PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

-凍結経済の形成・解凍・今後の見通し- (2023年1月)

  • 2023-01-09

2022年の円安は、悪い円安ではなく、「凍結経済」解凍のきっかけとなり得る

筆者は、「『凍結経済』を溶かす円安・インフレ」(Weekly Macro Economic Insights、2022年12月5日~9日)において、昨年(2022年)の円安について、「悪い円安との見方があるが、長期的にみると物価・賃金が動かなくなった『凍結経済』を解凍し、経済が安定的に成長するきっかけとなり得る」とした。本レポートでは、この「凍結経済」がどの様に形成され、現在解凍しつつあるかを確認した上で、今後どうなるかの見通しを示したい。

結論を先取りすれば、日本銀行が採用する物価上昇率の目標次第となろう(図表1)。1990年代後半以降、実質的に日本銀行がゼロ%のインフレ率を目指したことで、物価・賃金の上昇率がほぼゼロとなり、物価・賃金が動かずに経済活動が低迷する「凍結経済」が形成されてしまった。政府・日本銀行は2013年1月の共同声明で2%の物価目標を掲げて以降、様々な意見がありながらも目標を堅持し、日本銀行が現在まで金融緩和を継続してきた中で、ようやく「凍結経済」が解凍し、物価・賃金が安定的に上昇する兆しがみえ始めている。このように、日本の経済・物価動向は、日本銀行がどのような物価上昇率を目指すかによって大きく左右されよう。今後も、政府・日本銀行が現状の2%の物価目標を堅持すれば、「凍結経済」の解凍が継続して、物価・賃金が安定的に伸びて経済も持続的な成長を遂げよう。他方、仮に今後2%の物価目標を1%やゼロ%へ引き下げたり、達成時期を先送りしたりすれば、再び「凍結経済」に戻って物価・賃金が動かなくなり、経済活動も停滞しよう。


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執筆者

伊藤 篤

シニアエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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