足元の中国経済は、若年層を主体とする雇用不安もあり個人消費の勢いが乏しい状況下、根強い生産意欲の下で鉱工業生産が堅調に拡大するとともに、外需の伸びに下支えされた展開が続いている。その一方で、経済減速局面では政府による財政出動を背景としたインフラ投資など景気下支えのカードとされる固定資産投資をみると、長引く不動産不況から抜け出せず、不動産開発投資が足かせとなっているため伸び悩んでおり、市場の回復に向けた突破口を見出せない状況が続いている。
こうしたなか、5月17日には政府当局が新たに不動産市場対策を打ち出しており、この政策効果を含めた住宅不動産市場の行方が注目されている。以下では、不動産開発投資を含めた固定資産投資全体の動向も踏まえつつ、住宅不動産市場の足元の状況および現状と今後の展望について筆者の見解を述べていく。
まず固定資産投資全体の動向についてみると、2024年1-5月の中国の都市部固定資産投資は前年同期比+4.0%となり、同1-4月(同+4.2%)から減速して着地した。以下の図表1で企業の所有形態別にみると、国有企業は2022年以降全体を上回って推移しており、2024年1-5月は同+7.1%となり、2023年通年(同+6.4%)を上回る水準で着地した。一方で、2023年5月以降はマイナスで推移してきた民営企業は、2024年1-5月は同+0.1%と辛うじてプラスを維持しているが、国有企業に大きく見劣りする状況が続いている。民営企業は2022年1月以降一貫して国有企業を下回っており、2022年来続いている「国進民退1」の傾向が根強くうかがえる。民営企業が低位での推移を余儀なくされているのは不動産関連の落ち込みによるところが大きく、不動産関連を除くベースでみると、民営企業は同+6.9%2の伸びを示している。ただし、この点を勘案しても、国有企業には及ばず、固定資産投資全体の伸びを押し下げている。
1 中国における「国進民退」の動きについては、PwC Intelligenceのレポート「中国経済発展の足かせとなる「国進民退」の動き」を参照のこと。
2 中国国家統計局が2024年6月17日に実施した記者会見で公開したプレス資料「国家统计局投资司首席统计师罗毅飞解读2024年1-5月份投资数据」で示された数字。
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