3月の内外経済をみると、国内では春闘は予想を大きく上回り、海外では金融システム不安が浮上した。まず、国内の賃上げ動向を確認しておこう。図表1にある通り、連合が発表した3月17日時点での2023年の春闘の賃上げ率は、805組合の集計でベースアップ(ベア)・定期昇給(定昇)を含む基準で+3.80%となった。ベースアップ分が区分できる612組合で比較したベアは+2.33%となり、前年から+1.83%ポイントの上昇となった。なお、当社は日本経済見通し(第2号)において、ベア・定昇を含む基準で+3%弱となると見込んでいたため、現時点では予想を大きく上回るサプライズとなった。また、先月のMonthly Reportで示した通り、2020~2022年の労働市場のタイト化傾向が今後も継続した場合、所定内給与は2024年に前年比+1.7%程度へ上昇するとの見通しを示した。また、その時の物価上昇率は1990年代前半の水準と一致する見込みである。
なお、春闘におけるベア・定昇を含む基準と所定内給与の関係を踏まえると、2023年度の所定内給与は+2.16%となることが見込まれ、上記の見通しを前倒しで達成する見込みである。また、2月の全国消費者物価上昇率は、食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合の基準で、前年比+2.1%となり、一時的にせよ日本銀行の2%の物価目標を達成した。問題はこれら賃金・物価上昇の持続性である。持続性を探るためには、なぜここまで賃金が上昇したかを踏まえることが重要であろう。
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