・現地調達化の進展に伴い中国の貿易総額は減少を余儀なくされた時期もある。
ただし、ここ数年はまず堅調に推移しており、2024年時点での中国の貿易総額は、第2位の米国(5.4兆米ドル)や第3位のドイツ(3.2兆米ドル)を押さえて世界最大の貿易大国となっている。
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