足元の中国経済は、個人消費や鉱工業生産のなかに底入れと改善の兆しもうかがえ、内憂外患の厳しい状況から抜け出しつつあり、政府当局が掲げる2023年通年の経済成長率「5%前後」との目標は射程距離にあるとみられる。ただし、コロナ禍の影響を受け低水準で推移した前年からの反動によることも踏まえると、実体経済は数字から実感されるほどの底堅さはない。
また、2024年についてみても、不動産市場の長引く低迷が経済回復の足かせとなるほか、外需を取り巻く環境も楽観視しがたく、不安は払拭されない状況が続くとみられる。
さらに長期的な観点からみれば、人口減少や少子高齢化の問題に直面しながら、中国経済の成長を維持・安定化させるため、政府当局には構造問題への取り組みを本格化させつつ、社会の安定も見据えた質の高い経済成長を維持していく難しいかじ取りが求められている。これまでの投資に依存した構造から脱却し、消費主導型の経済への移行が模索されているなか、膨大な人口を抱える内陸や農村部を中心とする下沈市場が今後の成長マーケットとして注目される。以下では、中国国内の都市部および農村部を取り巻く経済環境を踏まえつつ、下沈市場の現状と今後の展望について筆者の見解を述べていく。
中国には22の省、5つの自治区、4つの直轄市、2つの特別行政地区(香港、マカオ)という行政区分がある。これらの行政区分のうち、2つの特別行政地区を除く31省・市・自治区は、「華北」「東北」「華東」「中南」「西南」、「西北」の大きく6つの地区に分類されている(図表 1)。中国は日本の約26倍の国土と約11倍の人口を抱え、56の民族が存在しており、同じ国にありながら地区ごとに固有の文化や習慣がある。これまで経済発展を続けてきたなか、以下図表2~図表4で示すとおり、これらの地区の間には経済的な格差が根深く存在している。中長期的な観点から中国経済や社会の安定を維持するためにも、各地区で顕在化する格差を是正していくことが中国政府当局にとっての重要な課題の一つとなっている。
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